2010年05月29日

燐光群「ザ・パワー・オブ・イエス」

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「振り返ってみると、銀行がリスクを管理できるという考え方は、まったくの幻想だったと言えるでしょう」
「これは芝居じゃありません。ただの話。いかにして資本主義が、ギシギシと停止したかという話です」
「2008年9月15日。あなたはその時、気がつきましたか? 資本主義は、四日間ほど、機能を停止しました」
「完璧な状態にあると言われている船のようなものですよ。甲板は清潔、金具はぴかぴか。
 でも、誰も口に出さないことが一つだけある。その船は氷山に向かってフルスピードで進んでいるんです」
「銀行が倒産した時、いかに資本主義が金持ちだけを救う社会主義に取って代わられたかという、驚くべき物語」
(チラシより)

 サブプライムローン、リーンマンショック、そして百年に一度の大不況が来た。ノーベル賞を取った金融工学が崩れ去り、起こるはずがないと言われていたことが起きた。その渦中の人々(あるいは渦を起こした人々)の告白の物語。

 昔のNHKスペシャルでよく使われていた、インタビューっぽい場面をつないだ構成。あれは実際のインタビュー映像を使って編集できる人はごく限られるもので、職人芸的な番組作りだと聞いた覚えがあるが、この作品は役者が本人に代わって語ることでうまく構成している。

 さすがに一度観ただけでは理解しきれないことが多々あるのでいつか戯曲を買いたいと思ったが、単なるエンターテイメントとして観賞しても充分に楽しめる。さすがは燐光群と思わせる舞台だ。

 描かれた物語は、もう少し経てばどこかのジャーナリストが立派なドキュメンタリーを書いてくれるだろう。それは読むのが難しい本になるかもしれないが、この芝居なら大丈夫だ。

 ところでこのタイトル、イエスはYesであってJesusではない。この両者が同じ表記になるのは恐らく日本語だけなので、偶然が産んだ皮肉のようだ。

2010/05/29-19:00
燐光群「ザ・パワー・オブ・イエス」
精華小劇場/当日券3600円
脚本:デイヴィッド・ヘアー
訳:常田景子
演出:坂手洋二
出演:藤井びん/鴨川てんし/川中健次郎/猪熊恒和/大西孝洋/田中茂弘/John Oglevee/杉山英之/伊勢谷能宣/西川大輔/鈴木陽介/橋本浩明/中山マリ/南谷朝子/松岡洋子/樋尾麻衣子/安仁屋美峰/渡辺文香/桐畑理佳/横山展子/矢部久美子/根兵さやか
posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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