以下、ネタバレあり。
主人公は隣室から彼らを見ている女性。彼女は壁の向こうが見えるという特種能力を持っており、その部屋で一人黙々と「封を切っていない手紙を読む」仕事をしていたが、隣室で繰り広げられる出来事もじっと見ていた。
二つの部屋は同じ場所で演じられる。隣室の人々は彼女が見えないので、まるで幽霊のように立っている。その状況について説明はないので、理解できるまでしばらく時間がかかったが、わかってくるとあたかも彼女と同じように見えている感覚になる。不気味な覗き見舞台のようだ。
特殊能力ゆえに普通ではない感性を持っているはずの主人公だが、その行動はとても率直な感情にもとづいており、なぜか共感できる。そして彼女は恋をしている、あるいは恋をしているつもりになっている。正常ではないけれど素直な姿勢で愛を伝えようとする。
しかし姿を見ることができても心まで読むことはできない。彼女の恋は悲劇で終わるが、ラストシーンは不思議と美しい印象を受けた。
2005/06/18-19:30
机上風景「複雑な愛の記録」
タイニイ・アリス/ウェブ予約2800円
作:高木登
演出:古川大輔
出演:平山寛人/おもちゃ/浜恵美/坂口哲/川口華那穂/古川大輔
「不気味な覗き見舞台」「なぜか共感できる」とのお言葉、大変嬉しく読ませて頂きました。楽しんで頂けましたなら幸いです。
まだまだ未熟者ではありますが、今後とも温かくお見守りください。