「メサイア」
北文化小劇場
04/03/12-14
作:本山桜
演出:瀬口かしす
出演:ありさ/高野亮/葉月充/井通302/六条幸丸/山口仁美/夏風雅/草野.com/花丸幸太/西尾知里/花村広大/佐東えり/瀬戸内美雪/本山桜/瀬口かしす
キリシタン弾圧の時代、天草四郎をメシアに掲げて起きた史上最大のキリシタン一揆、島原の乱。しかし一揆を起こす直前に四郎は死んでしまう。そこに現れた朱珠姫は四郎にそっくりだったが、彼女はキリシタンを憎んでいた。それでも人々は彼女をメシアの座に据えて決起する。
少女漫画芝居を自称する独房女子更衣室の本山脚本を、少年漫画芝居と評される帰空管の瀬口演出で彩るコラボレーション。結論から言えば、非常にうまく融合していたと思う。テーマが歴史物である点は帰空管の色が強いが、登場する女性キャラの大半が誰かへの恋を貫こうとするのは、“理不尽なまでに女の味方”と言い切る独房らしい脚本だ。
帰空管において瀬口かしすの演出は、クライマックスの盛り上がりがひとつの売りだろう。ただ引っ張りすぎの印象を受けることも多く、今回も一部そう感じる点があった。ああ、ここで死ぬんだなと分かってから実際に死ぬまでが長すぎて醒めてしまうのだ。
しかし帰空管のホームグラウンドとなっている北文化小劇場の使い方はさすがにうまい。独房が前回公演でここを使った際はその空間の埋め方に不足を感じたが、今回は濃密な舞台ができていた。
独房も帰空管も個人的にお気に入り劇団なだけに、このコラボにはかなり期待して観劇に臨んだが、その期待を裏切られることはなかった。そして帰空管が次回で最後と聞いてとても残念に思った。
つまり各キャラクターの生い立ちまで設定していそうな感じがするので、演出家の色が出難い演出家泣かせの脚本家なのではないかと。
但し、それだけにストーリーに綻びがなく、よく出来ているのである。
華麗な役者がそろっているため見落としがちになるが結構内容は深い。
観劇後、後ろにいたお客さんが「嫌いな登場人物がいない」といっていたが、それこそが重要な問題なのだと思ったりした。
登場人物は皆一生懸命生きているだけだがテロや戦争、差別、に巻き込まれている。
つまり、別に誰が悪い訳ではないが戦争や差別は起こるのである。
学生など若い世代にもっと深く観て欲しい演劇だと思った。