同時発声が皆無でテキパキと会話が進行する様子は、なんだか劇団八時半のようだと感じた。長沼久美子の特徴的なしゃべり方のせいか戯曲の書き方が似ているのか、恐らく両方だろう。特に前半はその印象が強かった。後半になって次第に人間関係と感情がむき出しになっていく様子も似ている。
しかし描かれているテーマはずっと重い。小原延之の前作「nine」と同様、自分だったらどの人物に共感するか試されるような部分がある。今回は本人がパンフレットに書いているように「被害者側に寄り添うことで、図らずも“善人面”してしまっている自分を、一回否定」したことで、善人ではない人物描写が前面に押し出されていたようだ。
とはいえ、前作と比べてさほど大きく路線変更したという風にも感じなかった。前作だって善人ばかりが登場していたわけではない。私自身はこういう話に対して「そりゃそうだけど、そういうものとして受け入れるしかないんじゃない?」という諦観をもって捉えたくなるタイプなので、ひょっとしたら作者が期待したほど心に届いていないのかもしれない。
2008/03/02-14:00
AI・HALL+小原延之「hunter」
AI・HALL/当日券3000円
作・演出:小原延之
出演:平井之英/村井千恵/長沼久美子/樋上真郁/韓寿恵/国木田かっぱ/山口晶子/藤島淳一/小笠原聡/橋本達也/後藤七重