
今から22年前、(チラシより)
僕はインダス川で誘拐された。
44日間の監禁生活。砂と水しかない場所。
あいつは昨日殺された。僕は気が狂いそうだった。
だからなるべく小さなことを考えた。
おばあちゃんのこと、大学の履修登録のこと、松屋の牛丼のこと。
そうしている限り、僕は僕のままでいられた。
44日後、僕は帰国した。僕はいつの間にか有名人だ。
日本中からたくさんの手紙が届いた。
太陽にかざせば「死ね」という字が浮かび上がって来るファンレターだ。
パパラッチたちは今日もアパートの前にいる。
それからいくつかの季節が過ぎた。
「銃口」を向け続けられた僕は、ある日「銃」を手に入れた。
僕は引き金を引くことにした。
早稲田の学生がパキスタンでインダス川の川下り中に誘拐されたという、22年前に起きた実話に基づくドキュメンタリー。モデルとなった服部貴康氏はカメラマンとしてミナモザの写真も撮っている方とのこと。1970年生まれということは私の2歳上なので当時私も大学生か高校生だったはずだが、残念ながら覚えてはいない。
マスコミと世間に叩かれて心に傷を負った青年が卒業して選んだ職業が、いわば宿敵のはずの週刊誌カメラマンだったという話。タイトルやシチュエーションから、生還した学生に対する世間とマスコミのバッシングが中心かと思いきや、むしろ彼のその後の職業選択を巡る葛藤にこそポイントがあった。明確な答えはない。終盤、駅のホームでの長い長いシーンが印象的だった。
タイトルにある「彼ら」とは誰のことだろう?
週刊誌にめちゃくちゃな記事を書かれて世間からバッシングを受けた経緯は、ネットのある今なら随分違った対応ができたろうと思う。しかし過去にクレーム対応を担当した経験がある自分としては、巧妙な言い回しで責任を回避する編集長にむしろ共感を覚えてしまった。
2013/07/28-14:00
ミナモザ「彼らの敵」
こまばアゴラ劇場/当日精算3000円
作・演出:瀬戸山美咲
出演:西尾友樹/大原研二/浅倉洋介/山森大輔/菊池佳南/中田顕史郎照明:上川真由美
音響:前田規寛
音響操作:太田智子/中野千弘
舞台美術:原田愛
舞台監督:伊藤智史
演出助手:佐藤幸子
ドラマターグ:中田顕史郎
宣伝写真:須田俊哉
宣伝デザイン:郡司龍彦
制作:斎藤努
当日運営:藤井良一/加藤恵梨花
京都制作協力:おさださちえ