
今より少し先の日本。2020年東京オリンピックをピークに、景気の波は引き始め、日本の「ほころび」が顕わになり出した。(チラシより)
人口は1億1000万人まで減少し、その1/3が高齢者。そのほころびは周辺からじわじわと、しかし確実に中心にも侵食しつつある。生活苦にあえぐ民衆は格差是正を求めるデモ活動を展開し始めた。
人口減の煽りを受けて空き家率は増加の一途を辿り、東京都内にもシャッターを下ろした商店街、無人のまま放置された空き家の集まる地区が生まれつつある。そこには失業者や浮浪者、不法滞在外国人などが集まり、独自のコミュニティを形成していた。
ある小説家は皮肉を込めて、その地域をこう呼んだ。「トーキョー・スラム」──。
成功した証券ウーマン・オガタ(=南果歩)は、別れた夫・ヤマネ(=山本亨)との間に生まれた一人息子がしばしばトーキョー・スラムに出入りしていることを知り、20年振りにヤマネの営むラーメン屋を訪れる。しかしそこに、店はもうなかった……。
資本主義の未来は一体どうなる? お金って一体、何? 日本はこの先、どうなるの?
──あり得るかもしれない日本の未来を、壊れた家族が直面するお金と経済、そして愛の話を通じて描く、テアトル・ド・アナールの最新作です。
内容は上記の通り。ちょうど世の中はアベノミクスが成功だったのか否かといった議論がされていますが、その土台となる資本主義のシステム自体の意義を問いなおすと共に、それをどう受け止めるのか問いかけてくる作品でした。
証券会社が右から左に株や債券(の所有権)を売買すると「利益」が出てくる。この「利益」ってどこから生まれたのか? 劇中で息子が叫ぶその問いかけへの答えは提示されませんが、これに答えることのできないままお金を扱っている人は少なくないと思います。
スラム街で暮らす貧民達はどこに怒りをぶつけたらいいかわからず、ただ金のある所を攻撃するだけです。何かが間違っているはずだけど、何が正解なのか、誰が騙しているのか、出口があるのかないのか、何もわからないまま、何かわかったように語りながら。
本作は親子の人間ドラマを交えて語られていますが、実は経済システムそのものだけでも十分にドラマチックなのではないかと思います。
本作と同じ谷賢一が演出した「モリー・スウィーニー」では弱々しくも気丈に生きる全盲の女性を演じていた南果歩さんですが、今回は打って変わってカツカツと歩くやり手のキャリアウーマン。その凛とした立ち姿は大層に魅了されました。
2014/11/22-13:00
テアトル・ド・アナール「トーキョー・スラム・エンジェルス」
青山円形劇場/事前入金5500円
作・演出:谷 賢一
出演:南果歩/山本亨/古河耕史/山崎彬/加治将樹/一色洋平/井上裕朗
美術:土岐研一
照明:吉枝康幸
音響:山本能久
衣裳:小川久美子
ヘアメイク:細倉明日歌
演出助手:村田鈴夢
舞台監督:鈴木拓
ドラマトゥルク:野村政之
宣伝美術:今城加奈子
写真撮影:引地信彦
WEB:仮屋浩太郎
プロモーション:金有那
WEBプロモーション:飯田裕幸
票券:田村浩子
制作助手:福本悠美
制作:小野塚央
プロデュース:伊藤達哉