嘘を隠して、秘密を隠して、恋心を隠して…(チラシより)
ポーカーフェイスなアパート住人達の物語。
日本橋5丁目にひっそりと建つ築30年、家賃5万円のボロアパート「枯山荘」。しかし住めば都、住人たちはそれぞれの生活に満足していた。ところが、ある日突然、住人たちに立ち退き要求が突きつけられる。もちろん住人たちは大反対。
しかしさっそく、噂を聞きつけた大手不動産「木村興産」が下見にやって来る。住人たちはアパートと自分たちの生活を守るため、様々な作戦を企てるが…。
他人に嘘をつき、自分の気持ちにも嘘をつく住人たち。バレないように必死に装うポーカーフェイスも、そう長くは続かない。矛盾だらけのアパートで起こる、立ち退き反対住人たちのおかしな攻防。その行く末はいかに…。
日本橋の2劇場を結んで繰り広げられるin→dependent theatre PRODUCE #10の、1st側の公演。小さな舞台空間を利用して、アパートの一室を描く。
途中、2nd側の公演と中継で結ばれる所がこの企画の目玉だが、面白さという意味ではその部分が特に大きなウェイトを占めているわけではなく、単独の舞台としてしっかりできていた。向こう側の話を知らないと意味がわからないセリフも所々に出てくるが、これはおそらく両方を観たい気にさせる作戦だろう。
パンフによると、全ての役者は脚本が完成してからオーディションで選ばれたとのこと。そのため当然のことながら役者と役柄のイメージはピッタリ合っている。また中継はどうやって安定させたのかと思ったら、2つの劇場を光ファイバーで結んだという。コストも時間も、小劇場としては異例の充実ぶりと言える。
もちろん観客にとってそれらはあくまでも付随的要素であって、観るべきものは舞台上に表現されたものがすべてだ。そういう観点から言うと、テレビ中継を介した漫才やスタジオとの応酬など、素人目にも技術的なハードルの高い演出が目白押しだったため、背後にある技術的な努力がにじみ出過ぎていた感は否めない。
様々なタイプの笑いが盛り込まれた舞台だったが、素直に笑うことができたのは上述のような技術を駆使した部分ではなく、「不動産業者相手に必死で大家のふりをする役者」や「女の子があからさまに告白を待っているのに告白できない男」など、朴訥な人間模様の描写だった。この点は、企画に溺れることなくきちんと芝居を作った脚本家と演出家が褒められるべき点だろう。
2007/07/21-15:00
in→dependent theatre PRODUCE #10「ポーカーフェイスアパートメント」
in→dependent theatre 1st/前売券2800円
脚本:山内直哉
演出:横山拓也
出演:真心/大林剛士/上島洋子/片山誠子/鈴木洋平/関敬/緒方晋/西田政彦/宮都謹次/山本英輝/松田ジョニー/千歳晶子/溝端理恵子/田中英輔