六本木のライブハウスで知り合い、渋谷のラブホテルに5日間居続けることになったミノベとユッキー。(当日パンフより)
ミノベの友人で、少しばかり電波系の少女ミッフィーと映画館で出会うアズマ。
渋谷の街を更新する反戦デモに「ゆるい」感じで参加するヤスイとイシハラ。
2003年、アメリカ軍がイラク空爆を開始した3月21日を間に挟んだ5日間における、数組の若者たちの行動を語る戯曲。
2004年に初演を迎え、2005年第49回岸田國士戯曲賞を受賞。その後、13カ国27都市をめぐり、公演回数100回を超えた。
「戦争」という巨大な出来事と、些末でリアルな日常を巧妙に対比させ、
日本の若者たちの、とらえどころのない現実感を見事に構造化した本作が、初演から7年を経たいま、
我々の目にどのように映るのだろうか。
2007年12月に大阪の国立国際美術館で上演されたのを観たので今回は観ないつもりだったが、終了間際に急に思い立って、KAATの千秋楽を観てきた。役者は変わっているが基本的な演出は同じ。その日に起きたことを語ったり演じたりして説明して行く。役者が登場人物を演じるという演劇の常識を破った表現のスタイルは今観ても新鮮だ。新鮮に感じるということは、そういう手法が今も一般化はしていないからで、ある意味一発ネタだったと言えるかもしれない。一発ネタで7年も続けられるのは凄いことだろう。
もちろん話の舞台は2003年から変わっていないので、語られる内容は過去のものになっている。ただ心配したほど古くはなっていなかった。若者の喋り方は今も大差ないし、具体的な時期と場所を特定した話であるからこそ、古びていかないのだろう。この話は「イマドキの若者の話」ではなく、「2003年3月の東京の若者の話」なのだ。10年後に上演したってやっぱりそれは変わらないだろう。いや、下手に話題をいじって(例えばデモの内容をイラク戦争反対から原発反対にするとか)ごまかすようなことは絶対にやって欲しくないと思う。
初演を東京で観た人と、3年後に大阪で観た私と、7年後に横浜で観た今回の新しい観客と、その間に海外で観た外国人と、受け止め方はそれぞれ大きく違うことだろう。なんだか意味がわからないという人も少なくないと思う。大阪で観た時は「新しい表現手法の登場だ!」とも思ったが、上述のように一般化しなかったのだから「登場」という判断は誤りで、この作品の評価は単純に好きというに留めるべきなのかもしれない。まあ、観客としてはそれで十分だ。
ところでミッフィーちゃん(アズマくんが映画館で会った電波系の女の子)みたいな子は結構好きだ。実際に会ったらかなりめんどくさそうだけど。
2011/12/23-17:00
チェルフィッチュ「三月の5日間」
神奈川芸術劇場中ホール/当日券4000円
作・演出:岡田利規
出演:山縣太一/松村翔子/武田力/青柳いづみ/渕野修平/鷲尾英彰/太田信吾
舞台監督:鈴木康郎
照明:大平智己
音響:牛川紀政