とある島で勃発する、奇妙で破廉恥で恐ろしい騒動。(サイトより)
男と女、入り乱れて消しがたき化け物達のアバンチュール。
目を見開いて飛び込んだ、波打ち際の青い恋。
地下の劇場に入ると、閑散とした空間に組み立て式の椅子と分厚いファイルが並べられている。観客は入り口で選んだ場所の椅子を自分で組み立てて座る。舞台と客席の区別はなく、役者が客席の間を行き来する。音楽はチェロの生演奏。キネクトを用いた投影。まさに実験公演の名にふさわしい、実験的アイデアが盛りだくさんな作品だった。
ファイルに綴じられていたのは原子力の研究開発にまつわる歴史年表だった。19世紀の科学者による放射線の発見から、様々な放射性物質の発見と命名、戦争と原子爆弾の製造と使用、原子力発電の開発と発展…。芝居の内容は当初それらとなんら関係のない、ある大女優のファンイベントとして始まる。映画にゆかりの島にやってきたファンたちは豪華なホテルに泊まるが、そこで不思議な事件が起きる。大女優の正体は…。という感じ。女優とその娘が原子力のメタファーであることに気づいたのは結構遅くなってからで、むしろそれに気づく前の方が素直に観られた気がする。
実験なので必ずしもすべての試みが成功しなくても良いと思われるが、舞台と客席の構造は非常に難しそうだが成功していたと思う。キネクトは面白いけど別に必要なかった。生演奏は(新しいというわけではないが)とても良かった。女優の体の作り方と動かし方は良かった。物語の比喩性は無理に話題を押し込んだような印象で良くなかった。
しかし不思議なのは、どうして椅子を自分で組み立てるようにしたのかという点。ステージごとにバラして並べるのだから、最初にスタッフが組んでしまう方がずっと簡単だっただろう。わざわざ手間をかけて観客に作らせる意図は何だったのだろう。そこは解らなかった。
2011/12/11-18:00
舞台芸術集団地下空港 番外実験公演「増殖島のスキャンダル」
ギャラリーSite/前売券3000円
脚本・演出:伊藤靖朗
出演:今村洋一/川根有子/佐藤美佐子/田代エマ/趙栄昊/野田孝之輔/伊藤駿佑
CORUS:金子さやか/田辺あゆみ/三森あかね
演出助手・映像:奥村周也 沼田かおり
美術・技術監督:伊東龍彦
衣装:大岡舞
音楽:権頭真由/今村樂
小道具:加賀谷静/東内奏枝
ヘアメイク:宮井美実
記録写真:かとうちなつ
宣伝美術:南部隆一
宣伝写真:岡田雷平
受付:相原絵梨/伊藤千夏