2012年03月10日

桃園会「blue film」

bluefilm.jpg

あの崖の下の海は暗くうねって、
途方も知れぬ深さを誇っていたというのに、
今はすっかり引き潮で
ごろごろと無様に転がる岩の間を
麦わら帽子を被った家族連れが
潮干狩りなんかを楽しんでいる。
そら、遠くてこちらを睨んでいるのは
あれはなんて名前の鳥だったか。遥か沖合に立つ影は
まっすぐ伸ばした私の小指くらいの大きさで、
さて、どれ程の背丈なんだか、果たして鳥なんだか。
私は相変わらず旅行鞄一つ提げ、ぼんやりと、
はて、何処に立っているのか。連れの猫もいないので、
私とさっきから話してる人に聞いてみた。
見よ。
遙か遠く、何処までも続く、白い波、ひとすじ。
光速に至り、過去に届くか。
(チラシより)

 どこかの駅で電車を待つ数人の男女。思い出の中にある子供時代と、法事から帰る大人たち。それは震災から七年後。誰の思い出なのか、回想なのか夢なのか、はっきりしないまま物語が描かれる。何か幻想的な物語。

 震災と言ってもそれは阪神淡路大震災の方。大阪の桃園会が今この作品を東京に持ってきて再演した意図は色々と想像が可能だ。関東の人は今まさに震災を抱えている。この作品に出てくる人たちの境地に達するのはもう少し先のことになるだろう。

 七年後にまた観てみたい作品だ。その時自分はどんな心境にあり、どう受け止めるだろうか。

 ちなみに、この作品にblue filmというタイトルが付いている理由はよくわからない。

2012/03/10-18:00
桃園会「blue film」
ザ・スズナリ/当日券3300円
作・演出:深津篤史
出演:はたもとようこ/亀岡寿行/森川万里/長谷川一馬/橋本健司/寺本多得子/原綾華/福良千尋/大江雅子/奥野彩夏/小野亮子/阪田愛子/神藤恭平/速水佳苗/久保田智美
舞台美術:池田ともゆき
照明効果:西岡奈美
音響効果:大西博樹
舞台監督:沢渡健太郎
演出助手:森本洋史
衣裳:畠本陽子
イラスト:山田賢一
宣伝美術:白沢正
写真:白澤英司
制作協力:尾崎雅久
posted by #10 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック