1995年。イラン。テヘラン。(チラシより)
イラン・イスラム革命の後、国民は政府の監視のもと厳しい道徳や規制を強制されていた。
彼らはうばわれた。好きな服を着る自由を。声をだして笑う自由を。
パーティ。ハムとチーズのサンドイッチ。外でアイスクリームを食べること。
恋をすること。手をつなぐこと。
外国の本を読むこと。『ロリータ』を読むこと。
木曜日の朝、彼女たちはやってくる。禁じられたナボコフを、ジェイムズを、オースティンを語るために。
カーテンはしめられ、コーヒーが香りたつ。
彼女たちはチャドルを脱ぐ。
革命後のイランでは、原理主義的なイスラムの戒律を遵守することが強制されるようになり、女性の権利や人権はひどく制限されているという。そんなイランの首都テヘランで、西側でさえ退廃的と評される「ロリータ」を女生徒たちが読む。それがどのくらい危険で勇気が必要でかつ魅力的なことなのか、想像するのは難しい。
純粋に文学作品を研究するだけ、とはいかない。体制を支持する者や反発する者がそれぞれの立場や思惑を抱えて彼女たちに接する。初めのうちは弾圧する側の男たちが狂信的に見えたが、終盤、なんとなくその気持ちも判るようなところもあって、単純に善悪を決めつけることはできないと感じさせられた。
現実のイランの人々がどう思ってるのか判らない。だが同じような道徳の強制は日本に当てはめることは可能だ。その社会において俗悪とされる行為を率先する人がどう扱われるか?日本は建前上自由のはずでも、実際はがんじがらめではなかろうか。その中で自分は、この芝居に登場する誰のように振る舞っているだろうか。
2013/01/26-18:00
時間堂「テヘランでロリータを読む」
ミニシアター1010/当日精算3000円
原作:アーザル・ナフィーシー
台本:オノマリコ
演出:黒澤世莉
出演:鈴木浩司/菅野貴夫/直江里美/ヒザイミズキ/阿波屋鮎美/井坂俊/木内コギト/猿田モンキー/樹香/平佐喜子/辻村優子/長瀬みなみ/原西忠佑/渡邊亮
舞台監督:礒貝保徳/松本雄介
照明:工藤雅弘
衣裳:及川千春
演出助手:松岡努
宣伝美術:立花和政
宣伝写真:松本幸夫
Web制作:小林タクシー
ビデオ制作:$堂
仙台公演制作協力:森忠治
プロデューサー:大森晴香