2006年05月06日

王子小劇場企画リーディング公演「夕鶴〜生きづらさAとハイスコアB〜

 風俗店の控え室。指名を待つ女の子たちが適当にお喋りしたりお菓子を食べたりして過ごしている。前の店長が店の金を持ち逃げして失踪し、若い社員が新店長になったことや、それで給料が減ってたくさんの女の子が店を辞めたことなどが語られ、時間が流れていく。

 王子小劇場が主催する戯曲賞「筆に覚えあり」新作戯曲選考奨励作品。残念ながら本公演は実施できず、かといって埋もれさせるのももったいないということで開催されたリーディング公演。

 最近しばしば見かけるようになったリーディング公演は、公演と朗読の中間的な上演形態だ。舞台上で台本を持って戯曲を読むのだが、朗読と違って一人が全てを読むのではなく、基本的に役ごとの役者が台詞を読み、ト書きを読む係もいる。‥‥という知識はあったが、実際に見たのは今回が初めてだ。

 中間的だからこそ自由度が高く、舞台装置や衣装をどこまで本公演並に作るかは演出家次第だろう。今回の場合、椅子や机やなんだかわからない荷物などが雑然と並べられていて、ある程度は「風俗店の控え室」を作っていた。また、役者もただ台詞を読むだけでなく体を使った演技も少なくなかった。そもそもこの戯曲は座って会話している場面が大部分なので、台本を持っていること以外はほとんど公演と同じだ。

 しかし、リーディングならではの面白い演出も見られた。役と役者の対応が途中で入れ替わったり、台詞と動きが切り離されたりする所だ。最初は役者A=人物a、役者B=人物b、役者C=人物cをそれぞれ担当していたのに、ふいに役者Bが人物aの台詞を読みはじめ、同時に役者Aは人物cになり、役者Cが人物aの動きをしている、といった具合に。

 自由度が高いことはそれだけ演出家の力量が問われるので、リーディングは本公演の単なる簡易版ではなく、独立した別のジャンルと考えるべきなのだろう。今回は特にニュートラルな戯曲だったので、その演出の工夫を堪能することができた。本来の企画意図とは違うかもしれないが、リーディング公演の可能性を今後も注目していきたいと思った。

2006/05/06-20:00
王子小劇場リーディング公演「夕鶴〜生きづらさAとハイスコアB〜
王子小劇場/当日券2000円
作:小沢哲人
演出:山中隆次郎
出演:松浦和香子/内山奈々/山口奈緒子/板倉チヒロ/數間優一/稲川実代子


posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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