ある地方都市の一角、金輪町。(サイトより)
神山清巳は優秀な会社員。
幼い頃から常に周囲の期待を背負い、応えてきた。
兄の清武も、出来る弟の平凡な兄、という立場に慣れきっていた。
清巳はある日、自宅裏の斜面を転がってきた拳大の落石を頭部に受け、入院してしまう。
十日程して会社に戻ると進行中の企画チームを外されていた。
不条理な出来事に苛立つ清巳を両親は慰めるが、久しぶりに会った叔父の怜司は違った。
「自分にしかできない仕事なんて存在しない、本当の仕事を教えてやる」
怜司は主夫業の傍ら、密かに「本当の仕事」を持っている。
それは世界のバランスを取る重要な使命、と怜司は語る。
世界からの「呼びかけ」に応え、行為に移す。
その行為はどう見ても荒唐無稽で無意味だが、清巳にはその馬鹿馬鹿しさが新鮮だった。
内なる衝動に従って行動することで「世界のバランスをとっている」と語る叔父さん。彼はキャリアウーマンの妻と結婚して専業主夫になっている。ヒマにまかせて奇行に走る彼によって周りの人々が翻弄される。
これまでの作品を観た感覚で臨むと肩透かしを食う。イキウメといえば超常現象と人間ドラマを融合した物語が定番だが、今回は超常現象なのかそうでないのか微妙な話だった。すべては叔父さんの妄想としても説明はついてしまうのだ。
彼の言葉は本当なのか、ただの妄想にすぎないのか、それは最後まではっきりしない。それなら超常現象などではないと解釈する方がいいだろう。彼は妄想に従っていただけだが、それでも人を動かしたのだ。いいことか悪いことかは別として。
エンターテイメントとして、この作品はさほど面白いものではなかったと思う。しかし色々な示唆に富んでいた。超常現象に頼らない物語だからこそ、リアルに自分の生き方を振り返らせる力があったと気がするのだ。
2012/05/20-18:00
イキウメ「ミッション」
シアタートラム/ぴあ事前購入4200円
作:前川知大
演出:小川絵梨子
出演:渡邊亮/浜田信也/井上裕朗/岩本幸子/安井順平/太田緑ロランス/盛隆二/伊勢佳世/森下創/大窪人衛/加茂杏子
美術:土岐研一
照明:松本大介
音楽:かみむら周平
音響:鏑木知宏
衣裳:今村あずさ
ヘアメイク:西川直子
演出助手:長町多寿子
舞台監督:棚瀬巧
プロデューサー:中島隆裕
照明操作:和田東史子
演出部:埋橋真理/上嶋倫子
文芸部:結木佐人/宮村優子/中田博士/高橋啓佑/春謡漁介
宣伝美術:末吉亮
舞台写真:田中亜紀
制作部:吉田直美/湯川麦子/林弥生