2013年06月16日

カスガイ「バイト」

baito.jpg

都心から電車で二時間。
ある製紙工場で働く作業員たち。
は、勝ち取らなければいけなかった。
安息とか平穏とか、尊厳を。
誰かがそれを脅かすのなら、守らなければならなかった。
のだが、気付いた時にはもう遅い。
緩やかに、蔓延るものなのだ怠惰は。

だから噛みつきたい。
だから噛みつかれたい。

会議室に集まる人々と、貴方と、私の、90分間。

虐げる者と抗う者の、話。

『死にたく無ければ兎にかく噛みつけ』
(チラシより)

 刑務所帰りの前科者ばかりが働く工場。社長はちょっと頭がいかれてる感じだ。慈善事業のふりをしながら、立場の弱い工員たちに無理難題を押し付けてくる。ある日の昼休みに会議室に集められた工員たちは、一人の同僚の死を知らされると同時に、殺した犯人を自分たちの中から選び、その人は死ぬように命令される…

 設定と展開のどちらを先に決めたのか分からないが、いささか無理がある印象がぬぐえない。確かに前科者が働ける場所は少ないだろうし、せっかく得た職を失いたくない、そのためには多少の無理難題も我慢せざるをえないのはわかる。しかし命まで取られることを受け入れるとは思えない。

 人格も人権も踏みにじる暴虐ぶり。そこまでされても服従するというのは、もっと別の事情がなければ説明がつかない。そのため、何か秘密を握られているとか、この世界全体が誰かの幻想の中であるとか、そういった種明かしが出てくるのかと思いながら観ていたが、結局そういうことはなかった。

 出演している役者がそれぞれ自分の劇団で主役を張れるような人ばかりなので、場面ごとの緊迫感やキャラクターの立ち方は良く出来ていたと思う。しかし残念ながら脚本の説得力の弱さが気になってしまい、役者の良さが空回りしている印象がぬぐえなかった。

2013/06/16-14:00
カスガイ「バイト」
テアトルBONBON/事前決済3900円
脚本:喜安浩平
原案・演出:玉置玲央
出演:川村紗也/須貝英/田中沙織/村上誠基/浅野千鶴/岡田あがさ/荻野友里/片桐はづき/山崎彬/山田百次/玉置玲央
音響:上野雅
照明:吉村愛子
舞台美術:稲田美智子
舞台監督:鳥養友美
演出助手:入倉麻美
宣伝美術:山下浩介
宣伝写真:引地信彦
宣伝美粧:田中順子
宣伝動画:飯田裕幸
劇中音楽:岡田太郎
制作:赤羽ひろみ/加藤恵梨花
制作協力:笠原希/ゴーチ・ブラザーズ
プロデューサー:玉置玲央


posted by #10 at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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