これもあらすじは説明困難。多分、あらすじはありません。本来は必ずしも一貫した背景を持つ物語として書かれたわけではないようです。
全体に一貫したテーマがあるとすれば、文明への批判でしょうか。批判というより、ただありのままにその姿を描こうとしたのかもしれません。当日パンフレットで、総合演出の倉迫氏はこう書いています:
避難民たちの生活の一場面や内面世界、過去として『昏睡』の物語は展開していく。永山氏は私に「創世記の反対を書きたい」と言った。この世界はいつか物理的に消滅する宿命にある。そのことから逃れることは誰にもできない。その宿命の中で、人は出会い、暮らし、別れてゆく。その儚くもいとおしい営みを、壮大なスケールを背景にして、舞台上で織り成すことを目指した。創造の反対は何だろう。破壊か、それとも喪失か。あるいは破壊による喪失か。いずれにせよ私たちはもう創生の時代には生きていない。とりあえず世紀末は乗り切ったけれど、未来が明るいものだと信じることも難しい。
だが、やがて滅び行く運命だとしてもこの愚かな人類は実にいとおしい存在ではないだろうか。倉迫氏は続けて「ヒトに幸あれ」と語る。この舞台は情けなくみっともないヒトの姿を愛情深く描いているのだと思う。
2005/02/26-14:00
創作ネットワーク委員会+Ort-d.dプロデュース「昏睡」
にしすがも創造舎/当日券いくらだっけ
作:永山智行
演出:倉迫康史/自由下僕/泊篤志/森本孝文
出演:寺田剛史/あべゆう/国崎砂都美/西田純子/岡田宗介/市川梢/有門正太郎/橋本茜/宮島健/三橋麻子/山路誠/上元千春/泉陽二/田村こよみ