
真夜中の電話。不吉な予感。(チラシより)
「たまには会いたいな」
照れくさそうにアイツは言った。
俺は仕事が忙しいと断る。いつものことだ。
仕事をクビになり、妻の浮気が発覚して、全てを失って、
思い出したのはアイツのことだ。
虫のいい話だ。
アイツの携帯は通じなかった。
会いに行ってみると、アイツはいない。
はじめから存在しなかったかのように。
行方不明なのは、アイツなのか───俺なのか。
コメディタッチのドラマからだんだんオカルトになっていく過程が、引きずり込まれていくようでゾクゾクした。櫻井智也の演ずる主人公は、適当に生きてるようでいていざとなると力強い、いかにも主人公だ。幾多の不幸や困難に見舞われながら果敢に前進し、友を探す。
しかしそれにも増して印象的だったのは幸田尚子の怖いまでの美しさ。それがなかったら終盤の怪しい空気は成立しないだろう。他の役者さんの演技も素晴らしかったが、綺麗だったー。そして怖かったー。
ただ、幸田尚子は主人公の妻との二役なので、後半に登場した時は別れた奥さんがアレになったのか無関係の別人なのか判断がつきかねた。名前も麻理子とマリコなので、わざと混乱を狙っていたのかもしれない。結果的には同一人物のはずがないのだが、なにしろ物語がどういうジャンルに落ち着くのかすら途中ではわからないので、同一人物という展開もありえるだろう。
2012/11/17-18:00
ブラジル「行方不明」
赤坂レッドシアター/当日清算3000円
脚本・演出:ブラジリィー・アン・山田
出演:櫻井智也/辰巳智秋/西山聡/諌山幸治/若狭勝也/仗桐安/哲人/宮島朋宏/幸田尚子/ザンヨウコ/内山奈々/ハマカワフミエ
舞台監督:掛樋亮太
舞台美術:仁平祐也
照明:シバタユキエ
照明操作:小沢葉月
音響:島貫聡
衣装:中西瑞美
宣伝美術:川本裕之
チラシ写真・スチール:名鹿祥史
チラシモデル:幸田尚子
演出助手:三科喜代
票券管理:スギヤマヨウ
制作協力:横井佑輔
制作:恒川稔英/池田智哉