2010年10月08日

風琴工房「葬送の教室」

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実験のために航空機を墜落させることなどできない。ならばこの死を活かし、そこから学ぶことだけが、娘への唯一の弔いと彼は信じた。
「今日の夕方には帰ります」と
あかるい声で告げた一人娘はついに帰ってはこなかった。
その夕方消息をたち、
山中に墜落した航空機に娘は搭乗していたのだ。
企業の研究職にあった父親は、
起こってしまった悲劇について、
故意にはできようはずもない貴重な実験であり、
それを活かすことが必要であるとの見識を持ち続けた。
そして、大きなことでなくてもいい。
できることから、ささやかなところから改善していくべきだ、
と、訴えた。
その考えは時に周囲との軋轢を呼ぶ。
しかし、父親は諦めない。
彼にとって、
その研究は弔いであり、
学びであり、
唯一の再生への道であった。
(チラシより)

 不覚にも号泣した。この作品は実際の事故を題材にしているけれどフィクションだという。しかし下手なドキュメンタリーよりずっと伝わってくるものがあったと思う。

 私も理系でかつて研究職にあった人間だから、この作品の主人公に感情移入するのは容易だ。いつまでもクヨクヨしていても仕方ないし、死んだ者は帰ってこないのだから、事故の原因究明や生存率向上を図るための努力をしていくべきだと考える。そして、ヒステリックに泣きわめき続けるような人を愚かだと見下してしまう。この作品を観るまでは、そんな自分は冷静で正しいと思っていた。

 しかしこの作品を観て初めて、泣き続ける人の気持が理解できた気がする。合理的に割り切ることができない心情が“見えた”気がする。共感できるかどうかはわからないが、合理的に割り切ることだけが正しい姿勢ではないということはわかった。

 嗚咽が漏れるほど泣いた芝居は初めてだ。なぜそんなに涙が溢れたのかわからないが、多分、凄まじい悲劇が語られているのに悪者が一人も登場しないからだと思う。

2010/10/08-19:30
風琴工房「葬送の教室」
ザ・スズナリ/当日券3500円
脚本・演出:詩森ろば
出演:津田湘子/根津茂尚/松木美路子/山口雅義/佐藤誓/岡森諦/多門勝/浅倉洋介/岡本篤/清水穂奈美
舞台美術:杉山至+鴉屋
照明:榊美香
音響:青木タクヘイ
舞台監督:小野八着
演出助手:五十嵐勇
制作:池田智哉
チラシデザイン:詩森ろば

メモとして、印象に残ったセリフ。

ちぎれた手首や半分焼け焦げた頭部を愛しそうに抱きしめる遺族を見て、遺体の損傷が激しいから遺族に見せられないなんて医療関係者の驕りだと悟った。

航空会社が教訓を活かして事故が減って、いい会社だと褒められるの悔しい。私の子供は帰ってこないのに。

ちょっとずつしか、進めないんですよ。


posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 東京観劇2 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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