「一本の樹の中にも流れている血がある そこでは血はたったまま眠っている」(チラシより)
寺山修司が23歳の時に書いた一編の詩から生まれた戯曲。
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1960年、転がるドラム缶、どこかから、猫の鳴き声──。
公衆便所の前では、「子供」が死んだ子猫を持ち歩く。
悲鳴のようなブルース。
倉庫には革命を目論む若いテロリストがふたり。
殺伐としながらどこか牧歌的なふたりの時間が流れる。
寂れた「床屋」の主人。
前科者が持ってきた闇取引の話に加われず、いらだちを隠せない。
集まる娼婦たち。
インチキな占いを繰り返す女。首吊死体を見上げる女。
麻薬中毒の元ボクサー、靴紐売り。
ぐずぐずとした日常をすごしている人々。
詩を書く少女。
男と少女が恋に落ち、それまで平穏だった日常が歪み始める。
そこにひとりの「男」が訪れる。
ダイナマイトを見せ、英雄になりたくないか、とふたりのテロリストに迫る。
そしておこる悲劇──。
記憶に間違いがなければ寺山修司の作品が上演されているのは初めて観た。今観るとアングラっぽく時代性を感じさせられる作品だが、1960年を舞台にしたこの作品自体が1960年に書かれているのだから、当時としてはあくまでも現代劇だったのだろう。
非シス人(こう書いて“ナルシスト”と読む)という劇団も初見。vol.15で5周年記念公演とも銘打たれているが、どういうタイプの劇団かまったく予備知識無しに劇場に入った。役者によってややレベルに差があったが全体としてよく雰囲気が出ていたと思う。
2012/07/22-13:00
非シス人「血は立ったまま眠っている」
サンモールスタジオ/当日券3800円
原作:寺山修司
構成・演出:間天憑
出演:竹下優子/飯田千賀/重井貢治/末廣和也/若狭愛子/平田将希/長島竜馬/石井健土/石川利恵/上杉綾/矢澤深雪/小川友子/久永廣士/宮本英喜/天憑
舞台監督:a58b
照明:奥田健太
音響:川西秀一
振付:宮本英喜
音楽協力:CARRIE
宣伝美術:荒川典久
映像協力:又吉真平
ラジオの声:永井一誠