
1963年1月1日、日本で初めての国産TVアニメ「鉄腕アトム」の放映がはじまる。(チラシより)
原子力で戦うロボットの活躍は子供たちの心をつかみ、最高視聴率は40%を超えた。
1963年3月30日、新幹線は試験走行で256km/hの国内最高速度記録を達成した。
科学は人類の進歩の証であり、平和をもたらす万能薬だと思われていた。
1963年10月26日。日本で初めて原子力による発電が始まった。
感情さえ制御できない程度の論理で、核分裂を制御しようとする人間たちの喜劇。
日本で原子力の研究が始まった頃の研究者たちの物語。実験中の事故で放射能漏れを起こしてしまうが、それを公表すべきか否かで激しい議論が起きる。その場にいた中で一番若かった青年が老人になってから家族の前で語るのだが、いつしか選んだ現実と選ばなかった選択肢が絡みあう。
その演出はさておき、研究者たちの感覚はものすごく上手く描かれていたと思う。舞台上では研究者同士のぶつかりあいとなっているが、実際は一人の研究者の中でも同様に激しい葛藤が起こっているだろう。特に原子力というのは、どんなに丁寧に噛み砕いて説明しても一般人にはわかってもらえない分野だ。いつしか説明を諦めるようになるし、馬鹿は黙ってろと言いたくもなるだろう。
遠回りしてでも理解を得て進めるべきという正論は、どんなに遠回りしたところで理解は得られないという経験の壁を越えられるだろうか。そんなことを考えさせられる作品だった。
2014/11/29-13:00
時間堂「衝突と分裂、あるいは融合」
ミニシアター1010/当日精算2900円
台本・演出:黒澤世莉
出演:菅野貴夫/鈴木浩司/阿波屋鮎美/松井美宣/黒住尚生/田嶋真弓/富田文子/尾崎冴子/神谷柚里/中谷弥生/中山有子/前川昂哉/三嶋義信
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