僕はまだ、その音の中にいる。(チラシより)
かつてバンドを組んでいた仲間達が歳をとって再開する。相変わらずな奴もいるし、すっかり変わってしまった奴もいるし、もうこの世にはいない奴もいる。
当日パンフレットの中で座長の村木藤志郎氏は、「私の作品のテーマはすべて『愛と死』です。」と書いている。そう言われてみれば、これまでに観たうわの空・藤志郎一座の作品は必ず人が死んでいる。劇的な死に方をするわけではないけれど、常に死にまつわる物語だった。
想像を絶するとしか言いようのないほど多くの犠牲者を出した大災害の直後に、死にまつわる物語を提示するのは勇気がいることだろう。多くの演劇人が同様に悩んだろうが、上記のように言い切るほど死を扱ってきたなら、その悩みはさらに大きかったと思う。
そのせいだろうか、この作品の中ではむしろ死が軽く描かれている。どうやら死んだらしいということが段々分かってくる程度で、その死が重苦しくもないし格別の感慨もない。作品の中心はむしろ昔の仲間との再開となっている。新しい世代が生まれていることもポイントだろうか。
しかし、その結果作品のテーマはかなりボケてしまったように思われる。ガツンと来るものがなかった。そんなにも愛と死にこだわる必要があったのか、疑問を禁じえない。
2011/05/04-18:00
うわの空・藤志郎一座「fine〜フィーネ〜」
紀伊国屋ホール/当日券4500円
作・演出:村木藤志郎/土田真巳
出演:西村晋弥/村木藤志郎/高橋奈緒美/島優子/小栗由加/水科孝之/島田実/指田美敏/藤田翔子/五十嵐史/高村めぐみ/浜田初/石倉祐樹/悠稀智恵/伊藤裕/薮内寛和/河村慎太郎/立川談四楼
照明:山本辰雄
音響:土田真巳
舞台監督:近藤寛治
舞台監督助手:佐藤弘樹
制作:癸生川昌美/堤浩司/伊藤要
監修:海谷善之
フライヤーデザイン:グラフロア