「ゾウの鼻歌」
ナビ・ロフト
04/07/23-26
作・演出:徳留久佳
出演:木村庄之助/長江ヒロミ/池野和典/若月智美/ばんたろ左衛門/斉藤やよい
大雨の日、町内野球チームに所属する自転車屋の山本と電気屋の宍戸が、山本の店で暇をつぶしていた。宍戸は近所の川でアザラシを見たと言う。ぐれた山本の娘が買った何かを宅急便が届けに来ると、その代金を巡って騒動が。そこへ、外で倒れていた女性が運び込まれる。次第に雨が強くなり、やがて停電し・・・。
自転車屋の店先を舞台にしたワンシチュエーション。普通の場所で、ちょっと変わった状況と大きく異常な事態が混ざり合い、日常と非日常の境目は気がつかないうちに非日常側へシフトしていく。夫がアザラシに変わったと言う女性がいつのまにか姿を消すあたりは不条理劇風だが、基本的には「一生懸命生きている、市井の人々」を描いた作品だろう。
ラスト、ぐれていた娘が凛とした態度で「自転車屋ですから」と言ってパンク修理をする。結末としてはまとまっているが、彼女が心を入れ替えるにいたる経緯に説得力を感じなかった。あの父親が娘にどんな姿を見せたのだろうか? 隣人は彼女に何を教えたのだろうか?