
今日も男たちはコツコツと電話をかけ続けている。(サイトより)
彼らの“仕事”は「振り込め詐欺」。
そこへひとりの女が「仲間に入れろ」とやってくる。
男たちは「女にはできない仕事だ」と相手にしない。
しかし、その集団にはすでにもうひとり女がいた。
振り込め詐欺集団と、そこにいる女性二人の物語。現実の詐欺集団がどんなものであるかは当然わからないが、にも関わらず随分「リアル」な印象だった。おそらく演技力に加えて舞台美術の質感が非常に高かったからだと思われるが、視覚的にもとてもよくできていた。
登場人物は皆、まともな人生を歩めなくなった落伍者だ。一緒に働きながらも結局他人のことなどどうでも良い。なにしろ詐欺師の集まりなのだ。うまく行っている時は仲良くしていても、いざヤバくなれば耳を削ぎ落とすといった非情な振る舞いに出る。そういう人々のヒリヒリした人間関係が実に巧みに描かれる。
最初に一人の中年女性の長いモノローグから始まる。この女性はその後ほとんどしゃべらないが、モノローグで語られた背景がよく効いており、セリフを必要としないのだ。逆によく喋る若い娘の方は、なかなかその本心が見えてこない。しかし最後にこの二人の重要な会話によって、救いようのない人々の物語がうまく昇華していく。
若い娘を演じたハマカワフミエはつい先日、国道五十八号戦線の解散公演の時にも見たが、その時とはまったく違った印象の役を見事に演じていた。終演後に配役を見直すまで同じ人とは気付かなかった。立派な女優だと思う。
2011/01/23-14:00
ミナモザ「エモーショナルレイバー」
シアタートラム/前売券2500円
作・演出:瀬戸山美咲
出演:宮川珈琲/井上カオリ/中田顕史郎/印宮伸二/ハマカワフミエ/林剛央/坂本健一/小西耕一/柳沼大地/斉藤淳
舞台監督:伊藤智史
照明:上川真由美
照明オペレーター:小泉和子
音響:前田規寛
舞台美術:泉真
劇中映像:松田修
演出助手:中尾知代
宣伝イラスト:藤沢とおる
制作:佐藤希
制作協力:一ツ橋美和
主催:財団法人せたがや文化財団
後援:世田谷区
企画・制作:ミナモザ