2014年05月06日

エビス駅前バープロデュース「ふりむかないで」

furimukanaide.jpg

僕は妻を愛しています。
それは嘘じゃない。
一人の男が七人の女を旅するロードムービー。
(チラシより)

 登場人物全員が並んだ状態で、一人の男の女性遍歴が語られていく。男がマイクで観客に語りかけるなど演出的に色々挑戦したスタイルだが、出番でない役者が出ずっぱりというのは少々難しかったように思う。ただ、もう少しスペースに余裕があれば工夫もできるので、さらに練ったものを観たい気もする。

 とは言えバー公演には良く合ったテーマで、個々のエピソードはそれなりに面白かった。あんなモテモテな男は自分とはあまりに無関係だが。

2014/05/06-12:00
エビス駅前バープロデュース「ふりむかないで」
エビス駅前バー/当日精算3600円
脚本:米内山陽子
演出:広瀬格
出演:金崎敬江/斉藤麻衣子/田中千佳子/菊池美里/根本沙織/酒井香奈子/岸本卓也/内野真理
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月05日

レティクル東京座「常夜ノ國ノ★アリス」

tokoyonokuninoarisu.jpg

時は大征(たいせい)、大日本帝國。
没落華族の令嬢・五菱(いつびし)アリスはお家復興のため、
今をときめく大華族・九条(くじょう)家の花嫁となる。
が、それは表の顔。五菱の真の姿は、皇太子殿下に仕える暗殺者なのであった!
アリスに課せられた任務は、皇位継承の転覆を謀る美しく気高い九条家当主・「女王」と名高き夫となる九条ルイを殺すこと。
ましろき衣の皇太子殿下に手をひかれ飛び込んだ、絢爛豪華な社交世界には魔物が潜む!

和製ゴシックインフェルノ×原案★ルイス=キャロル『不思議の国のアリス』
(チラシより)

 皇位継承を巡る争いに巻き込まれた若者の話。こういう話では西洋風の演出になりがちだが大日本帝国で天皇と言ってるのは珍しい。帝国歌劇団とかそんなイメージかな?多分作者がそういうの好きなんだろうと思われる。

 学生劇団にありがちな装飾過剰な爆音系演劇で、マンガやアニメのネタを盛り込んでかなりハイコンテクストな印象もあった。多分、かなりの割合で元ネタを知らない。ジョジョネタくらいはわかるけど、最近のマンガとかアニメから持ってきたネタなら全然気付けない。

 ゴス調とか帝国風とか耽美的とかいろんな形容詞が浮かんでくるが、なんか疲れた。客層も若くて活気にあふれているが、おじさんにはちょっとね。

2014/05/05-19:30
レティクル東京座「常夜ノ國ノ★アリス」
王子小劇場/当日精算2500円
脚本・演出:赤星ユウ
出演:青海アキ/やないさき/船越絵雅/山本沙和/古俣晨/吉澤清貴/田中直人/中井萌/山田勇亮/吉野瑠奈/篠原正明/松浦智美/沈ゆうこ/庄條龍馬/コウコウサイ/秋元来方/寿里/藤波想平/万葉蜜子/中村藍/よしよしこ/東侃輝/MeR/寺尾みなみ/星秀美
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月19日

範宙遊泳「うまれてないからまだしねない」

umaretenaikara.jpg

2.5次元の演劇で注目を集める範宙遊泳が単独公演最年少アーティストとして
ついに芸劇に登場ー。


僕は、生きているその間にのみしか作品を生み出す意義を持てないタイプの人間です。だから演劇を選んでいるのだと思います。
演劇は(戯曲ならまだしも)演劇は現前にあることを大きく前提とした芸術であるという意味で、僕は僕が死んだ時に僕の作品が残っていることを、素直に想定できないし喜べないだろうということです。
未来に価値を見い出せない、ということではありません。
未来は常に僕の中で明るく輝いています。
それは、どんなに頭の良い人達が、未来は暗いと言おうとしたとしても、です。
今作は、終末の話です。人類が滅びていくかもしれない話を描くわけですから、僕の心は今、いささか暗いです。
けれどもその先に、何が待っているのか。
それを考えると力が漲ってくるのも確かなのです。
うまれてないからまだしねない。
確かに明るいものを目指そうとする僕の身体が心が脳が指先があります。
山本卓卓
(サイトより)

2014/04/19-19:00
範宙遊泳「うまれてないからまだしねない」
東京芸術劇場シアターイースト/当日清算3000円
脚本・演出:山本卓卓
出演:大橋一輝/熊川ふみ/埜本幸良/伊東沙保/大石将弘/椎橋綾那/田中美希恵/名児耶ゆり/波佐谷聡/福原冠
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アマヤドリ「ぬれぎぬ」

nureginu.jpg

舞台は「自由」が大いに拡大され、刑務所までもが半民営化されたリバタリアンの行政特区。日本でありながら、今の日本とはちょっと違う、そんな場所。

派遣労働のソーシャル・ワーカーとして重罪を犯した受刑者たちと向き合う「夫妻」を軸に、被害者の親族や受刑者のおかした罪とその内面を巡って物語は進む。「心からの反省」を促すべく活動を続ける「夫妻」とその会社のメンバーたちと、自らの罪に向き合うことを拒絶するかのような言動を続ける受刑者たち。と、そんなおりに「夫婦」の間にぬきさしならない大問題が発生し、ふたりの関係は大いにゆらいでいく……。

ストーカー殺人、安楽死殺人、死刑廃止論、結婚制度、出産前DNA鑑定など、現代人の抱える答えの出ない問いを丁寧で濃密な会話劇で展開します。アマヤドリのお家芸ともいえる群舞を封印し、音響効果も最小限に抑えて極小空間での対話劇に劇団員のみで挑みます。悪と自由の三部作、第一弾を飾るにふさわしい、スリリングな会話劇! ぜひお見逃しなく。
(チラシより)

 なんとなく「パ・ド・ドゥ」を思い出させるシチュエーションの作品。法廷劇とはまた違う、取り調べ劇とでもいうようなジャンルか。

 現実と異なる社会的背景の上での会話劇というのは、背景説明を会話に盛りこまなくてはならないが、不自然になることなくそれを実行するのは難しい。その点をうまくこなしても、物語としての面白さが二の次になっては意味が無い。この作品はそれらのハードルをある程度高いレベルでクリアしているものの、完全ではなかったと思う。

2014/04/19-15:00
アマヤドリ「ぬれぎぬ」
シアター風姿花伝/当日清算2800円
脚本・演出:広田淳一
出演:笠井里美/松下仁/糸山和則/渡邉圭介/小角まや/榊菜津美/中村早香
posted by #10 at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月08日

流山児★事務所「田園に死す」

denennisisu.jpg

父親のいない「私」は、恐山の麓の村で母と暮らしている十代の少年。楽しみはイタコに父親の霊を呼び出させて会話をすること。「私」の家の隣には他所から嫁入りした若い人妻が住んでおり、意中の人。ある日、村にやって来たサーカス団員から「私」は、外の世界の事を聞かされ、憧れを抱く。「私」は家出を決心し、同じように生活が嫌になった隣の人妻と共に村を離れる。駅で待ち合わせ、線路を歩く二人・・・・・ここまでが映画監督になった現在の「私」が製作した自伝映画の一部。「もし君がタイムマシーンに乗って数百年をさかのぼり、君の三代前のおばあさんを殺したとしたら、現在の君はいなくなると思うか」と批評家に尋ねられる。・・・・「私」は、少年時代の自分自身に出会う。映画で描かれた少年時代は脚色されており、真実ではないと言い放つ。「私の少年時代は現在の私の嘘だった」「作られた記憶の暗闇に少年が見たものは何か?」
(サイトより)

 …という説明文はあるものの、演出が天野天街である。あまりに特徴的なスタイルに脚本が飲み込まれ、結果的に流山児事務所による少年王者舘とでもいうべき作品になっていた。

 流山児事務所のファンで少年王者舘を観たことがない人にはなかなか新鮮だったかもしれないが、両方知っていると、コラボレーションによって何か新しいものが生まれているという印象はなく、単純にふたつのスタイルを合わせただけのように感じられた。

 もちろんクオリティは高いレベルにあるので、何かこう、せっかくのコラボなんだから何かもう一工夫欲しかったと思う。

2014/03/08-14:00
流山児★事務所「田園に死す」
ザ・スズナリ/当日清算4200円
脚本:寺山修司
演出:天野天街
出演:大内厚雄/伊藤弘子/小川輝晃/木暮拓矢/深山洋貴/小林七緒/冨澤力/柏倉太郎/平野直美/沖田乱/中田春介/蒲公仁/眞藤ヒロシ/坂井香奈美/阿萬由美/山下直哉/荒木理恵/山丸莉菜/小寺悠介/竹田邦彦/辻京太/飯塚克之/日下部そう/後藤英樹/桜井玲奈/藤村直樹/酒井和哉/藤村一成/小林夢二/鶴田理紗/宮川安利/佐原由美/艶嬢さとみ/さとうこうじ/流山児祥
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月18日

こゆび侍「少年の日の思い出」

shounennohino.jpg

正義のままでいられると思っていた、ずっと。

木漏れ日の下、足音をたてないよう、そっと蝶々に忍び寄る――もうすぐこれが自分のものになる。胸をぎゅっとしめつける気持ちを、少年たちは感じていた。
ぼくも他の少年たちと同じように、学校の時間も昼食の時間も忘れ、美しい蝶や蛾を探して捕まえて、古いつぶれたボール紙の箱に保管していた。裕福な家の連中にコレクションを値踏みされようと関係ない。それはぼくのなによりの宝物だった。

「エーミールがクジャクヤママユの羽化に成功したらしい」

クジャクヤママユは、古い蝶蛾図鑑でしか見たことのない珍しい蛾。ぼくは興奮を抑えられず、いてもたってもいられずエーミールの家へ――忍び込んだ。
部屋には、図鑑で見たよりもはるかに美しく、めったに手に入らないクジャクヤママユ。目をはなすのがおしかった。見れば見るほど艶めかしかった。
羽に描かれた瞳のような紋様が、じっと、ぼくを見つめていた。
(チラシより)

 原作をちゃんと読んでないのでわからないが、ヘルマン・ヘッセの作品をほぼそのまま舞台化したと思われる。いつの時代も若者の心の動きは変わらないのだと痛感させられる。

 主人公は小心者なのに、やっちゃいけないことをやってしまい、しらばっくれる度胸もなく、でも罪を告白して蔑まれるのも決して平気ではない。ああ、多かれ少なかれそういうことは自分の人生にもたくさんあった。その気まずい感覚が蘇ってきてグサグサと心を突き刺さって、たまらなかった。

 私が観たこゆび侍はこれまでオリジナルばかりだったので、原作ものをやるのは珍しい気がする。しかしとてもよく少年の心情が描けており、もっとこういうのを増やしてもいいのではないかと思う。

2014/01/18-19:30
こゆび侍「少年の日の思い出」
新宿眼科画廊/当日精算2300円
原作:ヘルマン・ヘッセ
脚本・演出:成島秀和
出演:廣瀬友美/島口綾/背乃じゅん/勢古尚行/藤井牧子/宮崎雄真/若林小夜
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月12日

The end of company ジエン社「ステロタイプテスト/パス」

suterotaiputesutopasu.jpg

はなす事を、はなして。
かく事を、かいて。
かけてしまった私たちを、はなして。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 指で、他人の背中を、なぞっている。
 
 ぐっと力を入れつつ、慎重に、間違えないように、しかも、鏡文字を書くようにだ。
 こうでもしないと、僕は目の前で背中を向いて呆然と座っている老人に、何らかの意思を伝える事が出来ない。
 天才芸人孔子先生の虜囚は続いている。孔子先生はあの日以来全身が麻痺してしまい、目を覚ます事は無いように当初は思われたが、悪魔医師は「触覚だけならなんとか分かる」ので「身体をゆすったり、揉んだりしなさい」といい残した。
 しかたなく、僕らは交代で孔子先生の身体をゆすっている。孔子先生を蝕んでいる麻痺が、身体を覆ってしまわないように。麻痺に覆われたら、人の身体は死ぬし、彼の脳内にある様々な情報も死ぬ。彼の脳内にある情報とは、この町が仮の町になる以前の町の情報でもあるし、稲作についての効率のいい収穫法でもあるし、「イソップ」と呼ばれる擬人化した動物たちの寓話でもあった。
 元芸人という経歴を持つこの孔子と言う男の口からこぼれ出た物語は、読み書きもろくに知らず、ただある為政者の思想書を丸暗記することしか教育を施されなかった僕らにとって、新鮮な驚きと面白さがあった。
 特に、イソップ物語は面白い。
 キツネは、すっぱいと言って、ぶどうを罵倒する。兎は亀と瞬発力を競っていたはずが、いつの間にか眠りに落ちる。アリは、歌うキリギリスを、冷徹に拒絶する。

「こうし せんせい おしえて ください わたしに せかいの ことごとくを」

 僕は孔子先生の背中を、指で文字を書き、なぞる。孔子は何かいいだけに、麻痺に犯された口を開く。
「馬を羨んだロバがいてな……そいつは……」
 こうして今日も僕らはイソップと呼ばれる擬人化動物物語群を孔子から引きだす事に成功した。
 ステロタイプテスト/パス――文字を正確に書くことができた時、僕たちは動物たちが巻き起こす、不思議で面白くて、そしてためになる物語を、この政治運動に疲れきった小さな老人の背中から、聞く事が、出来るのだ。
(チラシより)

2014/01/12-13:00
The end of company ジエン社「ステロタイプテスト/パス」
d-倉庫/当日清算3000円
作・演出:作者本介
出演: 安藤理樹/伊神忠聡/岡野康弘/小見美幸/川田智美/清水穂奈美/鈴木遼/矢野昌幸/山本美緒/湯舟すぴか/横山翔一/善積元続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月11日

クロムモリブデン「曲がるカーブ」

magaruka-bu.jpg

まためぐる夏の日に心尖らす人がいる
いやー高校野球って観たら面白いんだけど
金賭けちゃダメっすよ皆さん!
高校生が正々堂々と戦ってんですから
いやー高校生は何と戦ってんすかねえ
ランナーに出てセカンドベースに立って
煙草吸いたくなったらどうするんだろうねえ
昨日の酒が残ってたら ボールがよれよれ
女子マネージャーのことも気になるし
インフィールドフライとは、無死または一死で走者が一・二塁または満塁の時
打者がフェアゾーンの飛球を打ち上げたとき内野手が…うるせー
わかんないよ頭悪いからさあ ルールなんかさあ
投げて打って走って取って盗んで殴って抗議して
揉めて揉まれて退場して罰金払って甲子園!
クロムモリブデン流、甲子園!
対外試合禁止でも試合してもいいですか?
10人で守ってもいいですか?
役者にデッドボール!お客さんにビーンボール!
(チラシより)

 本筋は甲子園を目指す高校野球部の話だが、野球はまったくしない。外野のそのまた外野で不祥事の嵐が吹き荒れ、見苦しくも滑稽になんとかしよう(ごまかそう)として右往左往する人々や、それも関係なく好き勝手してる人たちの話。いつもながらのクロム節で結末は大音響のカタストロフィ。

 女子高生を演じる葛木英と渡邉とかげがとても可愛らしかった。終盤、彼女たちがマウスみたいによいしょよいしょと野球場を回すシーンは実に素敵だった。意味がわからないよ。

2014/01/11-19:00
クロムモリブデン「曲がるカーブ」
赤坂レッドシアター/事前入金3500円
作・演出:青木秀樹
出演:森下亮/板倉チヒロ/奥田ワレタ/久保貫太郎/渡邉とかげ/小林義典/武子太郎/花戸祐介/葛木英/ゆにば
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

青☆組「人魚の夜」

ningyonoyoru.jpg

ある日、父が、女を拾ってきました。
浜辺を散歩していたら、うっかり拾ってしまったのだと言います。
こんな海辺の田舎町ではあっという間に噂になるからと、たしなめましたが、その女、もう、戻れないと言うのです。

ほろ苦いペーソスと繊細さを持ち味に、市井の人々の営みを描き続ける青☆組。
最新作は、少しふしぎ(SF)な「未来の昔話」シリーズ。
喪失と、再生と、恋。日本古来の伝承をモチーフに描く、男と女の物語。
あなたの心の琴線をそっとなでる、大人の為の官能的なおとぎ話をお届けします。
(チラシより)

2014/01/11-15:00
青☆組「人魚の夜」
こまばアゴラ劇場/当日精算3000円
作・演出:吉田小夏
出演:荒井志郎/藤川修二/大西玲子/小瀧万梨子/田村元/渋谷はるか/佐々木美奈/吉田圭佑/井上裕朗
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 15:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年12月07日

DULL-COLORED POP「アクアリウム」

akuariumu.jpg

“グラスフィッシュという魚がいて、透明なその魚を、アクアリウムに飼っているのね。
直射日光はダメだから、夕方、日が沈む直前の、一番赤い西日がさす頃に、すこしだけカーテンを開けてやる。そうすると。水槽も、水も、グラスフィッシュも、淡いオレンジ色にきらきらする。
夜が来ると魚たちは、蛍光灯に照らされて、青白く止まっている。魚は、浮いたまま眠るの。”

 とあるシェアハウス物件。男女数名、組んずほぐれつ暮らしている。鳥とワニが逃げ出し、一人の青年が戻ってくる。ふとっちょとガリの刑事二人が部屋を訪れ、静かに警察手帳を見せた。先日起こった殺人事件の、犯人を探しています。部屋にはとても美しい、アクアリウムが置かれている。赤い西日に貫かれて、オレンジ色にきらきらと光っている。住人の一人が、ふと気づく。私たちの共通点。もう一人が思い出す。17年前に起きた、14歳の殺人事件。もう一人は考え続ける。逃げ出した鳥とワニの行方を。

 今を生きる僕たち私たちは、何にのっとって生きていこう? キレる14歳、あるいはキレる17歳、あるいはもっとストレートに酒鬼薔薇世代と呼ばれた僕が改めて問い直す、「おれたち一体、何だっけ!?」ものがたり。
(サイトより)

 作者が自分の「世代」を題材として描いた物語だが、世代もまた、ひとつの集団として扱われることが多い。家族や親戚は遺伝的に近い者の集団であり、町や国は空間的距離が近い者の集団であるとすれば、世代は時間的距離が近い者の集団とでも言えようか。

 少し前に脱法ハウスの関係で話題になったが、シェアハウスという住居形態は家族でない人々が家族のように一緒に暮らすもの。擬似家族である彼らは、必然的に同じ地域の住民である。そこに世代という集団要素を注いで煮込んだのだから、実にこってりした仕上がりになっていた。

 じっくり考えるとどんより暗い気分になってしまうような話に、ワニと鳥とアクアリウムが優しさを供給しているようだった。それはとても弱い、物事を解決するわけではない優しさではあるけれど。

2013/12/07-18:00
DULL-COLORED POP「アクアリウム」
シアター風姿花伝/当日券2500円(プレビュー公演)
脚本・演出:谷賢一
出演:東谷英人/大原研二/中村梨那/堀奈津美/百花亜希/若林えり/一色洋平/中林舞/中間統彦/渡邊亮
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

劇団ブラジル「性病はなによりの証拠」

seibyouwananiyorino.jpg

見渡す限り、陸ひとつ見えない海に浮かぶ、たったひとつの小さなボート。
遭難して取り残されたのは、8人の男女。残された水と食料はほんのわずか。
ひとりが性病を発症する。愛の病はボートの上を蔓延していく。もうひとり、またひとりと……。
果たして、生きて帰ることができるのか?
それぞれの思惑、疑心、愛情がうずまく究極の【苦笑系密室劇】
(チラシより)

 今回もたっぷり苦笑させてもらいました。8人は小さな会社の社員とその家族または恋人だが、性病が発症したことでドロドロの浮気関係がバレていく。おいおいお前もかよ!というベタな流れなのだが、お約束でもちゃんと面白い。

 ただ、性病の症状が「黄色いゲロを吐く」というもので、正直言ってその描写は生理的に受け付けなかった。話の面白さと表現の気持ち悪さが相殺していたように感じる。インパクトは確かにあるんだけど…。

2013/12/07-14:30
劇団ブラジル「性病はなによりの証拠」
王子小劇場/当日清算3000円
脚本・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:辰巳智秋/西山聡/諌山幸治/印宮伸二/堀川炎/金沢涼恵/佐々木千恵/小川夏鈴
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月24日

パラドックス定数「殺戮十七音」

satsurikujuunanaon.jpg

さらさらと おともなく
そぎおとし はぎおとし
あるがまま すきとおる
むきだしの たましいが
いまここに よっつあります
ちとほねと にくをもつ
あきらかな そのからだ
はてのない くらがりに
おびえつつ いのりつつ
かれらはなにを よむのだろう
(チラシより)

2013/11/24-18:00
パラドックス定数「殺戮十七音」
荻窪小劇場/当日精算3000円
作・演出:野木萌葱
出演:植村宏司/西原誠吾/井内勇希/小野ゆたか
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

てがみ座「地を渡る舟」

chiwowatarufune.jpg

それは、文字による方舟。
昭和20年春、来るべき本土決戦が声高に叫ばれる街にひとりの男がいた。
男は敗戦の日を正確に予期し、各地の農家を訪ね歩いていた。
この国の命運が尽きるまであと4ヶ月。
「その日」を迎えた暁には、ただちに日本を立て直すために。
旅する民俗学者 宮本常一。瀬戸内海の島で生まれた彼は日本列島を隅々まで歩き抜き、
人々の営みをありのまま見つめ、文字にはならずに受け継がれてきた言葉に耳を澄ませた。
生涯約16万キロ、およそ四千日に及ぶその旅を支援したのは、
戦時下に日銀総裁を務めた渋沢敬三だった。
昭和初期、渋沢敬三が私財を投じて自宅の敷地内に創った民俗学研究所『屋根裏の博物館(アチック・ミューゼアム)』
そこには多くの研究者たちが集い、それぞれのやり方でこの国を描き留めようと力を尽くした。
けれど、真摯な情熱は、戦時下へ墜ちゆく中で、翻弄され飲み込まれていく……。
宮本常一、渋沢敬三。そしてアチック・ミューゼアムをモデルに描く、若き民俗学者たちの葛藤。
記憶されたものだけが記録にとどめられる。そして今、方舟の行方は。
(チラシより)

 民俗学の大家である宮本常一の伝記的な舞台。恥ずかしながら彼の名を知りませんでしたが、それでも作品として十分楽しめるものでした。また、てがみ座の舞台を観るのも初めてですが、舞台装置の質感が高く、演出も全体に品位を感じるものでした。

2013/11/24-14:00
てがみ座「地を渡る舟」
東京芸術劇場シアターウエスト/当日精算4000円
脚本:長田育恵
演出:扇田拓也
出演:福田温子/今泉舞/箱田暁史/石村みか/古河耕史/近藤フク/生津徹/多根周作/七味まゆ味/松角洋平/原扶貴子/中村シユン/青山勝
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月17日

feblaboプロデュース「僕の偉大なるアイザック・ニュートン」

bokunoidainaruaizakku,jpg.jpg

今日で20歳の誕生日を迎えるサムは2桁の掛け算が出来なかった。
もちろん苦手な教科は算数だけではないし、運動もからきし。
しかし大好きな偉人、アイザック・ニュートンに関しては誰よりも詳しかった。
彼は今、地元を離れ、紛争地帯で救護活動をしている幼馴染の美幸に会いに行く旅へ出かける。

今年から就職する香帆は本社配属になった為田舎を出て、都会へ出る。
香帆の事が心配な香帆の兄は頻繁に連絡する。それが段々煩わしく感じる香帆。
そのうち、香帆は転勤が続き、気付けば宇宙へ行くことになる。

けんじは冴えない工場勤務の男。しかし、ある日突然命を狙われ始める。
命を狙うのはキッドマン027。新米暗殺者だ。何度となく殺されるけんじ。
しかしけんじは不死身の体の持ち主だった。
キッドマンはどんどん成長していくが、けんじは死なないしむしろなんか強くなっていく。

秀和は天才プログラマー。
その才能は社会貢献するためには使わず、自分のため、画面の向こう側にいる電子の彼女、ミリナのために奮っていた。
けれども秀和とミリナの距離は縮まらない。

佐々木舞と中村舞は大親友。
二人でバイクに乗って目的の無い旅をしていたところだった。
しかしバイクのトラブルにより、二人は喧嘩し、佐々木は先へ進み、中村は帰りだす。
親友は二度と出会わない。

―5つの物語の5つの距離。「距離」についての群像劇。
(チラシより)

 5つの物語から構成されているがオムニバス形式ではなく、互いに交錯して綴られる。最初は普通の青春ロードムービーかと思っていたらだんだん様子がおかしくなって、ファンタジーなのかSFなのか、奇妙な世界にじわじわ飲み込まれていくようだった。

2013/11/17-14:00
feblaboプロデュース「僕の偉大なるアイザック・ニュートン」
駅前劇場/当日清算3000円
脚本:佐々木瞳
演出:池田智哉
出演:後藤慧/笹木皓太/白井愛弓/菅原雪/成元一真/服部無双/丸山夏歩/矢島理佐/山川ありそ/レベッカ
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月09日

ぬいぐるみハンター「地球の軌道をグイッと」

chikyuunokidouwo.jpg

地球をグイッと押し上げてみたら、ダンゴムシみたいな現実と目が合った。

都心の地下にひっそりと拠点を構える謎の会社。
そこでは日夜社員たちが世界を震撼させる新プロジェクトを進めていたが、いまだに日の目をみたことはない。なぜならこの会社、
社長も部長も課長も係長も平社員も窓際社員も派遣もバイトも社長夫人も社長秘書も
どいつもこいつもバカと間抜けと変態と末っ子と甘党と寂しがり屋さんなのだ。
世界を驚かせるために繰り広げられる企業努力に明日はあるのか。(あるわけないか。)
(チラシより)

 神戸アキコ演じる天才少女(少年?)が学校のクラブから起業して会社を大きくしていくが、その先には壮大な目的がある。しかし独善的な彼女についていけない仲間たちとの距離は広がっていく。

 いつもガチャガチャ派手でかわいい賑やかな芝居の多いぬいぐるみハンターですが、今回はずいぶん思い切って方向転換した印象。これまでは温かい仲間や信頼関係を描いた作品が多かった印象ですが、今回はむしろ仲間でいられなくなる人間関係が全面に押しだされた展開でした。

 また、考えてみればこれまでも社会問題のようなテーマを取り入れつつ堅苦しさは一切ない作風でしたが、今回はその点でも挑戦的。客演を入れず劇団員だけの出演にしたのも何か思い入れがあったのかもしれません。ただ個人的にはこの劇団に求めるのはこういうのじゃないな、とも思いました。

2013/11/09-18:30
ぬいぐるみハンター「地球の軌道をグイッと」
小劇場楽園/当日精算2500円
脚本・演出:池亀三太
出演:神戸アキコ/浅利ねこ/猪股和磨/竹田有希子/梅本幸希/森崎健吾/土田香織/富田庸平/羊田彩佳
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 18:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

□字ック「退カヌコビヌカエリミヌ」

hikanukobinukaeriminu.jpg

中退女なんてスーパぐらいでしか働く場所なんてないじゃない。
でもいいの。半額落ちした食事たちを胃に押し込みまくって吐きまくって、
わたしの中身はきれいに洗浄されていくんだし。
言葉なんか必要ないでしょ。誰にも通じない言葉なんかさ。
だからわたしは自分の中身をドロドロの胃液と一緒に吐き出すんだし、
それはこれからもずっと続くんだろうし。そう思ってたんだ。マジに。
あんたに会っちゃったから全部台無しだけども。
自己批判。おはよう。現実つーのは、強制的だからさ、色々と。
けどそっからの途中退場。御機嫌よう、こちらは最高の気分さ。
(チラシより)

 舞台は24時間営業のスーパーのバックヤード。少し前に近所のゴミ捨て場から死体が出たらしい。地元の高校出身者同士によるいじめやら、おばさん三人組の下世話な噂話やら、空気の読めない新人やら、いつも怒ってる小心者の店長やら、あまり仲良くなりたくないキャラクターばかり。

 □字ックの観劇は2回目。前回観た「鬼畜ビューティー」は学校が主な舞台だったが、今回も閉鎖的な人間関係のドロドロした嫌な感じがよく描かれている。正直、観ていて楽しい芝居ではない。物語の展開は気持ち悪いことばかりだ。嫌なやつは本当に嫌。特段のハッピーエンドがあるわけでもない。

 しかしそういう作品は印象に残る。強烈に臭いチーズのような、癖になる悪印象だ。この作品で描かれた日常は好きじゃないが、芝居としてみるのは、意外と嫌いじゃないと思う。作・演出の山田佳奈という方がどんな人なのか、少し気になる。

2013/11/09-14:00
□字ック「退カヌコビヌカエリミヌ」
サンモールスタジオ/当日精算3000円
作・演出:山田佳奈
出演:小野寺ずる/川原真衣/日高ボブ美/山田佳奈/川田智美/白川哲次/菅原佳子/孫貞子/中島美紀/長野功/NIWA/林浩太郎/堀田創/満間昂平/横山将士
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月19日

虚構の劇団「エゴ・サーチ」

egosa-chi.jpg

エゴ・サーチとは、インターネット上で、自分の本名やハンドルネームで検索すること。
筆がなかなか進まない新人小説家。彼がインターネット上に見つけたのは、
自分と同じ名前、同じ経歴のプロフィールをもつ「誰か」のブログ。
「わたし」の知らないもう一人の「わたし」の存在に惑わされる一方、
彼の小説は沖縄の離島に訪れた女性がキジムナーに出会ったところから、
一向に前に進まない。失われた記憶と、届かなかった想い、
バラバラに見えたパズルが集まった時に見える真実とは。
虚構の劇団 作品群の中で最も再演を願う声が高かった、
「謎」と「想い」が織り重なる感動の物語。再び。
(チラシより)

 離島の穏やかな光景から始まって都会の若者の群像劇となり、IT企業とネットの闇みたいな話になり、最終的には心温まる人情劇にまた復帰する。タイトルはネット用語だが、内容はあくまでも人間を描いている。

 テーマの選び方、伏線の貼り方、笑いとシリアスのバランス、登場人物のキャラ立てなど、お芝居の見本のようによく出来た脚本だと思いました。再演を期待する声が高かったのも頷けます。私のようにややアングラに近いくらいの小劇場を見慣れている者にはちょっと優等生すぎる印象さえありますが。

 再演とはいえ初演は3年前なのでさほど時代が変わっているわけではありません。しかし2013年にはTwitterなどのSNSから炎上が新たなネットの問題として大きく注目されてきたこともあり、もしまた何年か後に再演するならネット関連の話題にはそういった事情も加味する必要があるでしょう。この世界はとかく変化が激しいので、すぐに陳腐化してしまいます。

2013/10/19-14:00
虚構の劇団「エゴ・サーチ」
あうるすぽっと/事前入金4500円
作・演出:鴻上尚史
出演:小沢道成/小野川晶/杉浦一輝/三上陽永/渡辺芳博/大杉さほり/塚本翔大/森田ひかり/牧田哲也/八木菜々花/伊阪達也
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年10月05日

アガリスクエンターテイメント「ナイゲン」

naigen2013.jpg

会議は、まだ終わらない

かつては自主自律を旨とし生徒による自治を誇っていたが、今はそんな伝統も死に絶えた
どこにでもある進学校、国府台高校。
ある夏の日、唯一残った伝統にして、やたら長いだけの文化祭の為の会議“ナイゲン”は、
惰性のままにその日程を終わろうとしていた。
しかし、終了間際に一つの報せが飛び込む。
「今年は、1クラスだけ、文化祭での発表が出来なくなります」
それを機に会議は性格を変え始める。
――どこのクラスを落とすのか。
かくして、会議に不慣れな高校生達の泥仕合がはじまった…!
(チラシより)

 この劇団がこの作品を上演するのは3度目、再々演になるそうだ。初演は観ていないが昨年の再演は観た。今回が2度目。昨年とは人の並び方が一部変わっていたが出演者は同じで、劇団の定番作品にしていくつもりのようだ。

 内容は全くと言っていいほど変わっていないので物語に関する感想も特に変わっていないが、笑えるところは吉本並みに予定通りでもやっぱり大笑いできた。結末がわかっていても楽しめるのはいい作品だ。

 観劇初心者にも安心して勧められる作品なので、今後も定番として繰り返し再演してもらいたいと思う。ただ出演者の年齢は上がってしまうので、世代交代も必要だろう。今のところ見事に高校生を演じていたとは思うが。

2013/10/05-14:30
アガリスクエンターテイメント「ナイゲン」
シアターミラクル/当日精算2500円
脚本・演出:冨坂友
出演:甲田守/沈ゆうこ/鹿島ゆきこ/金原並央/さいとう篤史/榎並夕起/長谷川一樹/斉藤コータ/淺越岳人/細井寿代/矢吹ジャンプ/信原久美子/塩原俊之
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月28日

五反田団「五反田の朝焼け」

 とある町(五反田?)で暮らす人々の光景。いくらか変な人たちだけど、激しくナンセンスではない、こういう人いるかもしれないと思えるレベルの変な人たち。ちょっとした事件のような出来事が起こり、ちょっと変な事態になっていくが、激しく劇的な展開ではない。

 いつもながら五反田団はどうでもいい話を作品に仕立て上げる、ぬるい時間が流れる観劇だ。自分の金と時間をこの作品に費やす価値を人に説明するのはとても難しい。説明がつかないけれど、心地よい時間であり、価値があると感じている人はたくさんいて、客席はそういう人で埋まっている。変な世界だ。もちろん自分もその一人なのだが。

2013/09/28-19:30
五反田団「五反田の朝焼け」
アトリエヘリコプター/当日精算2000円
脚本・演出:前田司郎
出演:大山雄史/後藤飛鳥/中川幸子/西田麻耶/前田司郎/宮部純子/望月志津子
posted by #10 at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

KUDAN PROJECT「真夜中の弥次さん喜多さん」

mayonakano.jpg

弥次と喜多は、この世の“リアル”を求めて江戸を出発し、お伊勢参りへと旅立つ。とある宿にたどり着いた二人は、雨で足止めをくらう。幾日も降りしきる雨の中、そこは次第に行く当ての無い想念で満たされ、二人は“夢”と“現(うつつ)”の狭間を揺れ動く。もはや江戸を出発したのかどうかでさえ定かではなくなり、幻想的な時間と空間が交錯し、二人の悪夢がユーモラスで不条理に展開していく。
(サイトより)

 サイトに書かれている「日本演劇界の至宝」「小劇場演劇のひとつの到達点」という評価はさすがに大袈裟だが、全くの誇大妄想というわけでもない。少なくとも日本の小劇場における不条理演劇としては究極だと思える。芸術的あるいは耽美なナンセンス芝居だ。

 伊勢に行くはずの弥次さん喜多さんが宿の一室で繰り広げる物語は、ひたすらグルグル回るばかりでちっとも前に進まない。しかし通常の少年王者館に見られるリピートとは趣向が異なり、エスカレートして輪から逸脱して、また新しいグルグルが始まる。

 10年前に七ツ寺共同スタジオで観劇した作品だが、意外と覚えていた。冒頭で飛んでいってしまうところや出前のくだりは今でも斬新だ。さらにあと10年くらいは残してほしい作品だと思う。

2013/09/28-14:00
KUDAN PROJECT「真夜中の弥次さん喜多さん」
こまばアゴラ劇場/事前入金3305円
原作:しりあがり寿
脚本・演出:天野天街
出演:小熊ヒデジ/寺十吾
続きを読む:スタッフリスト
posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする