
新作1本と再演2本の3話オムニバス。すべて人妻が主役。
「×」
あの女が多摩川の廃屋に火をつけようとしたので、素行調査のつもりが探偵は声をかけてしまう。「罰(ばち)が当たりますよ」と諭すと、女は「これは罰(ばつ)なの」と返して来た。川の漂流のようにぐるぐると人が流れる、罪と罰の小さな物語。MU初期のレアな短編を再演。
三作の中では一番すっきりした作品。元過激派でエコなホームレスの小屋で中学生に勉強を教えている人妻は、性的に奔放で劇団を潰した経歴を持つ女性。彼女の夫に雇われた探偵、今時のカップルのエピソードなどが絡み合う。テンポは良いし激しい動きもあるのだが、なんとなく気だるい雰囲気のお話。
「ママさんボーリング」
南栗橋の倦怠が渦巻くなかで生活する主婦達は、ボーリング場でストレス発散とフェロモン補充を行なっていた。思い切って裕気は店長へ声をかけるが・・・。脚本提供した短編で初演時には観客より「聴いていた想像の3兆倍くだらなかった(笑)」とツイッターでつぶやかれる、デザートのようなコメディ。MUでは初演出の短編。
いかにもヒマを持て余した主婦といった風情の女性たちがボーリング場でくだらない話をしている。そしてイケメン(?)の店長にザワザワしている話だが、途中からあまりにも下らなく、唖然とするような結末を迎える。いや、事前にものすごく下らないという初演の評判のことを読んでいたのだが、それでもビックリするくらい下らなかった。でも嫌いじゃない。
「今夜だけ」
「叫び」を募集する深夜ラジオに妻は夢中。愛犬を亡くし、嗅覚を失った夫とのどこまでも噛み合ない夫婦喧嘩を彼女はメールで投稿し毒を吐き出し続けるが、行き場のない毒は家庭に溜まってゆく・・・。MU、完全新作のホームドラマ。
ホームドラマというが、サスペンスかスリラーに近い印象。力の入った作品だが、人間関係が濃すぎだったり激昂する場面がわざとらしくて気持ちがついていかなかったりで、イマイチ楽しめなかった。オムニバスの最後ということもあって疲れていたのかもしれない。
2012/02/05-17:30
MU「今夜だけ」
駅前劇場/当日清算(プレミアシート)4000円
脚本・演出:ハセガワアユム
出演:西岡知美/吹原幸太/渡辺まの/古屋敷悠/浜野隆之/太田守信/神谷亜美/小西耕一/前園あかり/橋本昭博/塩原俊之/前有佳/橘麦/堀晃大/丸石彩乃
舞台監督:松澤紀昭
舞台美術:袴田長武+鴉屋
音響:岡田悠
音楽:ニセ科学
演出助手:長谷川雅也
写真撮影:石澤知絵子
宣伝美術:石井誠
制作補:和田垣幸生/大下康子
制作:佐藤希