
空き地となった団地跡。荒涼とした閉塞と不確かな現実が漂う。不可解な連続殺人事件から6年後の世界。(チラシより)
現代、秋なかば、「うちやまつり」の世界のおよそ6年後。
団地は取り壊され、広大な空き地が広がっている。大型量販店が建設されるということであるが、未だ取り壊し作業が終わらず、目処が立たない。「こやまさんちのにわ」はこの広大な空き地にあって、もはやその所在はわからない。その空き地を見下ろすドライブイン2階の喫茶室で、店を閉めている間にカウンター一面に黄色と黒のペンキで巨大な目玉を落書きされる事件が起こる。店主は動ぜず、とりあえず今日一日は開店して、事情を説明して明日閉めて清掃するという。犯人は何の目的で行為を行ったのか? これは警告なのか? 新たな事件の始まりなのか? 6年前の事件は未解決のまま団地の消滅とともに風化しようとしている。今、工事関係者の間でささやかれる新たな噂は、この空き地に「団地の幽霊」が出るというものだ。
「うちやまつり」と連続上演で、同日に通し券で鑑賞。6年後の後日譚ということだが、登場人物はすべて異なる。昔の事件のことも今の噂話も、みなさして真剣に語りはしないが、どことなく意味深な会話劇が展開される。意味深すぎて多分自分には理解できていないと思うが、これもあえて深掘りはしないでおく。
舞台中央にある柱に「巨大な目玉の落書き」があるが、前半は奥を向いていて客席からは見えない。途中の転換で反転すると、おどろおどろしい目玉が現れる。意図的なアートとしてこれを描くこともありえるだろうが、落書きとしては不気味すぎる。
現実にこういうことがあったら、やっぱり微妙に気になりながらも気にしてないかのように過ごすことができてしまうだろう。そこから事件が始まりはしないのだ。猟奇的な行為すら飲み込んで日常が形成される、それこそがこの作品で描かれる現代人と現代社会の姿かもしれない。ただそれは暗部と言い切ることもできないだろう。
あらすじにある「現代社会のこの作品のタイトルにあるparadiseとは何だろうか。団地は消滅しているが、団地のことではあるまい。
2015/03/14-19:00
桃園会「paradise lost,lost」
座・高円寺1/当日精算2500円(通し券5000円)
出演:はたもとようこ/森川万里/長谷川一馬/原綾華/加藤智之/隈本晃俊/田口翼/谷川未佳/二口大学
舞台美術:池田ともゆき
照明効果:西岡奈美
音響効果:大西博樹
舞台監督:谷本誠 /佐野泰広
舞台監督助手:関川佑一
演出助手:森本洋史/高橋恵
衣装:畠本陽子
小道具:ちびわんこ
イラスト:山田賢一
宣伝美術:白沢正
制作協力:岡本康子/尾崎雅久
WEBデザイン:GOUTEN (5010works)