
君と将棋を指す。(チラシより)
ただし、一日一手ずつ、毎日23時59分までに一手を指す。
それ以上は手を早めないし、それ以上は手を遅めない。
いやはや疲れる芝居だった。観客をふるい落とすかのように攻め立てる同時発声、それも時間や場所も異なる会話が同時に繰り広げられるので、全部聞き取ることは困難を極める。そう言えば前回公演もそんな所が多々あった。
最初は聖徳太子になろうと努力するが、やがて無我の境地になって耳に入ってくる声を受けとめる。するとなんとなく全体像が見えてくるから不思議だ。この劇団を観るコツを掴んだということなのかもしれない。
一日一手ずつ指す将棋を進める男と、彼が出会ってきた女性たちの回想。こないだ観た「人間失格」にも似た雰囲気がある。舞台の背景はどうやら震災後、と言うか原発事故後の東京。現実よりもだいぶ深刻な状況になった東京だ(いや現実もこのくらい深刻なのかもしれないが)。女性が定期的に産科検診を受けるのは萩尾望都のSFにあったような気がするが、現実がSFにじわじわ近づいているのかもしれない。
この主人公は決して羨ましい境遇ではないけれど、それでも彼に感情移入するとなんとなく楽しめてしまうのは芝居の成せる技だろうか。
2012/11/10-18:00
The end of company ジエン社「キメラガールアンセム/120日間将棋」
シアターグリーンBASE THEATER/当日清算2800円
作・演出:作者本介
出演:伊神忠聡/岡野康弘/萱怜子/川田智美/北川未来/清水穂奈美/関亜弓/中田麦平/信国輝彦/藤田早織/目崎剛/山本美緒
舞台美術:泉真
舞台監督:鈴木拓
照明:南星
音響:田中亮太
制作:池田智哉
宣伝美術:サノアヤコ
プリンティングディレクター:青山功
Web:きだあやめ