
妻を失った男が、妻の実家に居候。(チラシより)
分かち合おう、悲しみを。
癒し合おう、悲しみを 。
乗り越え合おう、悲しみを。
しかし妻の妹は男を見て思っていた。
「この男は違う。この男は、悲しんでいない」
そこは雪深い山荘 ―。
2年前に死んだ恋人の父親と妹と共に山荘で暮らす男。妹がふもとに引っ越す前の送別会を兼ねて、死んだ姉を偲ぶために集まったのは、かつての登山部仲間とボランティア夫婦。しかしゆっくりと様々な過去が顔を出し、きれいごとではない人の素顔がさらけ出されていく。
ドロドロした人間関係を描いているようでいて、むしろ人の「弱さ」が主題だったのかもしれない。主人公は誠実な青年のように見えて、実はだらしなくみっともない男であることがどんどん暴かれていくのだが、悪人というわけではなくあくまでも「残念な男」なのだ。ある意味ひどい男だが、見苦しく許しを乞う姿は嫌悪感より憐れみを感じる。
不倫している男女やそれを責める夫、登山家のプライドを捨てた自営業の夫婦、夢を語るばかりで何もできていない後輩など、他のキャラクターも皆一様に弱さを露呈してグチャグチャになっていく。唯一そうでない妹は冷静に彼らを見つめ、自分がこれから踏み出す生活への覚悟を決めているようだ。
山荘を模した細長い舞台をコの字型の客先が囲む三面舞台。見づらいということはなかったが、側面からの観劇になったため一部表情が見えない場面もあった。あのシーンで、彼らはどんな顔をしてたんだろうか、気になった。
2015/01/31-15:00
モダンスイマーズ「悲しみよ、消えないでくれ」
東京芸術劇場シアターイースト/事前入金3000円
作・演出:蓬莱竜太
出演:古山憲太郎/津村知与支/小椋毅/西條義将/生越千晴/今藤洋子/伊東沙保/でんでん
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