2005年01月23日

劇団シアタージャパン「サロメ」

 大正時代の日本にアメリカからミュージカルを持ち込んだ女優、高木徳子の半生をミュージカルで描く。まだ女性が舞台に立つことが一般的でなかった時代、奇術師だった夫と共に渡米した先でダンスとであった徳子は、イギリスを経て日本でも成功を収める。しかし前代未聞と言われた“妻からの離婚訴訟”や演出家との恋などスキャンダルに満ちた彼女の人生は、ライバルであると同時に同志でもあった川上貞奴や松井須磨子などと同様、時代と運命の犠牲者となっていく。

 実はミュージカルであることを知らずに足を運んだので最初はとまどったが、心配することはなかった。独特な表現ではあるが面白いと思う。特にこの作品は日本のミュージカル黎明期を扱っているわけなので、一番適した手法だっただろう。

 奇術師の夫の助手として共に渡米した徳子だが、日本人形のような容姿で夫以上の人気を得てしまう。最初は嫌々だったが、ダンスを覚えて舞台で成功を重ねるうち、もっと自由に踊りたいと願うようになる。しかし夫は次第に彼女の才能に嫉妬し暴力をふるい、彼女の稼いだ金も散在してしまう。耐え切れず離婚訴訟を起こすが時代の壁に阻まれて敗れる。その後も踊りつづけるが、ついに29歳の若さで倒れ、帰らぬ人となる。

 ‥‥という話だが実際は時間軸が多少前後するため、漫然とダンスを眺めていると筋がわからなくなりかねない。パンフレットに「二回観ていただけるとストーリーがよく分かる」と書いてあったのはそういう意味かと納得。とは言っても基本的な展開は最初の方でわかるので、あとはその詳細解説を見るような気持ちで見ていればよかった。

 「時代」と「運命」をキャラクターとして登場させ、物語の案内役を務めさせたのは一つのアイデアだが、あまり役に立ってはいなかったと思う。普通の芝居と違ってミュージカルは歌で表現する場面が多いわけだが、これはただセリフに音楽がついただけではなく、特に最近の芝居ではあまり使われていない「モノローグ」としてのセリフだ。モノローグは対話と違ってかなり説明的な内容になることが許されるのだから、あえて進行役を置く必要はなかったのではないだろうか。


posted by #10 at 22:59| Comment(1) | TrackBack(0) | 東京観劇1 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
何となくインターネットを見ていたら、たどり着きました。ご観劇ありがとうございます。主演の高木徳子を演じました、宮下美和です。今回の作品は演出家としましても挑戦をだったようです。元々芝居色の濃い劇団ですので、セリフのやり取りに慣れている私達にとっても面食らうことが多々ありました。
それにしましても、かなり色々な舞台を観ているご様子。舞台人にとって貴方様のようなお客様をこれからも大事にしたいと心より思っております。
ありがとうございました。
Posted by miwa at 2005年07月26日 21:46
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