カラダが絡むと、(チラシより)
ココロが綺麗じゃいられなくなる−−−
メガチカひさびさの長編本公演は、劇団結成時から3年半構想してきた意欲作。
若者がベンチャービジネスとして始めたのは、「身体障害者専用デリバリーヘルス」だった。
世界で最もセックスビジネスが盛んな現代日本での、性と生。
秋の真ん中で感じる、夏の余韻と、冬の予感と、遠すぎる春。
心と、身体の、冒険演劇。
リーディング公演や少年ライブラリィなどの企画公演は都合がつかずに観劇できなかったメガチカですが、久しぶりの本公演でちょうどスケジュールが合いました。
観終わってまず思ったのは、この劇団とこの作家の持ち味が存分に発揮された作品だったということ。ものすごくメガチカらしい舞台であり、ものすごく刈馬カオスらしい脚本で、ワクワクさせられるブルーな芝居だ。
身体障害者専用デリバリーヘルスの事務所として借りたマンションの一室を舞台とするワンシチュエーションドラマで、風俗店ではあるがその場に客が来るわけではない。それでもR-15指定が妥当な程度にきわどい台詞が飛び交い、露骨にセックスが語られる。
とはいえ舞台で女優が脱ぐわけでもなく、痴話喧嘩さえ真水のようにサラサラな雰囲気で展開する。身障者用のデリヘルは実在するそうだし、劇中で語られる若者の集団レイプ事件なども似たような実例が記憶に浮かぶ。様々な形でそれらに関わる人々の苦悩や割り切りもリアルな印象を受ける。
しかしこの作品は決して社会派ドラマとか問題提起とかではなく、若者たちの姿を素直に描いた青春群像劇なのだと思う。全体を通じて主張したいメッセージのようなものは感じられず、善人も悪人もいない、ただそれぞれの人物がそれぞれの想いをぶつけたり溜め込んだり怒鳴ったり逃げたりしている様子を淡々と俯瞰している。
物語としての起承転結すらも曖昧で、存在意義のわからない台詞や演出も多い。だがそういった要素もまた、落ち着かない若者の情動を語っているように思えるのだ。メガチカの舞台はいつも絵になる構図が多く、今回もそうだった。視覚的には決して崩れないスタイルを維持しながら、構成として何かを崩そうとしたのではなかろうか。
なんか難しい言葉を並べてしまったが、要するに観て良かったと思うのです。
2006/11/09-19:00
メガトン・ロマンチッカー「マイ・フェイバリット・バーーーーーージン」
千種文化小劇場/当日券2000円
作・演出:刈馬カオス
出演:大久保明恵/時田鉄目/岸良端女/西尾知里/来々舞子/浦麗/久川徳明