笑いもない涙もない、偽物もない。前田司郎、堂々の迷走宣言(フェスティバルトーキョーのパンフレットより)
日々の生活の中にある微妙な人間関係のおかしみや哀れを捉え、広い世界観を持った物語へと展開してきた五反田団、前田司郎。今作への取組みは、まず自らが「迷子になること」から始まる。技術と経験がものを言う「大通り」からはずれ、敢えて劇作家としての迷走を選ぶ、そのココロとは?真摯な不安に身を投じ、迷い込んだ横道から新境地はみえるのか?
主人公の女の子を中心に、家族や恋人との交流が描かれている。しかし物語がつづられる訳ではない。時系列はカオス状態で、現実と妄想の区別もつかない不思議な世界が続く。確かに迷子になっている。それも、時空を超えた迷子だ。そして確信を持って迷っている印象だ。
椅子をずらり並べた舞台美術はシンプルながら想像力を働かせて見やすいもので、転換なしに演技だけで場面が変わる。これは役者の力もあるのだろうが、どちらかと言えば演出が巧いのではなかろうか。個々の演技より全体の構成が良かったと思う。
私が五反田団を観たのは「家が遠い」以来で、これでまだ二度目。ぬる〜い空気は同様だが、美的センスはかなりレベルが上がっていると思った。今後も見続けていきたい。
2010/11/06-15:00
五反田団「迷子になるわ」
東京芸術劇場小ホール1/前売券3300円
作・演出:前田司郎
出演:伊東沙保/大山雄史/後藤飛鳥/前田司郎/宮部純子
技術監督:松本謙一郎
照明:山口久隆
衣裳:正金彩
舞台監督:榎戸源胤
字幕:門田美和
協力:田口智博/Age Global Networks
制作:尾原綾/清水健志