「古典風」は戯曲ではなく小説として書かれた作品とのことですが、原作は読んでいません。公演においてはまず作家が描かれ、その妄念の中の作品として本編が語られていきます。
リーディング公演というと役者が台本を持って語り、あまり大きな動きはないというイメージがあります。しかしこの公演は「リーディングと普通の演劇の境界線はどこにあるのか」を考えさせられるほど、演劇的な動きのあるものでした。場面によってはもはや台本を持っていなかったと思います。
戯曲として書かれていない小説をこういう形で上演する場合、地の文をどう表現するかがまず問題になるでしょう。今回の演出では、ある程度は実際に文を読み上げることで補完していましたが、そうでない部分もあったかもしれません(原作を読んでいないので判断できない)。
リーディング公演における「動きのある演技」は、“しなくても良いもの”と考えるか“してはいけないもの”と捉えるか、その定義は明確ではないし、仮に誰かが定義したとしてもそれに束縛される義務はないわけです。
戯曲のリーディングについては以前にも書いたように“本公演の簡易版ではない別ジャンルの作品”として大きな可能性があると感じていますが、小説のリーディングも含めると、かなり大きなレベルでの新しい表現になっていくのではないかと期待されます。
2006/08/26-19:00
横濱リーディングコレクション「太宰治を読む!」
相鉄本多劇場/当日券2000円
「駆け込み訴え」
演出:椎名泉水
出演:安藤伽奈/小寺悠介/麻生0児/増田知也/高野ユウジ
「冬の花火」
演出:前嶋のの
出演:以倉いずみ/小沢栄子/佐藤真義/嶋隆静/関根好香/笠兼三
「古典風」
演出:矢野靖人
出演:飯村彩子/岡田宗介/川渕優子/齊藤頼陽/横山真