2004年08月15日

Tres production「スロウ・カーヴ」

Tres production
「スロウ・カーヴ」
K.D Jaopn
04/08/12-13
作:吉村八月
演出:深未ゆえ
出演:あおい/大塚峰春/加藤裕子/木村仁美/田中美和/とみィ/茂手木桜子/渡辺真輔


『ドッグ・ハウス』取り壊されることになった家にまつわる記憶と今の自分達。
『ネームド・エリック。(エリックと呼ばれて)』奇妙なあだ名の由来と二人の関係。
『五年ぶりにセックスした。』飲み会で意気投合した変な女とホテルに行った話。
『アルファロメオ・ジュリエッタ。』外車のエンブレムを盗んでまわった小学生の頃の思い出。
『オーファンズ。』反目しあいながらも似ている異母姉妹。
・・・ちょっと切なくほろ苦い、だけど心温まる5つのエピソードから成る朗読劇。

 会場となったK.D Japonは鶴舞駅近くのガード下にある、こじんまりしたカフェバー。ライブハウスとして使われることの多いこの店は、動き回る芝居には少々狭すぎる代わり、このような朗読劇にはちょうどよいサイズ。普通の演劇とはかなり趣向が違うものの、なんとも心地よい空間が創られた。

 どの役者も実にいい声をしていた。声に表情があるとはこういうことかと感心する。会場がガード下のため、数分おきに頭上を電車が走る音がするのだが、それで聞き取りづらくなることは皆無だった。また、3次元的な構造を持つ会場をうまく使い、役者は前後左右上下に陣取る。役者が客席を囲む形で配置されることで、否応なく作品の空間に飲み込まれていく。

 舞台と客席の境界が曖昧なことに加え、多くの演劇関係者が客として集まっていたのが印象的。贅沢な時間を過ごすことが出来た。

(#10)


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2004年08月10日

集中チ療室「狂ったホテル」

集中チ療室
「狂ったホテル」〜隣人はすっげぇ笑う〜
天白文化小劇場
04/08/07-08
作・構成:サコー
演出:サコー/間拓哉
出演:ありさ/仲村宙矢/近藤一隆/吉田渉/ヒート猛/ロミ1031/間拓哉/サコ−/箕浦花絵


ストーリー
 チャペルのある会員制ホテルに勤める駿の下に先輩から幼馴染と結婚するからチャペルを借りたい旨の連絡がある。しかし、急な結婚式で友人にも連絡しておらず出席者はゼロ、先輩の結婚式を盛り上げようと、そのホテルに宿泊している元直木賞作家で現エロ小説作家の先生と張り込み中の探偵の男女1組を結婚式に出席させようとするのだが。。。

 集中チ療室さんは初めて観に行ったが、正直にいうと期待はずれだった。いや内容はそれほど悪くは無いのだが、、、芝居を観に行くというよりバラエティーを観に行くと思った方がいい。お笑い番組をみるつもりがみるつもりで笑っていいともを見てしまった感じに近いといえば判りやすいか?
 要するにお客が良すぎるのだ。なにをやっても笑ってくれるそんな感じ。初めて観る人が笑える内容になっているとはとても思えない。会場は大爆笑しているが何処が面白いのか全然判らなかった。極端に言えば疎外感すら感じた。
 つまり登場人物のキャラクターが弱いのを役者の力量でカバーしている感じ。役者のキャラクターが面白いのであって登場人物が面白い訳ではない。(私のお笑いに対する感性がおかしくなければの話だが)
 観客は劇中の役名より役者の名前を覚えているのではないだろうか。同じストーリーをまったく違う無名の役者が演じたらあんな爆笑は起こらないと思う。なので初めて観た人(役者のことを全く知らない人)は何が面白いのか判らない。笑えたのはラストシーンくらいか。公演後のカーテンコールも内容云々ではなく予定されたものだった印象が強い。

 歌、ダンスなど上手いなと思うものもあったが脈絡とかストーリーに関係はなくいきなり始まっちゃうので訳が判らない。
事前に観客に好きなことを自由に書いてもらい、それをつなげて即興で芝居にするという(これもストーリーとはほぼ関係ない)ことも行っていたが、こうなると公演というよりイベントに近い。(ちなみに私が書いたのも使われたが観客参加型のイベントとしては面白いと思う)

(しおこんぶ)
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2004年08月09日

E-style「有毒少女」

E-style
「有毒少女」
七ツ寺共同スタジオ
04/08/07-08
作・演出:遠藤のりあき
出演:河村梓/眞弓梓/竹田啓子/今枝千恵子/柏田有璃/木村萌/足立盟/西尾知里/清水美穂/浦麗/西泉/采野七待/新垣秀和/清水やすひろ/磯部うに/小川麻美


 黒の国と白の国に分かれて争う世界。毒を持つ白の姫の心臓を食った女は、同じく毒を持つ不老不死の双子を産み落とす。二人の娘は別々の国で育てられるが、白の国で暮らすナナシはその力を狙う何物かに追われることになる。多くの人々を巻き込みながらやがて二人は黒の国で再会するが・・・。

 主人公である双子を取り巻く多くの登場人物がそれぞれにエピソードを持ちつつ絡み合い、収束するらせんを描くように結末に向かって突き進む。時代や国は架空のものだが、繰り広げられるのは等身大の(でもドロドロした)人間関係であり、多様なキャラクターがいることで感情移入はしやすかったと思う。

 ただ、前半は複数の物語が並行する上に展開が小刻みで早いため、話に付いて行くのが大変だった。最終的にはまとまっていくのだが、主人公とそれ以外の描き方に濃淡が乏しいため、漫然と見ていると物語の中心線を見失いかける。また、演技で表現される状況と言葉で語られる背景のスケールに差がありすぎてギャップを感じた。

 出演者の大半が女優の上、キャバレーや娼婦街を舞台とするなどエロチックな描写が目立ったが、そういう演出が作品の中でどんな意味を持っているのかよくわからなかった(目の保養にはなるけれど、セクシーダンスが見たければそういう店に行くよ・・・)。雰囲気を出すための手法としては安直だと思う。

 役者では、以前から注目していた今枝千恵子の他、今回初めて観た新垣秀和の演技が良かった。今後に期待。

(#10)
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2004年08月07日

ランニングシアターダッシュ「POOL」

ランニングシアターダッシュ
「POOL」
長久手町文化の家
04/8/6
作・演出:大塚雅史
出演:宮腰健司/上瀧昇一郎/浅野彰一/安宅慶太/平本光司/岡部尚子/川下祐樹/斉藤ゆき/木村恭子/前田亜衣/葉山聖/安村麻衣子/藤井麻美/佐藤太一郎/徳本憲治/大澤信之/西浦英之/西山明子/佐久間京子


ストーリー
 夜間高校に通う生徒4人が学校のアイドルでシンクロ部のナミと仲良くなるため、元オリンピック候補であった先生を顧問にして水泳部を作った。しかし、学校のプールには照明がないため練習ができない!そんな時、ナミを思う水泳部員の磯島と諍いになりプールの使用権をかけて全日制水泳部と勝負することに。プールが使えない彼らは演劇少年の力をかりてイメージで練習することに。。。

 舞台装置といったものはほとんど無く役者たちが体で表現していく。照明の美しさは特にすばらしかった。ただ光をあてるだけでなく、闇や影を創ることで、より光を強調していた。
 出演者がやたらと多いが主要登場人物のキャラクターはハッキリしており漫画や映画に近い。ストーリー展開などはかなり無理があるのだが、それ以上に強烈なキャラクターが登場するため苦にはならない。演劇少年って(笑)
ラスト近くの全キャストが総出演して少年を励ますシーンには迫力と感動があった。
終演後、拍手がなかなかやまずなかった、小演劇でカーテンコールが起こったのは初めてだったが納得できる内容だった。今後も定期的に名古屋に来て欲しい。

 大阪の劇団は初めて観るが、とにかく笑わせてもらった。パワーがあり何より役者さんが楽しそうで、力いっぱい演じており観ていて気持ちが良かった。
全体のストーリーは安直(学生向けかも)で、どこかで聞いたような話がてんこ盛りな感じもするが、熱血スポーツ、ハッピーエンド系で誰が観ても楽しめる。(私のようなひねくれ者には向かない、でも十分に笑える)

(しおこんぶ)
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2004年08月04日

トクプロ「ゾウの鼻歌」

(公演詳細は前出参照)

 ラストの自転車を修理している姿は言葉ではなく行動によって娘が成長したことを表す爽快感のある良いシーンだった。
ただ、娘の感情のスタート地点?が不明確であるため、なんとなく良い話ではあるがすっきりしないのではないだろうか。
娘が更生した流れは、夫がアザラシになってしまった女(今にも肉親を殺されようとしている)をみて自分の不幸の小ささに気づく、その不幸な女に高額で購入したゾウの置物が実は1万円程度の安物だったことをあっさり見抜かれ自分の不甲斐なさに気づく、肉親の為にあんなに必死になれることに何かを感じ取る(家族愛)。普段遊んでばかりいる(ようにみえる)父親が自分のために結婚資金を貯めてくれていたことを知り自分も愛されている事を知る、と、こんなところか?(全然違うかもしれないが)とにかく娘が何に対して不幸を感じているのかが不明確であるためすっきりしない感じがする。
推測するに父親との確執あたりが娘の不幸なのかな?普通、父親と年頃の娘は仲良くないものである。であるならば、もっと決定的な心のすれ違いが描かれないと判り難い。娘が10年に一人の自転車修理の天才だが家を継ぐのがイヤだとか、好きな男との結婚を父親が認めてくれなかったとかグレるきっかけが垣間見られればよかった。

(しおこんぶ)
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青年団・五反田団「忠臣蔵・OL編」「ヤルタ会談」「家が遠い」

(公演詳細は前出参照)

「忠臣蔵OL編」
 OL編ということで食事を取りながら重要な議論を進めていくというのはいかにも女性らしい。
内容は忠臣蔵だが現代風味が利いていて大石が中間管理職といったところ。
 で、議論が収束する頃にはみんなしっかり食事を終わらせているあたりも流石。
忠臣蔵が有名になったのはやはり時代背景の影響もあると思う。忠孝や武士道が希薄になっている時勢に仇討ちをしたから有名になった。つまりそういった時代にあって当の本人たち(赤穂浪士ら)はどの様な話し合いの経緯で討ち入りしようとなったのか?当然葛藤もあっただろう。そのあたりを見事に抽出し、悲壮感を取り除いて時代を飛び越えさせた。
修学旅行編も観たい。

「ヤルタ会談」
 多少の歴史的な知識が必要だが十分面白かった。世の中のことは驚くほど少数の人間に決められているという現実を風刺しされていて単なるパロディにとどまらない。個人的にはガンジーのくだりが面白かった。大国からみた世界、他の国からみた日本という視点も面白い、外国人が観たらどう思うんだろう。

「家が遠い」
凄いグダグダ感だが、言葉と言葉の間にいろいろな言葉があるようでなんとも不思議な空気感を作り出す。あのニュアンスと間は秀逸。一見グダグダにみえるがしっかりと演出されていて隙がない。紐がついているお金を追いかけるように引き込まれていった。
ボキャブラリーが少ないことが精神的な未熟さ、社会性の低さを絶妙に表し、どうみても中学生には見えない役者が、舞台上ではまぎれもない思春期真っ只中の中学生を演じている。セリフが少なくても、なんとなく伝わってしまうところも見事。

ここからは個人的な見解というかイメージ。(人によっては異なる捉え方もあるし無理に捉える必要もないこと)
ビルの屋上にいる大人(自殺志願者?)との距離が彼らと社会との距離感を表し、上から投げ落とされた物にお墓を造るのも大人への反抗と捉えるのはチョット考えすぎか。ビルの中の社会からはじき出されて屋上にいる大人に自分の将来を重ねて怯えているのかもしれない。
トミーという動かない同級生(人形)は、皆と違い卒業後就職しなくてはならない、親という大人が与えたものに対する反抗として動かない。トミーは何かと闘っている。きっと不条理な世の中とだ。そんな気がした。
役者が人形に感情を吹き込もうと試行錯誤して、最後に舞台上に残る哀愁は、その試みが成功していることの表れか。

(しおこんぶ)
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2004年08月03日

Σproject「Heart」

Σproject
「Heart」
原作:眞己薫「PALINGENESIS〜再生〜」
作・演出:松本裕士
出演:宮村敬太/岸本昌子/新山貴浩/松山裕士


ストーリー
 心臓移植を受けた経験のある外科医「相沢透」は恋人で心臓に病気を持っている「夏美」を救うため、心臓手術の権威である「喜多島」に師事する。ある日「夏美」の知人である刑事の「村上哲」が二人の同居先に現れ、最近発生している連続殺人事件の犯人が医学的知識を持っていることから「相沢透」を疑っていることを明かす。

細かな部分はともかくとして、脚本の流れは面白い、特に後半の悲劇の連鎖はどうなるんだろう?と思わず手に汗を握った。恋人を汚された上、母子共に生命の危機に晒される、その原因を作った男に自分の人生をささげ妻と子供を助けるか、それとも妻と子が死んでいくのを見守るか。最悪の2択を迫られる相沢の苦悩とか憤りはもっと激しく表現されてもよかった。
また、夏美が手術を拒絶するときにお腹の子供のことを考え、悪魔に身をゆだねようと一瞬でも思わなかったか。個人的にはこのあたりを山場にして欲しかった。 
あくまでコメディーとなっていたが、ボケ役?が新山さんだけではコメディーとは評し辛いし悲劇として十分成り立つだけの面白味があった。ちなみに、新山さんはコミカルで存在感もあるので今後も楽しみ。
主題歌も自分たちで作成されたようで、なかなか良い出来でした。

(しおこんぶ)
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ロードブラザーズ「Summer Road 2004」

ロードブラザーズ
「Summer Road 2004」
作・演出:児玉俊介
出演:長尾裕子/林堅太郎/児玉俊介


ストーリー
 キャバレーの兄弟芸人をしているサンダとガイラ。今の生活から抜け出すため、また、ボスの娘と駆け落ちするため店の金を奪って逃走する弟とそれに巻き込まれる兄、逃走の途中、車の故障で立ち往生していた修道院のシスターを助けることに。

弟のガイラが置いてきてしまった恋人を助けるため引き返そうとするのだが思い直し、シスターを助けることを優先する。駆け落ちしようとした恋人と、会って間もないシスター、普通どっちを優先する?シスターを助けるだけの根拠がない、駆け落ちするというシチュエーション自体が必要ないのではと思う。
冒頭の歌(ブルース)の歌唱力はなかなか良かった、テンポも、照明の使い方も特に悪くはなかった。5年前の作品の再演とのことだが、過去の作品を上演する場合、当時の粗なども目に付くのだろうが、あえてそのまま上演したか、直し方を失敗したかのどちらかと思いたい。私はこの劇団は初見、現在の作品が観たい。

 観劇後に抽選で1名の方にスタッフTシャツプレゼントがあった。なかなか良いデザインでファンには嬉しい企画。

(しおこんぶ)
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2004年07月30日

青年団・五反田団「忠臣蔵・OL編」「ヤルタ会談」「家が遠い」

青年団
「忠臣蔵・OL編」
作・演出:平田オリザ
出演:井上三奈子/鈴木智香子/田原礼子/高橋緑/兵藤公美/安田まり子/安部聡子

「ヤルタ会談」
作・演出:平田オリザ
出演:松田弘子/高橋緑/島田曜蔵

五反田団
「家が遠い」
作・演出:前田司郎
出演:坪内志郎/前田司郎/黒田大輔/山田/兵藤公美

三作とも
七ツ寺共同スタジオ
04/07/21-26


「忠臣蔵・OL編」
 江戸で主君が目付役を斬って切腹したと知らされた赤穂の藩士達が、今後どうするかを話し合う。・・・が、なぜか全員が会社の食堂に集うOL達という異色の忠臣蔵。OL姿でOL口調のまま、話している内容は武士というミスマッチなのに、ほとんど違和感がないのは見事。それなりに自己主張する者がいながらも、結局はなんとなくみんな一緒にまとまっていく、いかにも日本人的な流れに苦笑い。

「ヤルタ会談」
 三作の中では最も短くて最も密度が高く、濃縮された作品と見た。第二次大戦末期に戦後処理を話し合うため集まったスターリン・チャーチル・ルーズベルトの会談を、大柄な三人がテンポよく演じる。一人が席を外すと残り二人がその悪口で盛り上がるのが面白い。一種のパロディであるから、当時の世界情勢をちゃんと理解していないと意味がわからない場合もあるだろう。

「家が遠い」
 学校帰りの男子中学生4人が座り込んでダラダラと喋っている。いい歳の役者が演じているにも関わらず、実に中学生らしい雰囲気が伝わってきた。「いたいた、中学の時こんな奴いた!」と思わずうなずいてしまうほど。小学生とも高校生とも違い、女子中学生とも異なる独特のけだるさと先行き不透明感。自分達も周囲も微妙に問題を抱えながら、でも深刻になるほどでもないヌルさ。懐かしい空気がたっぷりと感じた。
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2004年07月25日

トクプロ「ゾウの鼻歌」

トクプロ
「ゾウの鼻歌」
ナビ・ロフト
04/07/23-26
作・演出:徳留久佳
出演:木村庄之助/長江ヒロミ/池野和典/若月智美/ばんたろ左衛門/斉藤やよい


 大雨の日、町内野球チームに所属する自転車屋の山本と電気屋の宍戸が、山本の店で暇をつぶしていた。宍戸は近所の川でアザラシを見たと言う。ぐれた山本の娘が買った何かを宅急便が届けに来ると、その代金を巡って騒動が。そこへ、外で倒れていた女性が運び込まれる。次第に雨が強くなり、やがて停電し・・・。

 自転車屋の店先を舞台にしたワンシチュエーション。普通の場所で、ちょっと変わった状況と大きく異常な事態が混ざり合い、日常と非日常の境目は気がつかないうちに非日常側へシフトしていく。夫がアザラシに変わったと言う女性がいつのまにか姿を消すあたりは不条理劇風だが、基本的には「一生懸命生きている、市井の人々」を描いた作品だろう。

 ラスト、ぐれていた娘が凛とした態度で「自転車屋ですから」と言ってパンク修理をする。結末としてはまとまっているが、彼女が心を入れ替えるにいたる経緯に説得力を感じなかった。あの父親が娘にどんな姿を見せたのだろうか? 隣人は彼女に何を教えたのだろうか?
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2004年07月11日

劇*コトノス「我等の騎士と錬金術師」

劇*コトノス
「我等の騎士と錬金術師」
スタジオ・座・ウィークエンド
04/07/10-11
作・演出:アイウカオ
出演:河井千恵/西口貴之/小川裕子/河野佑三子/SA-JI/穐山すずか


 処刑台から生まれたあやかしの少年が、喋る鳥キカに招かれて女錬金術師ロコのもとで暮らし始める。彼の姿が見えるのは、ロコとキカだけ。ヤズミンと名付けられた彼は、いつか自分を人間にしてくれたら彼女の騎士になると誓うが・・・。

 中世ヨーロッパをイメージしたファンタジー調の物語。こういう設定は下手に凝った演出をすると滑稽になるが、控え目でよくまとまっていた。舞台装置は3つの木箱と背景の柵だけだが質感が良く、衣装もシンプルながら各キャラクターのイメージにピッタリで雰囲気が出ていた。

 ただ、物語は微妙。少年の正体やロコの秘密は結局はっきりしないままだし、吟遊詩人はどういう存在なのかわからない。思わせぶりな雰囲気だけで真実は特にないという可能性もあるが、そうではない気がする。あと2回くらい観れば納得できるかもしれないのだが、消化不良気味。

 錬金術師を演じた河井千恵が良かった。彼女の出演作は過去に少なくとも3回は観ているはずなんだが、あまり印象に残っていない。今回は役に恵まれたからかもしれないが、次回作も観たいと思わせる出来だった。
posted by #10 at 22:28| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年07月10日

R−シアター「ジャンク・サロメ」

R−シアター
「ジャンク・サロメ」
千種文化小劇場
04/07/08-11
原作:オスカー・ワイルド『サロメ』
脚色・演出:齋藤敏明
出演:服部廉/水谷友子/村松優子/へば/田中美和/伊藤希/あおい/小澤廣司/中林俊介/稚伊菜緒/大塚峰春/佐藤智之/松本勝憲/林美和/岡田祥子/南雲栄作/井上亮司/じゅん/鎌塚由起子


 ユダヤのエロド王は、一人の預言者を幽閉していた。ローマからの客をもてなす宴の晩、兄から奪った妃エロディアスの連れ子である王女サロメに踊りを望んだ王は、踊れば何でも与えると誓う。そして見事な舞踏を見せたサロメが望んだものは・・・。

 古典に現代風のアレンジを加えた作品だが、基本的な筋は原作通り。“正統派”のサロメを観たことはないので比較できないが、この作品のサロメはある意味現実味がある。美女で王女で王から溺愛される彼女は、無邪気に捨てて、無邪気に望む。悪意も執着もなくただ好きなように振る舞い、命を奪う。その素直な狂い方がじわじわと伝わる舞台だった。

 多少、役者のレベルにバラつきを感じたが、サロメ役の村松優子とヨカナーン役のへばは鬼気迫るものがあった。
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2004年07月04日

桜姫のお遊戯草子「シセイ」

桜姫のお遊戯草子
「シセイ」
スタジオ・座・ウィークエンド
04/07/03-04
作・演出:笠島幸子
出演:織田紘子/茂手木桜子/坂口十/笠島幸子


 男にしか仕事をしないつもりだった稀代の刺青師が、ある日ある村で一人の少女の足に出会う。彼がその足の少女を追い求め、ついに探し出した時・・・。

 この劇団の作品は過去三作観たが、以前の公演に比べると出演者が少なく公演時間も短い。だから、しばらく停止していた活動を再開する上でのウォーミングアップ公演かと思っていた。番外公演となっていることからもそういう意識が感じられた。

 しかし、むしろ今回のようなスタイルを追及していった方が良いのではないかというのが観劇後の率直な感想だ。つまり、少人数・短時間・濃厚な内容というスタイルを。

 ごまかしが効かないので技術的には難しくなるだろう。しかしこの劇団が目指していると思われる“ドロドロとした情念”を描くのであれば、従来のように大勢の役者を登場させて多くのエピソードを描くよりずっと良い。次回作がどんなスタイルになるか分からないが、個人的には強くそう望む。 
posted by #10 at 20:51| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年06月27日

劇団離風霊船「渚家にて」

劇団離風霊船
「渚家にて」
西文化小劇場
04/06/25-27
作・演出:大橋泰彦
出演:伊東由美子/松戸俊二/山岸涼子/小林裕忠/相川倫子/倉林恵美/橋本直樹/大迫径/江頭一晃/新垣友美/竹下知雄/澤田恵/神谷麻衣子/津谷知子/瀬戸純哉/大矢敦子/中村ノゾム/鈴木紀江


 某国で武装勢力に誘拐された8人の日本人男女。彼らを救出するため、なぜか北海道警と警視庁から秘密裏に部隊が送り込まれる。しかしそこにはすでに武装勢力の姿はなかた。元人質が日本に帰らない理由と、救出部隊の真の目的は・・・。

 イラクの日本人人質事件と「渚にて」という映画をモチーフにした作品。映画のほうは見ていないのでわからないが、人質事件を知らない人はいないだろう。この事件はまだ完全には終わっていないので、観客はそれぞれ自分の持っていた心情と照らし合わせながら観ていたと思う。

 観客にも色々な人がいるので、時事ネタを芝居で扱うのは勇気がいることだ。あまりひとつの主張が前面に出すぎると、うんざりさせられる場合もある。しかし今回は色々な意味でバランスよく作られており、最後まで飽きさせない内容だった。荒唐無稽ともいえる設定でほどよく現実味を薄れさせ、それでも要所では間違いなく現実を思い出させる。結末もよく工夫されていた。

 離風霊船は東京から遠征してくるにも関わらず、毎回大掛かりな舞台装置で驚かされる。名古屋の劇団はどちらかというとシンプルな装置を上手に使うのを好む傾向があるように感じる。七ツ寺クラスの劇場ならあまり装置に凝ると逆に息苦しいが、文化小劇場レベルの空間を使う場合はこのくらいしてもらった方が嬉しい。
posted by #10 at 20:29| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

劇団あおきりみかん「昼下がり、車庫上がり」

劇団あおきりみかん
「昼下がり、車庫上がり」
愛知県芸術劇場小ホール
04/06/24-26
作・演出:鹿目由紀
出演:松井真人/とみィ/山中崇敬/井通302/大屋愉快/中元志津/近藤絵里/水谷悦子/成田けい/木村仁美


 次男の彼女の浮気現場を押さえるべく、ある家のガレージの上で張り込む三兄弟。そこに次々と現れる怪しい男女。刑事を名乗る女に捜査協力を頼まれたり医者を名乗る男に恋人の監視を頼まれたりして、手一杯になる三兄弟。さらに何も知らないはずの彼女が持ってきた弁当にはなぜか睡眠薬が。そこで何が起きているのか、すべての真相は?

 今回は舞台装置に度肝を抜かれた。ガレージや物置の屋根と隣家の2階などが精密に作られているのだが、幅が舞台の1.5倍ほどあり、途中で全体がスライドするのだ。つまりセットの端3分の1ほどは舞台袖に隠れた状態になり、ここを上手く使って滑らかに場面転換が行われる。質感も高く、その出来栄えには感心した。

 物語としては、やや安易に流れた感がある。虚構の芝居なのだから多少の荒唐無稽さはあって当然だが、今回のオチの付け方はむしろ御都合主義というべきだろう。例えば三男の職業などは状況として不自然すぎ、伏線がかえって言い訳がましく見えてしまった。井通302や木村仁美などの個性派俳優の使い方も、彼らの持ち味を生かしたというよりは彼らのキャラに助けられたと感じられる。

 ただ作品全体として面白くなかったわけではない。次々に起こるハプニングに盛り上がり、ラストは心温まる大団円。誰でも安心して楽しめるあおきりみかんとしては標準的な出来栄えだったと思う。
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2004年06月13日

劇団サラダ「あざやぐ花に」

劇団サラダ
「あざやぐ花に」
今池芸音劇場
04/06/11-13
作:つく音
演出:ティナ棚橋
出演:伊藤しんぢ/玉腰ヨシヒロ/椎名雄久/みなかた創建/つく音/しなこ


 新撰組で死絵師を務める男とお気楽な隊士。ある時、斬った浪士の遺体をさらしてその仲間をおびき出すことになる。うまく浪士のアジトを突き止める手柄を立てて遊郭に繰り出すが‥‥。

 劇団サラダの本公演は初見。いつもとは脚本家が違うとのことだが、思ったより若々しい印象を受けた。物語としては特に目新しいものではないが、新撰組を出すのは今年の流行だろうか。全体的には特に高度な出来とは思えないが、ラストシーンは良かった。
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少年王者舘 夕沈ダンス「アジサイ光線」

少年王者舘 夕沈ダンス
「アジサイ光線」
七ツ寺共同スタジオ
04/06/11-13
構成・演出:天野天街
出演:夕沈/白鴎文子/丹羽純子/田村愛/松久聖子/ひのみもく/珠水/蓮子正和/川合喜之/いちぢくジュン


 “夕沈ダンス”とあるように、筋のある芝居ではなくダンスパフォーマンス。普通の芝居の中でもダンスが使われることが多いが、それだけを抜き出してひたすら踊りつづけたような作品。

 少年王者舘の作品はそう多く観たわけではないが、一度観たら確実に印象に残る、非常に特色のある舞台だ。中でもダンスは癖になる無気味さをかもしだし、群舞の魅力を存分に味わえる。シャキシャキした奇妙な動きも、集団で揃えることによって何か芸術的な雰囲気が生まれる。

 ただ今回思ったのは、ダンスだけでは飽きるということだ。インパクトはあるのだが、やはり芝居としての筋立てがあってこそダンスが生きてくるのではないか。どうやら筋はなくても状況設定はあるようなのだが、それだけでは物足りない。次回はやはり普通に(?)芝居を観たいと思った。
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2004年06月07日

劇団I.Q150「浮人形」

劇団I.Q150
「浮人形」
七ツ寺共同スタジオ
04/06/04-06
作・演出:丹野久美子
出演:野田雅子/江目ひとみ/仲村和美/伊藤広重/高橋和子/星川麻衣/セトトモコ/茅根利安/寺島広/斉藤ら真生/高橋史生/伊藤光輔/丹野久美子


 東北の山奥で車が故障した若いカップルが、一軒の民家に泊めてもらうことに。なごやかな家族に暖かく迎えられる二人だったが、ふいにカップルの女が「赤い実を取ってきて」と言い始める。実はその家には、13年前に川で死んだ娘がいた。おりしも季節は盆。大きく飾り付けられた迎え火の前で、古い記憶がよみがえる。

 仙台の劇団I.Q150が名古屋に来るのは二度目とのことだが、前回見逃したので私は初見。結論から言えばとても良かったので、今後もぜひ定期的に来てほしいと思う。

 物語としては、要するに幽霊の話であり、昔その娘が死んだ時に何があったのかが少しずつ明らかになっていくというものだ。しかし随所に折り込まれる幻想的な演出がよく効いており、怪談でもサスペンスでもない独特の空間を生んでいた。音楽もオリジナルのようで、さすがに雰囲気にピッタリだ。

 死んだ娘があの世から帰ってくる、その目的は何か。なにしろ相手は幽霊だ。しかし大切な家族だ。迎える人々の心には不安と愛情が入り混じる。そして‥‥。ラストでは目頭が熱くなったとだけ言っておこう。
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2004年06月06日

劇団創造「Don't worry, be happy」

劇団創造
「Don't worry, be happy」
ナビ・ロフト
04/06/04-06
作:鈴木純子
演出:永田竜司
出演:永田竜司/梅田準呼/鈴木孝亮/宇野あすか/横田知也/伊藤佳子/佐伯篤/藤井紗貴子/原田実希


 交通事故で死んだ元ランナーが、ゴミの山の中で目を覚ます。傍らにはゴメと名乗る奇妙な娘。彼は死ぬ直前の記憶がないため、成仏できない。鍵を握る恋人が他の男に惹かれて彼の記憶を失いはじめると、彼の魂は分解の危機を迎える。彼女の記憶を戻せるのか?

  メンバーが大幅に増えた劇団創造。新人の演技は多少こころもとないが、がんばっていた。前半は説明的でややだるい印象を受けたが、後半から次第に話が締まっていき、ホロリとさせるラストまで一気。特に八重樫役を演じた横田知也は前半イマイチだったが後半になって良い動きを見せていた。

 難を言えば、綺麗にまとまりすぎている。以前の創造はわりと不条理系の突飛な設定でインパクトがあったのだが、最近はホームドラマ的なほのぼの路線になっている。それはそれで悪くないのだが、個人的には昔の方が好きだ。だから私の中で一番良かった劇団創造の作品は、今でも6年前の「あの空のちょっとこっち」。今回と同じ鈴木純子の脚本なんですが。
posted by #10 at 02:42| Comment(1) | TrackBack(0) | 名古屋観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年05月31日

シアターガッツ「大月山ジャンボリー」

シアターガッツ
「大月山ジャンボリー」
愛知県芸術劇場小ホール
04/05/27-30
作・演出:品川浩幸
出演:ナカニシ・トシカツ/寺西栄美/藤元英樹/坂口潤/脇山烈/小島敬子/大岩篤史/中川弘樹/欅智昭/山崎淑子/道家希/永井裕子/川浦君英/スターマン/yamato


 ストリートミュージシャンが集う駅前広場で、今日も個性的な彼らが個性的に歌う。だがその広場が再開発事業によってなくなることに。ずっと昔から歌いつづけているハチローは、かつて挫折した大月山ジャンボリーを今こそ実現すべく行動を起こす。

 いつもエンターテイメント色満載のシアターガッツだが、今回は特に客席を巻き込んでの大合唱。こういうのは好き。普通の芝居を観に来た客だと戸惑うかもしれないが、ガッツの客なら大半が進んで歌いたいと思うだろう。

 ただ、観客と一緒に歌うのならもっとメロディや歌詞を工夫してほしかった。テーマ曲は音程が微妙すぎる上に歌詞が複雑で、すぐには頭に入らない。もっと単純で明確なメロディーにして、歌詞もサビをくり返す方がいい。「薔薇はあこがれ」とか「青春」みたいな(←わかる人いるかなあ、品川さんなら世代的にわかると思うけど)。

 とか言いつつサントラCDは買いました。CD-Rの青いディスクではなく本格的なプレス版のCD。この辺のグッズにかけるガッツの意気込みには感心します。
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