2014年10月11日

子供鉅人「逐電100W・ロード100Mile(ヴァージン)」

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反逆者・マクベスによって父王を殺害され、
自らの身の危険を察知した二人の王子は祖国を捨て、他国へと逐電する。

そこに待ち受けていたのは、マクベスを予言によって主殺しへと導いた三人の魔女。

次々と祖国の惨状の報がもたらされるなか、復習をそそのかす彼女たちに、
二人の王子は苦悩と野心を抱く。

やがて、祖国復興を誓い合った二人の王子までも王位継承を巡り、
骨肉相食む闘争を繰り広げることになるのだった。
(チラシより)

 まず会場に入ってすぐ舞台の使い方に驚かされる。舞台上に舞台と客席を全部おさめ、本来の客席は広々した空間としてそのまま残されている。この空間は作品中、海として扱われるのだが、かなり大胆な発想だし実行した度胸はすごいと思う。

 物語はマクベスを下敷きにしたと説明されているが、マクベス本人やその夫人より、逃げ出した二人の王子が中心となっている。現代風に翻案したというわけでもなく、時代や場所がよくわからない独特の世界観を構築していたと思う。

 子供鉅人と言えば大阪の谷六にあるポコペンという場所(長屋の一室)での上演が一番好きだが、東京に拠点を移したとのことで、あの部屋がどうなっているのか気になる。しかしこういう広々した劇場での公演でもちゃんと自分たちの色が出せていたのはとても嬉しい。

2014/10/11-19:00
子供鉅人「逐電100W・ロード100Mile(ヴァージン)」
あうるすぽっと/当日券3500円
脚本・演出:益山貴司
出演:益山寛司/益山貴司/キキ花香/影山徹/億なつき/ミネユキ/山西竜矢
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2014年10月05日

オイスターズ「どこをみている」

dokowomiteiru.jpg

忍者が分身の術を使った。オロオロしている僕に向かって忍者はこう言う「どこをみている」。
彼女と二人で散歩していて突然彼女が「かわいい!」と言った、オロオロしている僕に向かって彼女はこう言う「どこをみている」。
…どちらにせよ身の危険を感じる言葉だ。てことは忍者と彼女を入れ替えても同じかもしれない。
忍者と二人で散歩していて僕が別の女を見た場合、忍者は「どこをみている」とは言わない。どこをみているかはわかりきっているから。
その場合は無言で「ぼくをみている」。やっぱり身の危険を感じた。
(サイトより)

 主人公が居酒屋の上司に切れて辞めると、よくわからない先輩がついてくる。何この人。そこから始まる不条理劇。ただひたすら不条理。冒頭で極めて威勢よかった主人公がこの不思議な人のワールドに絡め取られて翻弄される。

 この手の不条理劇は昔よくあったけど最近は減った気がする。意味と言える意味があるかわからない。多分ない。けれど面白い。一歩間違えると自己満足のナンセンス芝居になってしまうだろうが、オイスターズはギリギリの崖っぷちを上手く落ちずに歩んでいる気がする。

 余談だがこの芝居のチラシはつい最近の小劇場演劇のチラシをずらりと並べて撮影されている。かなり直近のものが多く、よく作れたと関心した。

2014/10/05-15:00
オイスターズ「どこをみている」
こまばアゴラ劇場/当日精算2800円
脚本・演出:平塚直隆
出演:田内康介/二瓶翔輔/横山更紗/平塚直隆
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2014年10月04日

発条ロールシアター「タダデネ!」

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閑静な住宅街の、とある図書館。
そこに集うのは、気怠い昼下がりの空気を共有する者たち。
と、突然の稲光と雷鳴。人々の悲鳴。
そしてーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
物憂い日常のうちにいた人々は、突如、荒れ狂う海に投げ出される!
流れ着いたのは、かつて繁栄した海の民の根城とする湊だった。

2013年上演「ソンデネヴァ!」に続く、発条ロール版 幻のロマン史劇!
(チラシより)

 ある町の図書館にたまたまいた人達が、遠い時代の港町とリンクするというファンタジー的な設定。過去と現代が交錯する展開は役者の早着替えが大変そうだけど、そうする価値がどのくらいあるのかは良く分からなかった。

 時代劇的な作風とは裏腹に結構ハイコンテクストな芝居だったのかもしれない。まずタイトルの意味が分からない。何語?

 水の表現はうまかったと思うが、殺陣はイマイチ。専門家の指導を受ければもう少しかっこよくなるのではないだろうか。

2014/10/04-19:00
発条ロールシアター「タダデネ!」
タイニイアリス/当日券2800円
脚本・演出:則末チエ
出演:杉浦直/藤一平/加茂克/江戸川良/大河/まみ/川村あゆ美/則末チエ
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2014年09月28日

流山児事務所「どんぶりの底」

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ゴーリキーの『どん底』にインスパイアされ、芥川賞ノミネート5回、川端康成文学賞受賞で注目の小説家:戌井昭人が流山児★事務所に「初めて」書き下ろす入魂の力作。どこでもない廃墟のアパートを舞台に、過去のようで、未来のようで、ただの《現在》でしかない、「明るくしぶとく生きる」庶民たちの日常を濃密に描きます。
閉塞状況のニッポンをカオスとして描くパワフルでナンセンスな人間賛歌の音楽喜劇、それが「どんぶりの底」。
(チラシより)

 雰囲気は昭和初期だが話の内容からすると近未来。泥臭い味は悪くないが、背景とか設定が微妙にしっくり来ない。何もあんな設定にしなくても良かったような気がするが、狙うところは何だったのだろうか。

2014/09/28-14:00
流山児★事務所「どんぶりの底」
ザ・スズナリ/当日精算4000円
作:戌井昭人
演出:流山児祥
出演:若杉宏二/月船さらら/大内厚雄/大久保鷹/伊藤弘子/栗原茂/佐藤華子/里美和彦/冨澤力/平野直美/木暮拓矢/坂井香奈美/武田智弘/桐原三枝/根本和史/土井通肇/塩野谷正幸
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2014年09月21日

アマヤドリ「非常の階段」

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さて。「悪と自由」をテーマにお送りしている今年のアマヤドリですが、今作は特に「自由」にフォーカスして創作をしていきたいと思います。そこでまた「悪」やら「自由」やらについてあれこれと考えてみたんですが、ふと、「自由」の反対ってのは「平等」ってことなんじゃないのか? というアイディアが浮かびました。言ってみりゃ、「平等」ってのは「不自由」の別名ではないかしら? と、そんな着想を出発点に物語を作ってみようと思います。

舞台は現代とは少しだけズレた所にある日本。登場するのは、とにかくどんな手を使ってでも生き延びて行こうとする図々しい奴らです。あるいは、そうしなければいけない立場にいる、弱い人たちです。

才能豊かな客演陣といつものアマヤドリ・メンバーで、フルサイズの演劇をお届けいたします。うだるような夏が終わりを迎えるころ、劇場でお会いできることを楽しみにしております。
(サイトより)

 少し道を踏み外してる人々と比較的まっとうな家庭の人々が、一人の青年を通じて交流する。その温度差とか分かり合えなさとかモヤモヤしたものを、例によってスタイリッシュに描いている。現実と少しだけズレてる様子がスパイスのように効いているのもお馴染みだ。

 ひょっとこ乱舞時代に定番だったダンスシーンがアマヤドリになってから減っていたが、今回はそれがだいぶ復活したように思う。個人的にはそれが好きだったので喜ばしいが、アマヤドリとしてのスタイルはまだ固まっていないということかもしれない。

2014/09/21-14:00
アマヤドリ「非常の階段」
吉祥寺シアター/当日精算3500円
作・演出:広田淳一
出演:笠井里美/松下仁/糸山和則/渡邉圭介/小角まや/榊菜津美/沼田星麻/伊藤今人/宮崎雄真/藤松祥子/内野聡夢/レベッカ/中野智恵梨/上野みどり/足立拓海/池田萌子/KEKE/倉田大輔
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2014年08月17日

KAKUTA「痕跡(あとあと)」

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惑うあしあとが
重なり乱れて途絶える
わたしは考える

あの痕はいつ消えるのだろうと
影のように錆のように痣のように
消えることはないのだろうと
(チラシより)

 雷雨の夜に家を出た幼い息子はそのまま帰ってこなかった。母は息子をずっと探し続ける。事業に失敗して自殺を考えていた男は幼い子供を拾う。男は子供を連れ帰って育てた。家族って何だろう?

 会話の内容からすると平成が舞台だが、雰囲気は昭和の半ばのようだった。何か現実の事件をモチーフにしているのかもしれないが実際はどうかわからない。設定のディテールには疑問も多々あるが、それはたいして重要なことではないだろう。想いはひしひしと伝わってきた。

 バカな人は出てくるが悪い人はいない。それでも幸せはなかなか掴めない。その切なさが胸に響いた。

 ところで円形劇場は座席位置による当たり外れが出やすいが、この作品はかなり自然なストレートプレイでありながらうまく処理していた。

2014/08/17-14:00
KAKUTA「痕跡(あとあと)」
青山円形劇場/当日精算4300円
脚本・演出:桑原裕子
出演:成清正紀/若狭勝也/高山奈央子/佐賀野雅和/ヨウラマキ/異儀田夏葉/小田直輝/桑原裕子/松村武/辰巳智秋/多田香織/大神拓哉/斉藤とも子
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2014年08月16日

ぬいぐるみハンター「おせっかい母ちゃんリビングデッド」

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あの夏、僕はお節介な母ちゃんの頭めがけて金属バットをフルスイングした。
短い野球人生で僕の金属バットから響いた最初で最後の快音だった。
やみくもに逃走したが、どこまで逃げても誰も追ってこない。お腹もすいたし、恐る恐る帰ってみたら居間からいつもと変わらないTVの音と母ちゃんの笑い声!?
なんか知らんが母ちゃんが生きていた。そして、更なるお節介を焼きだした。
あれから14年、東京で「売れないバンドマン」から「売れなかったバンドマン」になろうとしている解散ライブの日、いつものように母ちゃんが楽屋でバンドメンバーにおはぎを配っている。
暴走しすぎるお節介な母ちゃんにもう一度フルスイングで決着をつける。だけどもう僕の手元に金属バットはない。
(チラシより)

 もちろん神戸アキコが演じる母ちゃんのキャラは強烈で面白いのだが、実際?はすでに死んでいるという事実と、解散ライブという場面設定から根底に流れる切なさがあり、泣き笑いに近い。あのラストは予想できたはずなのにできなかったので、ほろりとした。

 印象としては前作「ウォーターバック」よりは今回の方が良かったと思うが、神戸さんのキャラに頼っているウェイトは今作の方が大きい。もしかすると前作はその点の意識もあったのかもしれない。まだ当分は期待して観ていきたい。

2014/08/16-18:30
ぬいぐるみハンター「おせっかい母ちゃんリビングデッド」
駅前劇場/事前振込3300円
脚本・演出:池亀三太
出演:神戸アキコ/猪股和磨/梅本幸希/森崎健吾/土田香織/羊田彩佳/ジェントル/結城洋平/浅見紘至/辻沢綾香/橋口克哉
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範宙遊泳「インザマッド(ただし太陽の下)」

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63−0という歴史的大敗を喫した日本代表の悲しみと孤独は日本全土を覆った。
この悲しみと孤独が半年のうちに世相を変え日本は堕落した。一部の選手は闇屋となり、一部の選手は家庭崩壊に至った。永遠の愛を歌っていたJPOPの歌詞は、いつの日か浮気相手を想う歌詞へと変わり、かつての絶世の天才子役はショッピングモールで戦隊ショーの司会のお姉さんが唯一の収入源である。選手の元妻となった女は貧しい慰謝料にエステにも行けず鏡を見る度ため息をつく。
人間が変わったのではない。人間は元来そういうものであり、変わったのは世相の上皮だけのことだ。

ところでぼくたち何の試合に負けたのだっけ? 
(チラシより)

 範宙遊泳の作品はリアルなストレートプレイの対極のような演劇的演劇なので、展開についていくだけでも苦労することが多い。前回観た「うまれてないからまだしねない」は正直まったく心に入ってこなかったので感想もほぼ書けなかったけれど、今回は比較的すんなり飲み込めた気がする。正しく理解しているかどうかはわからないが。

 前作と同様、物理的には素舞台に近いがスクリーンに映し出された映像を最大限活用して不思議な世界を構成する演出手法。役者の動きは独特でダンス的。出演者が5人と少なく絞られていたこともあって、とても濃縮された印象を受けた。

 描かれている世界はやっぱり日常から大きく逸脱しているのだが、それは近未来のような、あるいは並行宇宙なら私たちのすぐ隣にありそうな、リアルではないのにデジャブを感じるような世界だ。原案は坂口安吾の「堕落論」とのことなので、あとで読んでみようと思う。

 余談だが今回はスクリーンと床にものすごく伸縮性に富んだ布が使われていて、その素材が何なのか上演中から気になってしまった。何かのはずみで切れ目が入ったら一気に敗れてしまいそうでハラハラした。

2014/08/16-14:00
範宙遊泳「インザマッド(ただし太陽の下)」
こまばアゴラ劇場/当日精算3000円
脚本・演出:山本卓卓
出演:武谷公雄/椎橋綾那/中林舞/名児耶ゆり/根本大介
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2014年08月09日

四獣+玉造小劇店配給芝居「イージーオーダーThe Musical」

EASYORDER.jpg

日本中がオリンピックで浮かれる中、
その工事の一部が残っている現場で突貫工事に
駆り出されている動労者たち。
国がひた隠しにし、マスコミの手も及んでいないエリア、
通称Dゾーン。
疲れきった作業員たちの間では、閉鎖された空間に耐えられず
薬に手を出すものや、危ない行為に出る者も耐えなかった。
そこで政府が労働者たちのケアとして娯楽を提供することになるのだが、
派遣された下請け会社のダメ社員の勘違い…

年増のニューハーフに外国人労働者。そこに流れてくる奇妙なゲリラ放送が絡み
誰も彼もが、歌い踊るハメに…?

どうしようもない無責任な男が7人。
夏の夜を駆け抜ける。
(チラシより)

 これぞショータイム!と思わせるサービス満天の展開と歌とダンス。ミュージカルとはなんぞや!という開き直りも含めて楽しませる1時間半。いい年したオッサンばかりでこれだけ魅力的なのは実にかっこいい。

 もっと大きな場所で2時間くらいやってほしいところですが、それは体力がもたないのかもしれません。

 ところでシアター711と言えば元映画館でゆったりした豪華な椅子が特徴の小劇場だったのですが、久しぶりに行ったら普通の椅子になっていてガッカリしました。座席数を増やそうとしたら仕方ないのかもしれませんが、あの椅子ゆえに好きという人も少なくなかったと思うので、残念です。

2014/08/09-15:00
四獣玉造小劇店配給芝居/イージーオーダーThe Musical」
シアター711/当日券4000円
作・演出:わかぎゑふ
出演:桂憲一/植本潤/大井靖彦/八代進一/うえだひろし/満間昂平/コング桑田
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2014年07月30日

miel「す き  と お り」

sukitoori.jpg

水は透き通り
空気は透き通り
硝子は透き通り

透き通った肌に流れる血

人間も透き通り

自分の身体が
ただの入れ物で
入ってきた物の色が透けて見える

相手が笑って
自分も笑った
その時の色は何色かしら

カメレオンのように
様々な色に見えるのは
透き通っているから

透き通り
それから、、、
(チラシより)

 白を基調とした衣装と抽象化された舞台装置で、見た目の雰囲気はコンテンポラリーダンスのようだが、ちゃんとストーリー性のある戯曲によって構成されたオムニバス。歌曲を軸にした演劇がミュージカルなら、ダンスを軸にした演劇は何だろう?

 主催の金崎敬江さんが相変わらず結婚できない女を演じていたのが心配でならない。昔メタリック農家で観た古市海見子さんがえらくたくましくなっていて驚いた。

 スタジオ空洞は初めて行った劇場。使い方が若干難しそうだが、この作品には合っていたと思う。

2014/07/30-19:30
miel「す き  と お り」
スタジオ空洞/当日券3500円
テキスト提供:糸井幸之介/末原拓馬/瀬戸山美咲/登米裕一/ハセガワアユム/米内山陽子
演出・振付:金崎敬江
出演:齋藤陽介/佐野功/辻貴大/野口卓磨/堀池直毅/石井舞/古市海見子/与古田千晃/金崎敬江続きを読む:スタッフリスト
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2014年07月13日

桃尻犬「愛ヲ避ケル」

aiosakeru.jpg

♪世界中の〜人がみんな〜
 「愛」って言った瞬間に〜
 うんこ漏らしちゃえば、いいのに、な〜
(チラシより)

 愛のあるセックスでしか感染しないという奇病があり、ともすれば差別の対象となる感染者の福祉として彼らが働く工場が作られている。そこで働く人たちとやってくる人たちの話。

 現実にある差別問題と微妙に絡めつつも、それはあくまでも話の前提であり、描いている主題ではなかったと思う。描いているのはそういう環境にある人々の、傲慢さとか諦観とか開き直りとかと、そのぶつかり合いの姿だろう。

 荒唐無稽でファンキーな中に、淋しさが力強く渦巻いている。理想的な解決策なんてありはしない。それぞれがそれぞれの立場から見て最善策と思えることを、できる範囲でやってみるしかないのだ。その「できる範囲」だって人によってはとても狭いんだけど、それはそれでしょうがないじゃんか。という。

 食べ物を粗末にするなと怒られそうなエンディングだったが、あのしっちゃかめっちゃか具合が今の僕らの実態を可視化したものではないか、などと深読みするのも楽しいが、そんな見方をすること自体が滑稽なんだろうな。

2014/07/13-14:00
桃尻犬「愛ヲ避ケル」
王子小劇場/当日精算2500円
出演:糸山和則 /踊り子あり /堂本佳世/長井短/永作一樹/成瀬正太郎/濱津隆之/湯口光穂/野田慈伸
作・演出:野田慈伸
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2014年07月05日

ナイスストーカー「女子と算数」

joshitosansuu.jpg

大人になるまで、あと3億8千万秒。
(チラシより)

 算数をテーマにしつつも、主な展開は男女のいざこざ。まさにナイスストーカーの名にふさわしく、清々しいまでの変態じみたマニアックでフェティッシュな恋愛模様が繰り広げられる。

 最初は算数の歴史を紐解くようなスタイルで何百年か前の学者の話から始まるものの、だんだんどうでもよくなり、たまに思い出したように算数が出てくるといった流れ。出てくる女子はみんな可愛い。誰がなんと言おうと可愛い。

 そしていつもながら帯金ゆかりは最高だった(かわいいというより面白い人ですが)。

2014/07/05-19:30
ナイスストーカー「女子と算数」
pit北/区域/当日清算2800円
作・演出:イトウシンタロウ
出演:帯金ゆかり/百地香織/本田留美/杉村こずえ/藤田彩子/秋月愛/イグロヒデアキ/伊藤伸太朗
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シンクロ少女「許されざる者」

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 推理小説の共同執筆者として仕事仲間である男女は、かつて夫婦で子供もいる。別れてからも一緒に続けている執筆の仕事場となっているマンションには、男の新しい妻もやってくる。その隣の部屋に住む夫婦は夫の浮気が原因でケンカの真っ最中。自分も浮気してやると言って出てきた妻は、小説家の男にデートを申し込む。そこから二組の奇妙な関係が始まる。

 コミカルであると同時になんとも言えない気持ち悪さを醸し出す作品だった。すべてが破綻した後のラストシーンが最初に演じられるのが少し映画的。アトリエヘリコプターの狭い空間を狭く感じさせない使い方はうまかった。

 タイトルは同名の映画から取っていると思ったが、どうも同じタイトルの映画はリメイクも含めて4つか5つあるので、どれが念頭にあったのかよくわからない。私はどれも未見だが調べてみると西部劇や任侠映画なので、本作とは内容的に重なるものではないと思われる。

2014/07/05-14:30
シンクロ少女「許されざる者」
アトリエヘリコプター/当日清算2800円
脚本・演出:名嘉友美
出演:泉政宏/中田麦平/名嘉友美/菊川朝子/田中のり子
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2014年06月29日

柿喰う客「へんてこレストラン」

hentekoresutoran.jpg

「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません…」
山奥で見つけた一軒の立派なレストラン。
中に入ってみると、どうも色々へんてこで…。
(チラシより)

 言わずと知れた宮沢賢治「注文の多い料理店」を柿喰う客テイストで演出。子供向けとはいえクオリティに手抜きはない。なんでああもスタイリッシュにできるんだろう。

 ところで会場となったスカイホールはカナリアホールと同じく北とぴあの14階にあり、その共通ロビーからはスカイツリーが見える。なかなか良い眺望なので、王子で時間があいたらこのロビーで過ごすのも良いかもしれない。

2014/06/29-11:00
柿喰う客「へんてこレストラン」
北とぴあスカイホール/王子小劇場支援会員
出演:深谷由梨香/永島敬三/大村わたる/葉丸あすか
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2014年06月28日

犬と串「エロビアンナイト」

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この想い、3分後も。

空飛ぶ絨毯。呪文で開く洞窟。
いくらだって話す。あなたのためなら。
欲しいのは、心。身体じゃ、なくって。
真夏の夜は心を騒がせる。
犬と串流、愛と不条理の千夜一夜物語(アラビアンナイト)。
(チラシより)

 ものすごく仲がいいのにちっとも関係が進展しない不思議なカップルを中心に、周囲の人々が気をもんで振り回される。二人の真っ当さと周囲の変態さがコントラストをなして謎が深まるが、真相が明らかになると一種の逆転が起こる。

 いやはや、タブー破りなどどぎつい作風を続けていた犬と串が普通に「いい話」を持ってきたから逆に驚かされた。まあオチはある意味アブノーマルなのだが、決してグロテスクではなく清々しく描いていて、どんな心境の変化があったのだろうか。

 ヒロインを演じた服部容子さんは初見だがとても好印象だった。今後もチェックしていきたい。

2014/06/28-19:00
犬と串「エロビアンナイト」
王子小劇場/王子小劇場支援会員
作・演出:モラル
出演:満間昂平/鈴木アメリ/藤尾姦太郎/堀雄貴/萩原達郎/板倉武志/石澤希代子/辻貴大/綾乃彩/服部容子
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ナカゴー「ノット・アナザー・ティーンムービー」

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アメリカの高校生たちが、ある困難に直面し、それを乗り越えようとする青春群像劇です。乞うご期待!!ぜひ。
(チラシより)

 いかにもありがちなセリフや展開を詰め込んだアメリカの青春映画風コメディ。途中から次第に常軌を逸していき、グロシーンや差別用語が飛びまくる。バカバカしい演出のオンパレードだが、これを作るには相当多くの作品に目を通して研究したんだと思われる。周到に作りこまれたチープ感が憎らしい。

 また、気づいただけでもいくつかの作品のパロディが含まれていたが、多分私が知らない作品も含まれていたのだろう。こういう場合はネタ表みたいなものが欲しくなるが、それは野暮というものか。

2014/06/28-15:00
ナカゴー「ノット・アナザー・ティーンムービー」
北とぴあカナリアホール/王子小劇場支援会員
脚本・演出:鎌田順也
出演:篠原正明/鎌田順也/小笠原結/川村麻実/佐々木幸子/永山由里恵/羊田彩佳/星原むつみ/三澤久美/浅見紘至/猪股和磨/桑嶋剛史/土屋亮一/中山裕康/西本泰輔/富士たくや/堀田創
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2014年06月16日

イキウメ「関数ドミノ」

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「ドミノ幻想」では、
世界はある特定の人間を中心にして回っていると考える。
願ったことが必ずかなうドミノという存在がいる。
右か左か、進むか止まるか。二者択一の洪水の中、ドミノによって、行く末が決定されていく。
ドミノは思いの強さに比例し、スピードを上げる。
最も速いものは「ドミノ一個」と呼ばれ、願った瞬間に結果が現れる。
それは「奇跡」と呼ばれる…。
(チラシより)

 再演とのことだが私は初見。オカルトとファンタジーとSFと人情劇が合わさったようなイキウメらしい作品。シンプルでセンスのいい舞台装置の中で、安井順平演じる卑屈な男性が発する嫌な空気がジワジワくる。

 どうしようもない後悔と自責の念で押しつぶされるように暗転する結末はなんとも後味が悪いが、そこが魅力とも言えるだろう。

2014/06/07-19:00
イキウメ「関数ドミノ」
シアタートラム/当日精算4200円
脚本・演出:前川知大
出演:浜田信也/安井順平/伊勢佳世/盛隆二/岩本幸子/森下創/大窪人衛/新倉ケンタ/吉田蒼
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2014年06月07日

ホチキス「妻らない極道たち」

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極道の妻たちが、結婚相談所を開いた!?
婚活支援に支給される助成金をとるために作られた結婚相談所
そこにあてがわれたのは、暇をもてあそぶ妻達。
時間つぶしにちょうどいいと引き受けた仕事だったが、
やがて本腰を入れはじめ…。ホチキスが贈る、ジューンブライド婚活コメディー!
「お嫁さん、事件です!!」
(チラシより)

 やっぱりホチキスはハズレがない。小玉久仁子のチャキチャキした感じは極妻というよりスケバンのヘッドみたいだが、まあ似たようなものだろう。ひとつひとつのエピソードや設定はナンセンスで荒唐無稽としか言いようがないのだが、なぜかホチキスがやるとすんなり受け入れてしまう。それを次から次へと繰り出してくるから最後まで飽きない。

 ただし上記のあらすじは実際とはちょっと違っているので、何度も書き直したのだろう。そこに少しだけ苦労の跡がしのばれるが、そんなことは関係なく楽しませてもらった。

2014/06/07-14:00
ホチキス「妻らない極道たち」
吉祥寺シアター/当日精算3500円
脚本・演出:米山和仁
出演:小玉久仁子/山ア雅志/福井博章/木俊/加藤敦/細野今日子/村上誠基/齋藤陽介/丹野晶子/今井瑞/齊藤美和子/山本洋輔/松本理史/長尾純子/野沢大悟/松本祐一
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2014年05月31日

かのうとおっさん「こんにちはハワイ」

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恥じらいは家に置いて、踊ろう!
(チラシより)

 大阪の脱力系コメディユニットの東京初公演。大阪にいたときもそんなに多くは観ていなかったが、かなり好きな団体だ。小さな会場ではあるが東京ではほとんど知名度がないだけに客入りが心配だったが、杞憂だった。

 関西において「お笑い」は確固たるジャンルを築いているため、演劇でコメディを中心としている劇団は意外と少ない。かのうとおっさんは男女のコンビで、二人だけが出演していると漫才のようでもある。本人たちがどういう立ち位置を意識しているかわからないが、演劇とか漫才とかあまりこだわらず、面白そうなスタイルを随時鳥言えれて作っているのだろう。

 今回は二人だけの作品もあれば大勢出演する作品もある、オムニバス形式。笑い転げるというわけではないが、ウフフフと笑える、とても幸せな気分になれる舞台だった。

2014/05/31-19:30
かのうとおっさん「こんにちはハワイ」
小劇場楽園/当日清算2800円
脚本・演出:かのうとおっさん
出演:嘉納みなこ/有北雅彦/是常祐美/佐々木ヤス子/ナカムラユーキ/くにえださわこ/谷伊織/鳥島明/松岡千明
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posted by #10 at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ぬいぐるみハンター「ウォーターバック」

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ここは誰もが知っているサバンナではない。
生き抜くにはあのサバンナの自然よりも遥かに厳しい、犯罪都市。
食物連鎖のピラミッドと同じ図式で厳しい階級制度が決められた貧困と権力と犯罪が混在する国。
悪の元凶、ライオン(階級※ピラミッドの頂点)の王を討つべく、ウォーターバック(階級※ピラミッドの下の中)の少女が今、ジャンヌダルクのごとく立ち上がる。
ぬいぐるみハンターが壮大かつ独自すぎる世界観のストーリーに最多キャストで挑む、逆説的ライオンキングの生命賛歌!
(チラシより)

 小さな空間に厳しい空気が張り詰めた前作から一転して、吉祥寺シアターの大きなスペースに30人を越える役者がひしめき合って、はじけるような作品になっていた。

 ストーリーは特に目新しいものではない。と言うよりむしろ、お約束な展開をあえて詰め込んだのではないだろうか。その上でどれだけ楽しませる演出ができるかに挑戦しているのだと思う。その解釈が正しいと仮定して、その挑戦の成功率は7割くらいの印象だ。特に悪いところもないし面白かったけれど、この劇団の過去作品と比較して突出したものもないという所。好きな劇団なので、期待値が大きくなりすぎたのかもしれない。

 ところで浅利ねこが3月に退団してたのを今頃知った。好きだったので残念だ。そして動物電気の辻さんは相変わらず気持ち悪かった(褒め言葉)。

2014/05/31-13:30
ぬいぐるみハンター「ウォーターバック」
吉祥寺シアター/当日精算3500円
作・演出:池亀三太
出演:神戸アキコ/猪股和磨/梅本幸希/森崎健吾/土田香織/羊田彩佳/一色洋平/水木桜子/富山恵理子/有田杏子/野口オリジナル/川田智美/浅見臣樹/吉田壮辰/前園あかり/水野伽奈子/中野智恵梨/モリタモリオ/前川昂哉/浅川薫理/湯口光穂/橋口克哉/秋本雄基/荒井志乃/西堀晴香/栗原瑞希/塚本充/渋谷ヒロキ/永田佑衣/ハネダアカリ/山本沙羅/古賀友樹/有栖川ユカ/藤田葵/辻修
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