砂漠の真ん中にある補給基地に派遣されている、日本によく似たN国の兵士たち。本国から送られてくる物資と前線から送られてくる遺品の仕分けを続ける、戦場に近い安全な場所での平穏な日々。ある日やってきた新しい上官と、慰労会の出し物と男女のいざこざ。
戦争を描く作品で敵が出てこないのは珍しいが、そもそも戦争を描いているのかどうか。他に主題があるのかもしれない。というかこんなにドロドロした男女関係を前面に出した戦争物もそうないだろう。
まがりなりにも基地なのに4人しかいなくて、しかも男2女2という構成のナンセンスさはひとまず置くとしよう。展開はおそろしくのどかで、ひとつの筋はない。前線の兵士達の慰労会で売るためにアイスクリーム作りにはげむ。死体から感染する死神ウイルスの噂。男女間の愛憎と刃傷沙汰。新任の上官と一兵士の過去。それらが交錯しながら、特にハッピーでもアンハッピーでもない結末へとゆっくり進む。
一人が死にかける。仲間がなんとか助かりそうと知った時にはじめて涙を流す兵士の言葉が重く響いた。戦場で人が死ぬことに慣れてしまいそうになっていた自分を見つめて泣くのだ。どんなに日常茶飯事になってしまっても、慣れてはいけないことに慣れてしまうのはそれ自体が罪悪であり恐怖の対象だと思う。ともすればそれは死そのものよりも恐れるべきことだ。
作者がそれを言いたかったかどうかはわからないが、私はそんなことを思いました。実際どうなのかは微妙。
2005/07/16-15:00
KOP「戦争とか、平和とか。」
愛知県芸術劇場小ホール/当日券2500円
作:松尾有香
演出:広瀬孔
出演:奥村哲也/周藤孝樹/松尾有香/水野良子/横井真紀子
2005年07月16日
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「戦争を描く作品で敵が出てこない」
まさしくその通りの話でしたね(笑)。
作者が言いたかったことは、微妙なままにしておくとしてやたらと
「あのアイスクリームの意味は?」と聞かれる方が多く、
「そんなに意味ありげだったろうか?」と省みているところです。
それではまた機会がありましたら。
まずはお礼まで。
アイスクリーム‥‥KOPのHPに書かれていた「手品が見たいから主役が手品師の話にしよう」というエピソードを思い出して、今回はアイスが食べたくなったのかと思ってました‥‥(^^;;スミマセン