2009年12月12日

下鴨車窓「人魚」

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 知らない時代の、遠い世界の話。
 とある漁村では深刻な悩みを抱えていた。若い漁師が海に出るたびに行方不明になっているのだ。噂によるとそれは人魚のしわざだという。沖合の小島を漁師が通りかかると、どこからか歌が聞こえてくる。その歌に誘われて行くとそのまま帰ってこなくなるらしい。村は若い漁師を失い存亡の危機に立っていた。
 ある中年の漁師はまた別のことを考えていた。彼もその小島は何度か通りがかっていたのだが、一度としてその歌を聴いたことがない。耳が悪いというわけでもない。その歌はこの世のものとは思えないほどの美しさだという。一度でいいから聞いてみたいと思っていたのだった。
 ある日、村の長老たちは人魚の捕獲をその漁師に命じた。漁師は長い時間をかけてやっと人魚を捕まえて戻ってくる。それはふてぶてしい態度で、どこからそんな美声がと思われるほどだった。まずは飯を食わせろと言う。なんだか寒い、着るものはないのか。咳が出る。陸地に上がって歌えるわけないじゃないか。近所のガキどもを追い払え。
 世話をする漁師の娘も泣きだそうというものだ。
(チラシより)

 上記のあらすじは物語が始まるまでの経緯みたいなもので、舞台はその後から描かれる。チラシのこういう使い方は良いと思う。舞台の前半が背景説明で費やされなくて良いからだ。ただ、今回はこのチラシを読んでいなくても問題ない程度には舞台上で説明されていた。

 確かこの作品の出演者はオーディションで決めたと読んだ気がするが、風貌も声もピッタリで、上質な小品に仕上がっていた。特に漁師と人魚を演じた二人が良かった。

 とにかく性格の悪い人魚(これは新しい!)に翻弄される実直な漁師と娘。娘は村の若い漁師に恋をしているらしい。そして怪しい(いんちきくさい)占い師が状況をひっかきまわす。たったこれだけの登場人物だが、ちゃんとその世界を形成できており、安心してそこに入り込むことが出来た。こういう“舞台の質感”を創れる劇団は多くない気がする。

 下鴨車窓を観劇するのは今回が初めてだが、次回も観たいと思わせる出来栄えでした。

2009/12/12-14:00
下鴨車窓「人魚」
アトリエ劇研/当日券2500円
脚本・演出:田辺剛
出演:平岡秀幸/森衣里/豊島由香/宮部純子


posted by #10 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 関西観劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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