1945年8月、朝鮮半島は35年の長きにわたる日本の支配から解放された。(チラシより)
喜びに沸く半島で、在朝の日本人は大きな混乱に巻き込まれた。
拘束され、裁かれる大日本帝国の公人たち。罪状は「支配の罪」。
70年前、彼の地朝鮮半島で何が起こったのか?
一人の日本人官僚の目を通して語られる「命の記憶」の物語。
大日本帝国占領下の朝鮮は平壌にあった裁判所に、検事として赴任した主人公。その同僚と部下、家族、そして軍の将校や朝鮮独立運動家(日本敗戦後は人民政府の役人)たちが登場し、日本敗戦前後の混乱期におけるギリギリの交渉と交流を描いている。
この劇団を観たのは初めて。劇団名に似合わない固くて重い、そして苦い内容だ。敗戦時に満州に居た人々の引き上げについては聞いたことがあったが、北朝鮮については知らなかったし考えたこともなかったので、ちょっとした衝撃を受けた。
当日パンフには以下の断り書きがある:
この物語は歴史的事実を参考にしたフィクションです。あくまでも創作された「おはなし」であるということをあらかじめ強調させていただきます。しかしドキュメンタリーだと言われても信じてしまうレベルのリアリティは感じられた。もちろん私はその時代の現地を知っているわけではないので想像ではあるが、どのエピソードをとっても、当時の状況からは必然的にそうなるであろうと納得させられる展開だった。
本作では日本人も朝鮮人も皆、自分の信じた道を貫こうとしている。ああいう時代においてはそれだけが正気を保つ術だったのではあるまいか。恐らく、比較的悪役っぽく描かれている将校もまた、守りたいものがあったのだと思う。そしてこの舞台に本当の意味で政治を動かしている者は出てこない。皆、現場で右往左往している民衆だ。本物の悪人がいるとすれば、舞台の外にいたのだ。
今の御時世にこのテーマを扱うのは勇気がいったのではないかと思う。それも単に扱っただけでなく、非常に高いクオリティで作り上げたことに拍手を贈りたい。
2015/04/18-14:00
劇団チョコレートケーキ「追憶のアリラン」
東京芸術劇場シアターイースト/当日清算3300円
脚本:古川健
演出:日澤雄介
出演:浅井伸治/岡本篤/西尾友樹/月影瞳/佐藤誓/辻親八/大内厚雄/永井若葉/青木シシャモ/菊池豪/佐瀬弘幸/渡邊りょう
舞台美術: 鎌田朋子
照明: 朝日一真
音響: 佐久間修一
衣装: 藤田友
演出助手: 田上果林
舞台監督: 本郷剛史
宣伝美術: R-desigh
スチール: 池村隆司
撮影: 神之門隆広
広報: 朝倉奈々緒
キャスティング協力:吉川敏詞
Web: ナガヤマドネルケバブ
制作: 菅野佐知子
制作協力: 塩田友克