2013年09月21日

財団、江本純子「常に最高の状態」

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 前衛的アートの合同展示会の会場に、出品者のひとりの母親と叔母がやってくる。そこで遭遇する“アーティスト”たちとのディスコミュニケーション。オバさん二人と若い娘(それも芸術系の学生だから相当ぶっ飛んでいる)三人が織りなす饒舌な会話劇。

 冷静に考えたら極端にデフォルメされたキャラクターなのに見ていて違和感がなく、いかにもこういう人いそうと思える5人の女性。難しいテーマではなく軽いタッチのコメディだが、脚本は巧妙に練られていたと思う。常識的かと思えた人がだんだん壊れていくので、他の人もいつ壊れるかと思いきや壊れなかったり、先の展開は予想できず、最後まで飽きずに笑い続けられた。

2013/09/21-17:00
財団、江本純子「常に最高の状態」
ギャラリー・ルデコ/当日券3500円
作・演出:江本純子
出演:千葉雅子/松本まりか/佐久間麻由/荻野友里/柿丸美智恵
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キリンバズウカ「マチワビ」

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キリンバズウカ2年振りの新作公演
報われない人たちが住む街の物語
〜 能力があるとかないとか
  幸せになるためには全然関係ないんだってさ 〜
(サイトより)

 主人公の女の子は予知夢を見る能力があることで子供の頃に芸能界で働いたが、やがて能力が消えて引退し、地元で姉と妹と共にゆっくり暮らしていた。ある日彼女はさびれた遊園地跡で出会った青年を家に連れて帰り、しばらく泊めてあげると言い出す。困惑する姉と妹だが、その行動は予知夢に関わっていた‥‥

 主人公の次女に加えて、親代わりに妹達の面倒を見てきた長女、自分も芸能界に出たくて超能力のないことをひがむ三女という姉妹は、それぞれ少しずつ共感できるキャラクターだ。

 物語としては昔の少女漫画っぽい内容で、適度な波乱と適度なハッピーでバランスよし。良い人はちゃんと幸せになり、悪い奴は罰を受ける、まっとうなストーリーだ。小劇場だとそうじゃない作品が前衛的と評価されたりするが、こういう作品も大事だと思う。

 黒岩三佳、こいけけいこ、森下亮、後藤剛範といったいい感じの役者たちがその力量を存分に発揮しており、そういう点でも安心して観劇できて好印象だった。

2013/09/21-14:00
キリンバズウカ「マチワビ」
東京芸術劇場シアターイースト/事前入金3710円
脚本・演出:登米裕一
出演:日栄洋祐/こいけけいこ/加藤理恵/上鶴徹/黒岩三佳/後藤剛範/永島敬三/松永渚/森下亮/内田悠一/折原アキラ/金聖香/助川紗和子/渡邊亮
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2013年09月14日

悪い芝居「春よ行くな」

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何時でも何処でも何度でも分かりあいたい若者たちが分かりあえず溶けあうしかない異情演劇
(チラシより)

 うまく交友関係が築けない女とその周囲の人びとの関わりを通じて、何かを見せつける作品。主人公の女はバイト先の同僚に、同棲していた恋人が失踪したと言う。それを聞いていた青年が後をついてきて、自分は父親が失踪したと言う。彼女が気になる先輩や仲間たちはさかんに寄ってくるが、上手に受け止められない。

 中島みゆきの「風にならないか」という歌を思い出した。あの女の子の気持ちは多分2割くらいしか分からないが、ああいう人はきっといるだろう。もしかしたら自分のすぐ隣にいるかもしれない。

 結局彼女の同棲相手が実在していたかどうかも藪の中的な終わり方で、決してハッピーエンドではないが、ああいうタイプの人にとっては多分、ハッピーエンドも疲れてしまうのだろう。ほどほどに不幸のままどんよりと暮らすほうが安心という感情は、なんとなく理解できる。

 作品としては全体に暗い、あるいは重い雰囲気で、前作までとはだいぶ演出の傾向が変わった印象。しかし伝わってくるイメージは不思議とあまり変わらない。同じイメージを別の画材で描いたような感じがした。作・演出が同じ人だから意図せず自然とそうなってしまったのか、それともわざとそうしたのかは分からないが。

2013/09/14-18:30
悪い芝居「春よ行くな」
駅前劇場/当日精算3000円
作・演出:山崎彬
音楽:岡田太郎
出演:呉城久美/大川原瑞穂/池川貴清/大塚宣幸/山崎彬/宮下絵馬/森井めぐみ/北岸淳生/植田順平
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風琴工房「hedge」

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世界最大の投資銀行アデルソン・キャビタルの日本人初のパートナーである茂木のところに
かつての部下である加治が訪ねてくる。
茂木がアデルソンを辞めるという情報を聞きつけ訪ねてきたのだ。
加治は茂木に次はなにをやるつもりなのかと問う。
巨億の富を得て、2、3年は休むつもりだと答える茂木に
日本初となるバイアウト・ファンドをいっしょにやらないか、と加治は持ちかける。
(特設サイトより)

 金融の世界を舞台にした作品。中心になるのは、外資系投資会社から独立して日本初のバイアウト・ファンド会社を設立した男たちの物語。バイアウト・ファンドというのは、買収した企業の経営に積極的に参加して業績を改善し、株価が上昇したら売却するという手法を取るファンド会社とのこと。そういう手法は聞いたことがあるが名前は知らなかった。

 買収される企業の社員たちの心は穏やかではない。胡散臭い連中に会社が乗っ取られるのではないか疑心暗鬼になる者。経営に参加すると言われても、その会社の製品のことなど何も知らない奴らに口出しされたくないと反発する者。しかしそれぞれが熱い想いを持ちながら奔走していくことで信頼関係が生まれていく。

 この話に出てくる会社は、非常にうまくいった事例だろう。現実には必ず業績が上向くとは限らないし、一時的に持ち直してもまた破綻してしまうこともある。その世界をよく知る人にはもしかしたら「そんなもんじゃないよ」と言われるのかもしれない。

 ただしその点は作中やパンフレットでも触れられていて、作者はわかっていてあえてそうしたようだ。おそらくこの物語の本質は金融や経営そのものではなくて、それにまつわる人間ドラマ、熱い男たちが戦う姿を描くことだったからだろう。

 劇中に登場する難解な専門用語をメタ芝居で解説するなど、演出も展開もずいぶん苦労したと思われる。それだけあって、知らない世界がとても興味深く楽しめる作品に仕上がっていました。

2013/09/14-14:00
風琴工房「hedge」
ザ・スズナリ/事前入金3500円
作・演出:詩森ろば
出演:佐藤誓/井上裕朗/根津茂尚/多根周作/杉木隆幸/酒巻誉洋/三原一太/金成均/佐野功/藤尾姦太郎/金丸慎太郎
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2013年09月08日

柿喰う客「失禁リア王」

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 シェイクスピアの作品を女優だけで上演する「女体シェイクスピア」の第4弾。毎回タイトルの頭に官能的な単語をつけているが、悩殺、絶頂、発情に続く本作はまさかの失禁。おしっこ漏らすという意味以外にも意味があるようなことを誰かが書いていたが、手元の辞書にはそれしか載っていない。どういう意図が込められていたのだろうか。

 リア王はシェイクスピアの悲劇の中でも特に荘厳な雰囲気のイメージがあったが、今回はミュージカル的な演出でむしろスタイリッシュだった。いつも歌ってる新良エツ子だけでなく、主要登場人物はだいたい歌っていた。みなさんまず第一に声が良いので歌も綺麗だ。ただ主役のリア王を演ずる深谷由梨香の歌唱力が少々残念な感じだった。男性役だが体格が小さいのでどうしても迫力が出ないのだと思われる。今度は可愛らしい女性役を観てみたい。

 ここまで四作すべて深谷由梨香がタイトルロール。「なぜ毎回深谷さんなのか?」という点についてアフタートークで中屋敷さんが「頭のおかしい役だから」と答えていて半分納得したが、配役をシャッフルする乱痴気公演でリア王を演じた七味まゆ味もかなり狂気の役が演じられるのではないか。次回作がどうなるか気になるところだ。

2013/09/08-14:00
柿喰う客「失禁リア王」
吉祥寺シアター/事前入金4500円
原作:W.シェイクスピア
脚色・演出:中屋敷法仁
出演:伊東沙保/内田亜希子/岡野真那美/加藤紗希/北原沙弥香/葛木英/阪田瑞穂/七味まゆ味/杉ありさ/中林舞/新良エツ子/葉丸あすか/平田小百合/深谷由梨香/渡辺早織
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2013年09月07日

tsumazuki no ishi「ガソリンホットコーラ」

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「別段、無理難題でもないことを、無理難題にしつらえてさ。それに立ち向かってるふりして、同じとこに居座って。そうしてることに安心してんでしょ、あんたら?」

ニンゲンのディスコミュニケーションによる喪失感を、荒唐無稽なほどの絶望的なポジティブ感でやりすごすアクロバット人間模様。
(チラシより)

 十年以上前に上演された作品の再演。内容がわりとファンキーなので十年程度の時間にはほぼ影響を受けないだろう。前作のHEAVEN ELEVEN OF THE DEADはすっきりしない部分が目についたが、今回はわけがわからないなりに面白い作品だった。

 給油できないガソリンスタンド、潰れたサラ金の店舗、どう見てもまともではない登場人物の数々。なんじゃこりゃ?としか思えない異様な世界の正体は夢オチみたいにラストで明らかになるが、誰がどんな状況で見ている“夢”なのかがわかると、とても穏やかな気持になった。

2013/09/07-19:00
tsumazuki no ishi「ガソリンホットコーラ」
ザ・スズナリ/当日精算3500円
脚本:スエヒロケイスケ
演出:寺十吾
出演:寺十吾/釈八子/猫田直/宇鉄菊三/加地竜也/加藤亜依/佐藤華子/中村榮美子
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2013年08月25日

少年王者舘「ハニカム狂」

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 少年王者舘の公演タイトルって何か意味があるんだろうか?って毎回思うが結局わからない。今回も特に内容に関係しているとは思われなかった。いつもながらの少年王者舘だ。主役を演じた丸山厚人は元唐組の役者で、アングラ芝居がとても似合う。流山児事務所の作品(さらば、豚)に出ていたのが印象に残っているが、とにかく声がいい。声聞いているだけで楽しめた。

 オープニングはいきなり始まる。何作か前に本当に唐突に始まったのを観て以来、ギリギリまで携帯をいじっている人がいるとハラハラしてしまう。今回もそうだが、むしろその始まり方をネタにしていたのが笑えた。

 逆にエンディングのダンスは、2回あったように感じる。いつものようなダンスでこれで終わりかと思ったら後半が始まった感じ。予想通りの部分と予想を裏切る部分と、長く見続けている客の多い劇団だからこそのお遊びといったところか。

2013/08/25-14:00
少年王者舘「ハニカム狂」
ザ・スズナリ/当日精算3500円
作:天久聖一
構成・演出:天野天街
夕沈/黒宮万理/小林夢二/宮璃アリ/池田遼/街乃珠衣/井村昂/丸山厚人/谷宗和/石橋和也/織田圭祐
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2013年08月24日

ガラス玉遊戯「癒し刑」

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わたしのココロ、勝手に癒やさないで。

脳科学と心理学の進歩により、「心の病」はこの世からなくなろうとしていた。

ある事件で心に深い傷を負った緒方は、熱心なケアによって心の平穏を取り戻した。
今ではケアする側に回って、日夜、悩み苦しむ人々の治療に取り組んでいる。

そんな緒方の元に、ひとりの患者が送り込まれてきた。
自らの犯した罪を悔やみ、重度の精神疾患を患うその患者は、
かつて緒方を絶望の淵に叩き落とした、張本人だった。
(チラシより)

 家族を失うといったトラウマはまだ抱えていないが、心の病と仕事の悩みは他人事ではない。この話に出てくる人々の症状と状況はある意味とても身近だ。そして、こういう治療法が登場したらきっとかなりの人がそこにすがるだろう。嘘でもいいから幸せに浸りたいという叫びは実にリアルだ。

 壁と床にペンキをぶちまけたような抽象的な舞台セットが、ほどよくリアリティを和らげる効果を発揮していた。アフタートークでも触れられていたが、こういう話であまりにリアルなセットを組んだら観る方も疲れてしまうだろうから、良いバランスだったと思う。

 この劇団を観たのは初めてだが、良い印象。次回作にも期待したい。

2013/08/24-19:00
ガラス玉遊戯「癒し刑」
王子小劇場/支援会員
作・演出:大橋秀和
出演:菊地奈緒/菊地未来/園田裕樹/立蔵葉子/林剛央/ヒザイミズキ/星野恵亮/松下仁/宮崎雄真/与古田千晃
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危婦人「ボナミ」

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今、ここにいるキセキ。

1階は居酒屋
2階はシェアアハウス
そんな風変わりな一軒家”ボナミ”。

個性的で賑やかな面々が顔を揃え、
今日も楽しい時間が過ぎていく。

ある日、数年ぶりにこのウチの弟が現れた。
弟は姉に言う。

「姉さん、この家、売らないか」と。

激震が走る”ボナミ”。
果たして、明日はあるのか!
(チラシより)

 居酒屋とシェアハウス。主人公は、親が作ったその場所を守り続けている女性店主。弟が家を飛び出した後、一人で頑張ってきた。そろそろ結婚を考えなきゃいけない年齢にもなったが、いろんな男性と知り合ってむしろ選べないような状況。そんな所に弟が戻ってきて、町の再開発事業の話から家の売却を誘う。最初はいまさら帰ってきて何言ってるだと怒るが・・・。

 場所と人にまつわる物語だ。土地への執着を持たない自分はそういう話に苦手意識があるが、これはむしろ羨ましいと思わされた。こんな所に住んでみたいと思うのは、単なる現実逃避、ないものねだりだろうか。気の合う友人と居酒屋の二階で共同生活なんて、多分自分だったら堕落しきってしまうだろう。それでも、そんな人生がもしかしたらあったかもしれないと夢想する。

 危婦人は(名前で多少婦人と混同しかけたが)初めて観ました。非常にオーソドックスなお芝居で、人によっては毒が足りないと感じるかもしれませんが、安心して人を誘える作風だと思います。

2013/08/24-14:30
危婦人「ボナミ」
Geki地下Liberty/当日精算3500円
脚本・演出:スギタクミ
出演:小林至/菊池美里/田端玲実/ウチクリ内倉/加藤弘子/船戸慎士/森啓一郎/中村裕香里/石川明子/工藤さや/萱怜子/吉田俊大/中上雅巳
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2013年08月18日

七里ガ浜オールスターズ「オーラスライン」

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とあるミュージカル公演のオーディション控室──。
お前らは一体、何しに来たんだ!?
明らかに場違いなおじさん4人と1人の女の子にまつわるお話
(チラシより)

 ミュージカルのオーディション会場の控室。かなり本気の男性一人と、気弱な女性一人と、なんでいるのかわからないおっさんが四人。このおっさんたちがどうしてこんな所に来たのか、それぞれの過去と想いが順番に語られていく。

 くだらないけど面白い逸品だった。微妙に中年男性の悲哀とか共感したりして、笑った笑った。

 ただ一人真剣な青年を演じる一色洋平、犬と串などでお馴染み、小柄だが脱ぐとマッチョな体格を存分に活かして存在感を発揮していた。そして浅野さんは可愛かった。

2013/08/18-14:00
七里ガ浜オールスターズ「オーラスライン」
SPACE雑遊/当日清算1800円
脚本:前川麻子
演出:瀧川英次
出演:有川マコト/森田ガンツ/本井博之/野口雄介/浅野千鶴/一色洋平/瀧川英次
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2013年08月17日

月刊「根本宗子」「お酒との正しい付き合い方」

 女二人のやかましい会話劇。姉は看護婦で妹はキャバ嬢、どっちも夜働くため昼間寝るのだが、マンションの工事がうるさくて眠れない。そこで二人して酒を飲んでどうにかしようとするのだが、ちっとも解決には至らない。

 地下の狭いバーで凄まじい金切り声を浴びるのはなかなか厳しい体験ではありましたが、酔っぱらいなんて多分あんなものだろう。さすがに男だったら金切り声はあげないが、くだまいてる内容は大差ない。

 二人してKAT-TUNが大好きという設定だが、アイドルにはまる男のオタクはあまり酒呑むイメージがない。女性だとそうでもないんだろうか。

2013/08/17-20:00
月刊「根本宗子」「お酒との正しい付き合い方」
Bar夢/当日精算1800円
脚本・演出:根本宗子
出演:梨木智香/根本宗子
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スプリングマン「弁当屋の四兄弟」

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弁当屋のみなもとは、世田谷の商店街にある小さな老舗の弁当屋だ。切り盛りしているのは三代目である長男の信秀。人の良さだけが売りの萎びた弁当屋にかつての賑わいはない。それでもパートの春日と共に常連相手にあくせく働いている。みなもと家は早くに両親をなくしており、残されたのは四兄弟だけ。次男の龍盛は大手電気メーカーに就職しハワイの支社で働くビジネスマン。三男の清朝は働きもせず家に巣食らう寄生虫のような自堕落な生活を送る日々。四男の瑠宇玖はまもなく就職を控えた都内の私大に通う学生だ。親代わりをしている長男の信秀は、三男の清朝の将来だけが不安であった。四兄弟とその周りの人々の少しだけ何かが変わる平成の兄弟の物語。
(チラシより)

 この劇団は前回の「雨とマッシュルーム」を予備知識ゼロで観に行ってなかなか良かったので今回は予約して行ったが、やっぱり良かった。笑いあり泣きあり感動ありの、極めてオーソドックスなお芝居。基本に忠実というのか、斬新な演劇をたくさん観ていると時々こういう所に戻ってきたくなる。

 自分には同性の兄弟がいない。3歳年上の姉がいるが性格や興味の対象が全然違うのでケンカもほとんどしたことがないので、兄弟の確執みたいなものはなかなか想像しづらい。物語としてはいい感じに終わってはいるものの、会社や学校ならともかく家の中でこんなに人間関係がややこしかったらストレス溜まるだろうと思う。

2013/08/17-14:00
スプリングマン「弁当屋の四兄弟」
OFF・OFFシアター/当日精算3200円
脚本・演出:澁谷光平
出演:苗村大祐/波多野和俊/あきやまかおる/武藤啓太/井手昭仁/酒井香奈子/イワゴウサトシ/狩野俊哉
ゲスト:清水愛/鵜殿麻由
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2013年08月16日

マームとジプシー「cocoon」

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憧れも、初戀も、爆撃も、死も。
(チラシより)

 毎度話題性の高いマームとジプシーに、今回もまた強烈な一撃をくらった。

 太平洋戦争末期の沖縄地上戦における女学生たちの物語と思われるが、時と場所ははっきり示されているわけではない。もしかしたら過去ではなく未来のことかもしれないという含みを残しているように受け止めたが、どうだろうか。

 現代と変わらない楽しい学校生活を過ごしていた女学生たちが、傷ついた兵士たちの世話をするために動員される。食事の準備は洞窟の外に出なくてはならない最も危険な仕事。負傷した兵士の傷口にはウジが湧く。さらに戦況が悪化すると突然の解散命令を受け、安全な場所を求めて森のなかを逃げるが、次々に命を落としていく。

 同じセリフや同じシーンの反復というこの劇団の演出手法が、悲惨な話においては強烈な力を発揮した。それに加えて、舞台上の役者が持っているカメラの映像をそのままスクリーンに映しだすという手法が、ドキュメンタリー的な雰囲気を作っていた。

 手前は砂を敷き詰めた素舞台。その向こうにスクリーンとなる白い布があり、そのまた向こうにもスペースがある。そこで演じられる光景もまたカメラで映されスクリーンに。舞台でありながら視野が限定され、全貌が掴みづらくなる。渾沌とした状況を描く憎らしいほどに効果的な演出だ。

 しかしそんな技術的なことより、ずしんと伝わってくる魂の叫びのようなものを受け止めるので精一杯でした。役者たちも何かに取り憑かれているように見えた。

2013/08/16-19:00
マームとジプシー「cocoon」
東京芸術劇場シアターイースト/当日精算4000円
原作:今日マチ子
作・演出:藤田貴大
音楽:原田郁子
出演:青柳いづみ/伊東茄那/大岩さや/尾崎紅/尾崎桃子/川崎ゆり子/橘佑奈/菊池明明/小泉まき/小宮一葉/中前夏来/鍋島久美子/難波有/長谷川洋子/的場裕美/山崎ルキノ/吉田彩乃/吉田聡子/李そじん/石井亮介/尾野島慎太朗
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2013年08月11日

水素74%「謎の球体X」

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わたしは自分が生きているこの星についてほとんどなにも知りません。
次の瞬間ここでなにが起こるかの予測もできないし、今現在ここでなにが起こっているのかすらわかりません。
その上この星で暮らす人間たちがなにを考えているのかもわかりませんし、
なにより困ったことに、わたしはわたしがこの星に生まれた意味さえわからないのです。
それがとても不安で耐えられません。
だから誰かに謎を教えてもらいたい。嘘でも無理矢理でもなんでもいいんです。信じさせてさえくれれば。
(チラシより)

 ある夫婦、どうも夫がDVをしているっぽいが実際どうなのかはっきりしない。そこへ訪ねてくる妻の昔の同級生。お節介な大家さん、大家さんの夫は足が悪く一人ではうまく歩けない。妻の父と一緒に出て行った妹が帰ってくる。

 変な人、頭のおかしい人がたくさん出てくる話。当日パンフレットの配役表で、ある人物の説明に「キチガイ」と書かれていて驚いたが、その人に限らず全員がちょっとずつキチガイだった。最初はまともな人に見えても、だんだんおかしなことを言い始める。じわじわと不気味さが募っていく。

 登場人物がことごとくおかしいという点では乞局を思い出させる作風。観後感は気持ち悪いものだが嫌いではない。この劇団の舞台を観たのは初めてなので、今回の脚本がそういう内容なだけなのか、いつもこんな感じなのかは今のところ不明だが、しばらく注視したいと思う。

2013/08/11-14:00
水素74%「謎の球体X」
こまばアゴラ劇場/当日精算2000円
作・演出:田川啓介
出演:川隅奈保子/兵藤公美/古屋隆太/村井まどか/折原アキラ/富田真喜/八木光太郎
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2013年08月10日

ぬいぐるみハンター「ベッキーの憂鬱」

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僕らのクラスに交換留学生としてやってきたシャイで可憐な女の子ベッキー。
日本での楽しい生活を送っているはずが、おやおやどうしたのかな?最近ベッキーの元気がないみたいだよ。
ベッキーに笑顔を取り戻すため、おせっかいなクラスメイト達が企てた有難迷惑で壮大すぎる計画によって、ベッキーの憂鬱は想像もつかない方向へと転がりだす。
はたしてベッキーに笑顔を取り戻すことはできるのか!!
(チラシより)

 恋愛とヤンキーと部活と文化祭と生徒会と、まあ高校を舞台にした青春群像劇の典型的な設定ですが、出てくるキャラクターはぬいぐるみハンターらしい変態っぷりでした。最初から最後まで怒涛のテンション。

 タイトルのベッキーは最後まで登場しません。これはネタバレかもしれませんが、まあ外国人役らしい役者がいないんだから大体予想できるでしょう。ではなぜベッキーという人物を設定したのだろうか? なんとなく想像は付きますが少々あざとい作り方じゃないかなと思ったり。

2013/08/10-18:30
ぬいぐるみハンター「ベッキーの憂鬱」
駅前劇場/当日精算3000円
脚本・演出:池亀三太
出演:山岸門人/神戸アキコ/浅利ねこ/猪股和磨/竹田有希子/森崎健吾/川本ナオト/津和野諒/富田庸平/渋谷優史/赤本颯/齋藤喜彦/梅本幸希/矢頭睦/太田彩佳/土田香織/レベッカ
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とくお組「砂漠の町のレイルボーイズ」

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客が来るって、それは本当かい。
蜃気楼じゃないのかい。


「砂漠の町のレイルボーイズ」は、もう何年も列車が停まらない駅を舞台に、駅員(レイルボーイズ)たちの日常を描いた群像劇です。

乗客がいない駅の信号は常に「青」。何日かおきにくる列車は駅員たちの前をただ通り過ぎるだけ。彼らはいつの日か信号を赤に変え、客の切符を切り、荷物を列車に運び、そして客を見送ることを待ち望んでいます。

外の世界を知らない男たちの生きがいと、そこにあふれる時間の物語。

最近仕事に疲れちゃったなあという若者にも見てほしいシチュエーション・コメディです。
(チラシより)

 乗客が全然来ないから毎日グダグダ過ごして、乗りもしないのに駅に入り浸る地元のヤンキーと遊んだり、列車と関係ない新商売を始めたり。そこへ本部から監査がやってきて、慌てて「ちゃんと仕事してるふり」を始める…。

 駅員たちも切符くんや信号くんなど、どうやら設備などを擬人化したもので、本当の駅員は駅長一人のようでもある。そこはちょっとハッキリしなかったが、とにかく個性的なキャラクターによるドタバタ劇。

 こういう話にはどこかに哀愁が漂う。仕事ってなんだろうな。

 座・高円寺1の舞台は横に長いので前の方の席だと見づらい場合が多いのですが、駅をセットにするにはちょうど良いと思いました。しかし客が来たら信号を赤にして列車を止めるってシステムは日本じゃ考えられないが、ああいう過疎な大陸ではひょっとしたらあるんだろうか。

2013/08/10-14:00
とくお組「砂漠の町のレイルボーイズ」
座・高円寺1/当日精算3500円
作・演出:徳尾浩司
出演:篠崎友/堀田尋史/鈴木理学/柴田洋佑/徳尾浩司/伊藤直人/林雄大/本折智史/佐藤貴史
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2013年08月01日

カタルシツ「地下室の手記」

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さあ、
とうとうやって来たぞ、
現実との衝突というやつが!
(チラシより)

 「カタルシツ」は「語る室」の意で、イキウメの別館。イキウメからはみ出したものをときどきここでやりますとチラシにはあります。

 今作はドストエフスキーの同名作品を原作として現代に置き換え、手記の代わりにネット中継で勝手な妄想と主張を吐き散らす“痛い”男を描く。どこまで行っても情けない主人公だが、他人事ではないエピソードも散見され、笑ってる場合でもなかった。

 イキウメの看板俳優(と言っていいのか?)安井順平と、相手役として小野ゆり子が出ているものの、ほとんど安井順平の一人芝居と言っても過言ではない。もちろん小野ゆり子も魅力的でしたが役柄が風俗嬢だからなあ。

 ニコ生の仕組みとか2ちゃんねる用語などを知らないと理解できない演出も多数あり、私もこれらのサイトはそんなに常用していないので気付かなかった所もあると思われるが、なんとなく雰囲気として理解はできた。客席の反応からするとだいたいみんなわかっていたと思われる。

 流行りのマンガやアニメをしらないと理解できない作品もよくあるので、今後はネットもそういう位置づけになっていくのだろう。

2013/08/01-19:00
カタルシツ「地下室の手記」
赤坂レッドシアター/当日券4000円
脚本・演出:前川知大
出演:安井順平/小野ゆり子
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2013年07月28日

ミナモザ「彼らの敵」

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今から22年前、
僕はインダス川で誘拐された。


44日間の監禁生活。砂と水しかない場所。
あいつは昨日殺された。僕は気が狂いそうだった。
だからなるべく小さなことを考えた。
おばあちゃんのこと、大学の履修登録のこと、松屋の牛丼のこと。
そうしている限り、僕は僕のままでいられた。

44日後、僕は帰国した。僕はいつの間にか有名人だ。
日本中からたくさんの手紙が届いた。
太陽にかざせば「死ね」という字が浮かび上がって来るファンレターだ。
パパラッチたちは今日もアパートの前にいる。

それからいくつかの季節が過ぎた。

「銃口」を向け続けられた僕は、ある日「銃」を手に入れた。

僕は引き金を引くことにした。
(チラシより)

 早稲田の学生がパキスタンでインダス川の川下り中に誘拐されたという、22年前に起きた実話に基づくドキュメンタリー。モデルとなった服部貴康氏はカメラマンとしてミナモザの写真も撮っている方とのこと。1970年生まれということは私の2歳上なので当時私も大学生か高校生だったはずだが、残念ながら覚えてはいない。

 マスコミと世間に叩かれて心に傷を負った青年が卒業して選んだ職業が、いわば宿敵のはずの週刊誌カメラマンだったという話。タイトルやシチュエーションから、生還した学生に対する世間とマスコミのバッシングが中心かと思いきや、むしろ彼のその後の職業選択を巡る葛藤にこそポイントがあった。明確な答えはない。終盤、駅のホームでの長い長いシーンが印象的だった。

 タイトルにある「彼ら」とは誰のことだろう?

 週刊誌にめちゃくちゃな記事を書かれて世間からバッシングを受けた経緯は、ネットのある今なら随分違った対応ができたろうと思う。しかし過去にクレーム対応を担当した経験がある自分としては、巧妙な言い回しで責任を回避する編集長にむしろ共感を覚えてしまった。

2013/07/28-14:00
ミナモザ「彼らの敵」
こまばアゴラ劇場/当日精算3000円
作・演出:瀬戸山美咲
出演:西尾友樹/大原研二/浅倉洋介/山森大輔/菊池佳南/中田顕史郎続きを読む:スタッフリスト
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2013年07月21日

声を出すと気持ちいいの会「女郎蜘蛛」

jorougumo.jpg

―誰もが口を揃えて「いい子」と評す少女の背中には
大きな蜘蛛の彫り物があった。
それは、家族はおろか、彼女に付きまとうストーカーさえも知らない、秘め事の証。
密室で交錯する恋愛模様は、さながら蜘蛛の糸のごとく、もつれあい、絡み合い・・・
最後に喰われるのは、男か、それとも女か。
(チラシより)

 みみかき店のストーカー殺人事件と谷崎潤一郎の「刺青」をモチーフに、それと秋葉原の通り魔殺人事件も絡めて脚色した作品。色々混ざってる感じが残りながら一応はきちんと調和していた。素舞台に近い簡素な構造で、演じていない時の役者は左右に置かれた椅子で待機するスタイル。時折、歌やダンスが交じる。

 悪くないんだけど、刺青師と女の雰囲気がちょっと重さに欠けていたため、全体にスカスカした印象になってしまった。むしろ脇を固める役者の方がはまっていたと思う。この劇団の役者陣はほぼ知らないが、若手を中心に持ってきたのだろうか?

2013/07/21-14:00
声を出すと気持いいの会「女郎蜘蛛」
SPACE雑遊/当日精算2800円
作・演出:山本タカ
出演:後藤祐哉/石綿大夢/草野峻平/穂高みさき/加藤ひろたか/國重直也/廣瀬瞬/宮崎優里/吉田壮辰
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2013年07月20日

椿組「かなかぬち」

kanakanuchi.jpg


 時代は南北朝時代、熊野と吉野の間にある峠に縄張りを持って山伏や旅人から略奪していた山賊の一団がいた。その首領の“かなかぬち”は鉄の体を持ち、刀で切られても平気だという。そんな場所を何も知らず通ろうとした姉と弟の二人連れと、かなかぬちの一団に取り入りながら通行する旅芸人の一座。因縁絡み合う彼らの行く末は。

 27年間封印していたというアングラ野外劇。本物の火を大量に使うなど見せ場も多く、野外劇らしい力強さと熱量が感じられた。楠木正成にまつわる史実を若干交えているが、基本的にはフィクションであり見世物としてのエンターテイメントだ。

 普段見慣れている小劇場演劇とはだいぶ印象が違う。話の筋としてはそんなに複雑ではなく、要所要所の「見せ場」を重視しているのだろう。コメディや不条理劇でない限り物語全体として構成されることを好む自分としては、楽しみ方が違っていて戸惑った。

 芝居のあとは酒を振舞い、その場で宴会。一人だったので短時間で失礼しましたが、気の合う友達と一緒ならもっと楽しめたと思います。

2013/07/20-19:00
椿組「かなかぬち」
花園神社/当日清算4000円
作:中上健次
演出:和田喜夫
総監修:外波山文明
出演:石田えり/山本亨/恒松敦巳/田渕正博/木下藤次郎/井上カオリ/長嶺安奈/李峰仙/岡村多加江/洪明花/伊藤新/高松潤/宮崎敏行/水谷悟/安藤岳史/鳥越勇作/宮本翔太/趙徳安/青木大輔/國松卓/榛地良行/外波山流太/浜野まどか/今井夢子/瀬山英里子/清水ゆり/千葉りか子/下元史朗/田村寛/辻親八(声の出演)/外波山文明
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