「ロボット」という単語の出典として知られるチャペックの戯曲「R.U.R.」を原作とし、分解して再構成することで創られた舞台。パンフレットの言葉を借りれば「ストーリーを時系列に展開する等よりかはその印象をひとつかみに掴み取る方法を選び、構成しました」とのこと。
R.U.R.に登場するロボットは機械というより人造人間で、人間に代わってあらゆる労働を担う道具として大量生産される。やがて彼らによって人間が滅ぼされてしまうが、ロボットには生殖能力がなかったため、生産してくれる人間がいなくなることでロボットも滅んでいく。‥‥というのが原作の基本的なストーリー(らしい)。しかし今回の作品は上記のように、ストーリーを綴るものではない。
パンフレットに「台詞劇というよりは、ダンスやムーブメントに近い舞台表現」とある通り、観劇した印象はまず「台詞の多い舞踏劇」だった(と言っても純粋な舞踏劇を観たことはないのですが)。各場面ごとの状況は説明されながらも、時系列が意図的に交錯しているため断片的なイメージだけが投げ掛けられる。これは多分、時間的にも空間的にも全体でひとつを構成するために、あえて起承転結を崩したのだろう。
それは確かに功を奏していて、あとから振り返ると場面の順番もあいまいな程に「全体の印象」のみが記憶に残っている。原作はとても古いので、表現されている内容は現代劇に比べればずっとシンプルなものだろう。うまい言葉で表現できないが、高慢な人間の愚かさであるとか、結局すべてが失われていく虚無感であるとか、そういう程度ではなかろうか。しかし、もっと奥深いものが語られていると感じさせられる舞台だった。
実は演出の矢野氏には一度お会いしたことがあり、朝まで語り明かしました。機会があれば舞台の印象について、じっくりディスカッションしてみたいものです。
2006/05/03-14:00
shelf「R.U.R. a second presentasion」
シアタートラム/前売券2500円
原作:カレル・チャペック
構成・演出:矢野靖人
出演:綾田將一/飯村彩子/川村岳/田口アヤコ/凪景介/日高勝郎/藤井麻由
2006年05月03日
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