雲ひとつない青空に真っ昼間の白い月が浮かんでて「ごらん、あれは空のお尻の穴。あそこから空はおならをするんだよ。プープープープーおならをするんだよ」と、父は私を笑わせてくれた。「嘘〜!?」という私に父は「ほら、聞いててごらん」とふたりで耳をすまして、じっと月を見つめた。波の音に混ざって父が手に口をあてて息を吹いておならのマネをした。誰もいない浜辺に私の笑い声と父の「プープー」が響き渡った。そんなことをぼんやりと私は思い出した。(チラシより)
父が死んだ。
ボケた母と、宙ぶらりんな私と、がっかりな娘。
三世代、それぞれの女の想いが混じり合ったその時、物語が走り出す、唸りをあげて。
家族の話。壊れつつある家族の話。おじいちゃんが突然亡くなって、葬式に集まった家族の話。心はすっかりバラバラになっていたけれど、葬式を機会に集まって、一応なんとかもう一度やりなおすことになったらしい。
過去に何度か書いたが家族ものはキツイ。別に私の家族が崩壊しているわけでは決して無いが、私自身がかなり不義理をしているため、家族愛を見せつけられると辛い。この作品も最初はちっとも幸せじゃない家族なんだけど、最終的にはやっぱり落ち着くところに落ち着いて大団円を迎えるのだ。
とは言え物語として悪いわけではない。自分のことを忘れて見物するのは楽しかった。葬儀社の若手社員、父の浮気相手、娘の恋人など、空気の読めないキャラがほどよくスパイスとなっていて、母と娘の難しい関係を包み込んでいる。様々な伏線もさりげなく効いていて、よくできた物語だった。
2011/05/21-17:00
ペテカン「青に白」
赤坂レッドシアター/前売券3800円
脚本・演出:本田誠人
出演:田中真弓/大治幸雄/斎田吾郎/濱田龍司/本田誠人/羽柴真希/長峰みのり/四條久美子/谷部聖子/帯金ゆかり/岩永智/徳岡温朗/濱崎けい子/山口良一
舞台美術:濱田龍司
照明:横幕絵美
音響:斎田吾郎/野中祐里
音楽:田中大介
Multistaff:谷友彦
演出助手:中山隼人
宣伝美術:田村奈巳
写真:小林円
演出部:中平真那美
舞台監督:保坂康幸
制作協力:大場裕美
制作:村上維
プロデューサー:濱田龍司