2005年02月21日

ホフ企画「悪い女」

 1871年、わずか7歳で日本発の女子海外留学生としてアメリカに渡った津田梅子と、その盟友山川捨松の物語。自由の国で11年暮らして帰国した彼女らを待っていたのは、旧態依然とした男尊女卑のまかりとおる日本という国だった。津田塾大学の創設者として偉人扱いされる彼女の生き様を、等身大で描く。

 明治時代の話だ。まだ女性に参政権もなかったし、海外へ行くなど今生の別れにも等しかっただろう。アメリカでさえ真に男女平等とは言えなかったし、まして日本における女性の地位など、現代と比べるべくもない。そういう時代に女性の地位向上のため女子教育に尽くした彼女はすごい人だと思っていた。

 でも、そういう認識は間違いだと、この芝居の最後で気づかされた。

 日本で女性が参政権を得たのは1945年。確かにそれは半世紀前の話だ。しかし、男女雇用機会均等法が現在の形で施行されたのは1999年。梅子たちが闘った19世紀どころか、20世紀の末になってもまだそんな法律をあえて作る必要があったのだ。そして21世紀を迎えたこの国の状況はどうだろう?

 作者の末浪伸二は当日パンフレットにこう書いている。
 何のかんのと言っても私は悲しい位「男」だ。遺伝子上男であるがゆえ身体的な面において、生理も妊娠もなく、そのために仕事を休む必要もない。戸籍上男であるがゆえ社会的な面において、その恩恵にアグラをかいて座り生きていくことも可能だ。
 そんな私が女性差別の問題を採りあげることは例えば、高みから手を差しのべるような傲慢な行為かもしれない。「当事者の痛みの何を知ってるというのか?」と問い詰められれば、返す言葉もなくうつむくばかりだ。

 私も男なので同様だ。言われなければ、今の日本に女性差別が存在することに気づくことさえ難しい。それは女性差別に限らず、あらゆる差別問題について言えることでもある。私は女性ではないし、部落出身者でも朝鮮籍でもなく、ハンセン病も患っていないし障害者でもない。ここに並べた以外にあと日本で残ってる差別は何があったっけと思い出すこともままならないくらいだ。

 差別されていない者は、差別が存在することさえ誰かに示してもらわないと忘れてしまうのだ。それでもこの国にまだ多くの差別が残っていることは、知識としては知っている。知っているだけで、実感には程遠い。だがこの芝居で少なくとも自分の無知を自覚することはできたのではないだろうか。

 社会的なメッセージ性を持つ芝居は必ずしも広く受け入れられるわけではない。しかし必要な存在だ。少なくとも私はこの芝居を観て良かったと思う。密度の高い戯曲を書いた作者と、たった二人で二時間を越える舞台を熱演した役者に拍手を送りたい。

2005/02/20-17:30
ホフ企画「悪い女」
明石スタジオ/前売扱い2500円
作・演出:末浪伸二
出演:坂之井千鈴/合谷木美記



posted by #10 at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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