
参加していた政治運動がなんとなく上手くいってしまい、(チラシより)
求め続けていた新しい「今」を手に入れた活動家たち。
手に入らないからずっと求めてきたはずのものなのに、
手に入れた瞬間から、いつの間にか飽き始めていたことに気付く。
自分たちは、本当にこんなものを求めていたのであろうか。
東京から少し離れて目立った産業もない田舎の町に住む男が、線香花火を名産品にしようとするところから物語が始まる。町のみんなで協力しあって作った花火はそれなりに人気となる。でも、みんなの気持ちがひとつになるかというとそうでもなく、微妙に、あるいは明確にすれ違う。
煙草が非合法化されていたり中国人が迫害されているなど、現実より少し極端に走った社会。そこから少し距離をおいて生きている登場人物は、ほぼ全員がどこか歪んでいたり非常識だったりしていて、聖人君子はいない。寺の坊主が一番腐ってる。そして田舎の町で暮らす人々のずるさと正直さと、めんどくさいけど捨てがたい人間関係。
箱庭円舞曲の作品の多くで、こういった感じの設定があるが、今回もそれが熟した印象だ。ジワジワと状況が明らかになるに連れて濃くなっていく味を楽しめる作品だった。
余談だが、布団に入った人物が出てくると別人になっているシーンがあり、どうやって入れ替わったのかまったくわからなかった。抜け穴があったのだろうが、その後どう見てもわからず、話の本筋から意識がそれるくらい不思議だった。
2012/05/19-14:30
箱庭円舞曲「どうしても地味」
駅前劇場/当日清算3000円
脚本・演出:古川貴義
出演:小野哲史/須貝英/爺隠才蔵/片桐はづき/菊池明明/木下祐子/磯和武明/神戸アキコ/小島聰/笹野鈴々音
舞台美術:稲田美智子
照明:工藤雅弘
音響:岡田悠
舞台監督:鳥養友美
衣装:中西瑞美
演出助手:村田鈴夢
労組:山内翔/井上裕朗
宣伝美術:Box-Garden House
題字:須山奈津希
記録写真:鏡田伸幸
制作:安田有希子