
私たちの家は、干からびました。(チラシより)
それでも今日も、シトシトと不純物混じりの雨が降り続けている。
汐が引いて篩(ふるい)にかけられた後、どこもかしこも砂漠化が進んでいる。
駅も、学校も、公園も、家庭も。
我が家なんてものは、そんなに確かなものなのか。
ある夫は、自転車で家を出たまま戻らず営業に赴き、
あるボランティア一行は、自分たちの家を空けたまま、その地から離れられず、
ある姉妹は、家を飛び出し、たまたま出会った男と地下室で過ごす羽目になり、
また、ある弟は姉に同行し、姉の代わりにはぐれた姉の夫を捜している。
一方、残された地元民は、瓦礫の山となった自分たちの土地を片付けている。
帰るべきか、またはここに残って新しい我が家を作るか、
地続きでないこの国で新天地を目指すことはできるのか。
そこがダメだったら今度はどこへ行こう?
前回のEXPOが短編オムニバスだったので久々のまとまった乞局ワールド。何があったか多くは語られないが、なんらかの大災害が起きて荒廃した土地で暮らす人々を描いている。なんとなく震災を感じさせるし当然それは意識しているだろうが、あくまでもそれはヒントを得た程度のものであり、独特のカラーに消化されている。
大半の登場人物がどこか歪んでいるのが乞局の特徴だと思うが、今回は状況が過酷ゆえに人物の歪み方は控えめで、「あんな所にいたら誰だってこのくらい歪んでしまうだろう」と感じられる程度だった。毒々しい話が好きな乞局ファンにとっては物足りなかったかもしれない。
しかし墨井鯨子(すみい くじらこ、最近やっと読み方がわかった)や石田潤一郎、三橋良平といったいつもの顔ぶれのたまらない気持ち悪さ(褒め言葉)はいかんなく発揮されていた。そしてラストシーン、空から降ってくる水を口で受け止めながらブルブルする三人の姿は、まったく意味がわからない不条理さにゾクゾクした。
2012/10/13-15:00
乞局「傘月」
SPACE雑遊/当日清算3200円
脚本・演出:下西啓正
出演:石田潤一郎/岩本えり/下西啓正/墨井鯨子/田中のり子/三橋良平/河西裕介/佐野陽一/村木雄/稲葉佳那子/川崎桜/笹野鈴々音/田口朋子
舞台美術:袴田長武+鴉屋
照明:吉村愛子
音響効果:平井隆史
演出助手:宍戸裕美
小 道 具:田中元一・田中のり子
舞台監督:藤本志穂
衣装・ヘアメイク:中西瑞美
宣伝写真・スチール:鏡田伸幸
撮影:テアトルプラトー
宣伝美術:太田創
W E B:柴田洋佑
制作:上田郁子
制作協力:新居朋子/清水直子