乞局の第十回記念公演。旗揚げ公演の前にあった「第零回公演(98年)」の再演。
乞局の舞台を観たのは三度目で、第八回以降毎回足を運んでいる。設定も物語も終局も独特の不気味さと不快感を伴う作風は、とても他人に勧める気にならないのに自分は見逃したくないと思ってしまう中毒性がある。
店の真ん中に天井まで届く金網がある奇妙な喫茶店を舞台に、入れ替わり立ち替わり訪れる町の住人たち。いずれも歪んだ性格や行動で感情移入しづらい。中心となる女性は彼らの秘密を聞きながらノートに書いていく。上述のように彼女の記憶が翌日になると消えていると皆が理解しているからなのだが、実際はさらに歪んだ裏があることも暗示される。
いつもながら、この劇団の役者はよくあんな人物を違和感なく演じられるものだと敬服する。普段は普通の人なんだろうけれど、町で見かけても怖くて近寄れないと思う。見事なものだ。
ただ、乞局の作風に慣れてしまったからか、今回は前回や前々回より爽やかな印象を受けた。冷静に考えると全然爽やかではないのだが、主人公(かな?)の店主の気持ちになんとなく共感できてしまった。
2006/06/10-14:00
乞局「乞局」
王子小劇場/ウェブ予約2500円
作・演出:下西啓正
出演:秋吉孝倫/佐野陽一/下西啓正/武田力/三橋良平/渡辺裕也/五十嵐操/石井汐/伊東沙保/酒井純/更紗/鈴木享/古川祐子