その夏の夜、店にはいつもより少し多くの人間が集まった。(チラシより)
共に夢を見た仲間。
かつての恋人たち。
思いがけぬ訪問。
新しく始まる恋。
今夜が終わるまで、もう少しだけ話をしよう。
生きていくことは可笑しくて物哀しくて、愛おしい。
劇団競泳水着がお届けする夏の一夜の群像劇。
就職と転勤で辞めるバイトの送別会に集まった面々の、一夜の物語。それぞれがレストランを経営する兄弟を中心に、一緒に働いたり遊んだりしてきた仲間たちの、時に喧嘩しながらも愛情に満ちた人間関係。登場人物の数はかなり多いのだが、キャラがくっきりしており、決して無駄な人数ではなかった。
誰が主役というわけでもなく、誰にでも感情移入できる。悪い人がいない。致命的ではないが困った状況に直面し、あたふたしながらみんなで解決していく。大きな結末があるわけではなく、穏やかに日常に帰っていく。こうやって書くとあまりにも優等生な脚本のようだが、実際良くできていて、それでいて面白かった。
オーナーを補佐するシェフを演じた黒木絵美花がとても素敵だった。彼女は常に笑顔が張り付いたような顔であまり表情が変わらないのだが、わずかな振る舞いで巧みに感情表現する。ばつの悪そうな時、からかうような時、凛として挑む時、等々。
間違って招待されてしまった元塾講師役の菅野貴夫もいい味を出していた。この人の役は何事にも動じず我が道をいくタイプなのでそもそも感情の起伏も少ないのだが、その落ち着いた様子が面白くて良かった。
とにかく、観ていて居心地の良い舞台だった。あんな店が近所にあったらぜひ常連客になりたい。
2012/06/24-13:30
劇団競泳水着「Goodnight」
王子小劇場/劇場支援会員
脚本・演出:上野友之
出演:大川翔子/川村紗也/阿久澤菜々/岡田あがさ/菅野貴夫/黒木絵美花/澤田慎司/篠原彩/瀧川英次/竹井亮介
舞台監督:本郷剛史
美術:坂本遼
照明:島田雄峰
音響:星野大輔
衣裳:富永瑞木
演出助手:松本紗良/中川真奈
映像撮影:西池袋映像
写真撮影:下田直樹
WEB広報:P's #ffb900
宣伝美術:[図案]立花和政/[イラスト]庄子佳那/[写真]永西永実/[ヘア・メイク]伏屋陽子
制作:会沢ナオト
制作助手:齋藤陽子
カンパニースタッフ:細野今日子