ぼくは、しあわせものだなぁ(チラシより)
とあるところに『ふうせんにんげん』という男の子がいました。それはそれはかわいらしい男の子で、みーんな、ふうせんにんげんのことが、大好きでした。
しかし困ったことに、ふうせんにんげんは、好意的なことばをかけられると体がふくらみ、やがては破裂してしまうのです。ふうせんにんげんには彼女がいました。彼女は毎日、めいっぱいの愛をこめて、思いつく限りの口汚いことばで彼をののしります。彼女にののしられながらも、ふうせんにんげんは思っていました。
『ぼくは、しあわせものだなぁ』
これは、ふうせんにんげんとその彼女を取りまく、いびつな世界のものがたりです。
この劇団の公演を見るのは二回目。前回公演「Sea on a Spoon」がかなりツボだったで今回も足を運びました。前作は序盤にファンタジーかミステリーのような部分があったものの話の中心はシリアスな現代劇でしたが、今回はほぼ全編を通じておとぎ話でした。ただ、“世界が汚染されて空気が配給制になってしまった”という設定は、恐らく現実の何かを暗示するものでしょう。
なんとなく雰囲気は良いのですが、ファンタジーとしては状況設定が理解しづらかったりブレを感じる部分が多く、ちょっと残念でした。ふうせんにんげんである少年は、好意的な言葉をかけられると膨らみつつ空気を作り出すということなのですが、誰に言われても起こるような話だったのに実は特定の(本当に愛情を持っている)相手からでないと効果がなかったり、そもそも空気も普段からずっとボンベ状の容器から吸っているわけでもないなど、やや設定の細部に甘さを感じました。なによりラストがどうしてああなったのか全くわかりません。
いい話だとは思うのですが、そういう設定の詰めが甘いと気になってしまって感情移入しきれませんでした。そして佐藤みゆきは乞食の役を演じていて、それはそれで立派だったのですが、なんであえて彼女にその役をやらせたのかがちっともわかりません。勿体無い。まあこれは完全に個人的な思い入れなんですが。
2011/12/24-19:00
こゆび侍「うつくしい世界」
サンモールスタジオ/前売券3300円
作・演出:成島秀和
出演:廣瀬友美/佐藤みゆき/福島崇之/浅野千鶴/浅川千絵/猪股和麿/小石川祐子/古賀裕之/笹野鈴々音/永山智啓/宮崎雄真
舞台監督:橋本慶之
照明:兼子慎平
音響:角張正雄
美術:大泉七奈子
小道具:辻本直樹
宣伝美術:河野文明
イラスト:オカヤスイヅミ
制作:塩田友克/森澤友一朗
演出助手:阿部ゆきのぶ
脚本協力:セリザワケイコ
プリンティングディレクション:青山功
サポートメンバー:川連太陽/加藤律