2015年03月14日

桃園会「うちやまつり」

uchiyamatsuri.jpg

団地を舞台に、現代社会に生きる人間の暗部と狂おしき本能を照射した新触感の会話劇。

舞台はとある関西地方都市。時は1月3日、4日の両日。
超高層団地にある小さな空き地。荒れ放題のその場所は誰が言うともなく「こやまさんちのにわ」と呼ばれている。そこに集う団地の住人。お互いの名前も知らず職業も分からない。ただ彼らの間をつなぐのは、この場所をめぐるたわいもない噂話。団地内で今夏起きた三件の殺人事件は未だ解決をしていない。登場する住人達は皆、死の影とセックスの匂いをはらんでいる。現実感覚を欠く主人公の青年は殺人犯に疑われるうちに、自分が犯人かどうか分からなくなっていく。
建物の影となって昼なお暗い「こやまさんちのにわ」で繰り広げられる荒涼とした現代人の精神風景、人間性の暗部を深く静かに見つめた物語。
(チラシより)

 現実の事件をモチーフにしているが、その点にリアリティを求める作品ではない。現実の日常会話であんなに赤裸々に心のうちを語る人はそうそういない。連続殺人事件が起こった団地の中にある空き地。犯人と疑われた青年は有罪とはならずに釈放され、事件は未解決。そんな状態ですれ違う住民たちが交わす言葉はどんなものになるだろう。

 ここで象徴的に表現されている“現代人の人間性”とは、異常な行為よりむしろ殺人事件すら日常に飲み込んでしまう正常化心理のように感じる。それぞれ色々な事情と気持ちを抱えていながら、穏便に生活を続けていくのだ。

 わかりやすい起承転結もなく淡々と会話が続くので、観ているうちに意識がぼんやりしてくる。むしろそれはリアルな日常会話への反応かもしれない。ふと気づくと人が入れ替わって別の会話になっている。何やら明確には語られない真相とか裏の意味とかがありそうでなさそうで、多分じっくり解読すれば読めてくるのだろうけれど、そこまでするのも不自然だ。私としてはあえて深掘りせず、もやっとした違和感も含めてぼんやりと受け止めたい。

2015/03/14-14:00
桃園会「うちやまつり」
座・高円寺1/当日精算2500円(通し券5000円)
作:深津篤史
演出:空ノ驛舎
出演:はたもとようこ/森川万里/橋本健司/原綾華/阪田愛子/石塚博章/大本淳/大熊ねこ/小中太/橋本浩明/藤田かもめ/松㟢佑一/森本研典
舞台美術:池田ともゆき
照明効果:西岡奈美
音響効果:大西博樹
舞台監督:谷本誠 /佐野泰広
舞台監督助手:関川佑一
演出助手:森本洋史/高橋恵
衣装:畠本陽子
小道具:ちびわんこ
イラスト:山田賢一
宣伝美術:白沢正
制作協力:岡本康子/尾崎雅久
WEBデザイン:GOUTEN (5010works)
posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。