
おそらくあと一時間もすれば、(チラシより)
此処は傍聴人で溢れ返るだろう。
煌々と照らされたその空間の片隅に、
彼ら五人の席がある。
弁護団主任弁護人。
「人類の知る最重刑」
を求刑する検察団を相手に、
彼らは真っ向から勝負を挑む。
個人の尊厳をかけた、言葉の戦い。
1946年、東京、市ヶ谷。
極東国際軍事裁判所本法廷。
祭りの落とし前をつけるべく、
世紀の裁判が開廷する。
言わずと知れた東京裁判こと極東国際軍事裁判。その弁護人を務めた五人が、圧倒的に不利どころか勝ち目のまったく無い中で戦う姿を描く。それぞれの過去、役割の意味、なんのために被告を守るのか? 激昂したりシニカルになったり仲間割れしたりしつつ、一矢報いようとする弁護団。
フィクションとは言いつつ半分は史実を扱っているという点でやや反則ではある。裁判自体は実際にあった話であり、そこに至る経緯は日本人なら(正確には日本で教育を受けた人なら)説明なしで理解できるので、説明はかなり簡略化できる。しかしそれを差し引いて芝居としての完成度だけを見ても、絶賛せざるを得ない作品だった。
五人がずっと出ずっぱりで机を囲んで会話し続け、暗転もなく、わずかに照明は使っているが音響効果は皆無。この芝居をやりきることは役者として相当に大変だろうが、同時にすばらしくやりがいがあったのではないだろうか。そして、本当に良かった。
2012/08/12-14:00
パラドックス定数「東京裁判」
pit北/区域/当日清算3000円
作・演出:野木萌葱
出演:植村宏司/西原誠吾/井内勇希/今里真/小野ゆたか
照明:伊藤泰行
小道具:櫻井徹
撮影:渡辺竜太
販促:副島千尋
制作部:たけいけいこ/今井由紀