二階に上がったまま姿を見せないマスターはラジオを使って男に指示を出すのだが、その場面では観客もラジオを使ってマスターの声を聞く。これは非常に実験的な演出だろう。ただ、果たして観客にラジオを渡す意味はあったのだろうか? 正直なところ、疑問を感じた。
マスターの声は主人公だけに聞こえ、店の客たちには聞こえないという設定だ。観客にラジオを渡すことで、店の客を演じる役者には本当にその声が聞こえなかったはずだが、そこまでしなくても「そういう設定」にしてスピーカーから声を出しても良かったのではないだろうか。
また、しばらくしてイヤホンを外すように字幕で指示されるものの、その字幕は舞台の上の壁に投影された。私は前から3列目に座っていたのだが、この位置だとあの字幕はかなり見づらく、私より前にいた観客には見えなかった可能性も高い。かなり後までイヤホンをつけたままの人も見かけられたが、ずっと雑音が入っていて気になった。
ラジオを使うことで確かにある程度の演出効果は得られただろうが、そのために費やした手間に見合う価値があったとは思えない。観る方としてもなんだか落ち着かなかった。
とは言え、芝居の中身は濃かった。ラジオという妙な小道具など使わなくても十分に見ごたえのある舞台だったと思う。ただ、トイレや二階の謎は意味がわからなかった。誰か説明してくれないかなあ。
2006/01/21-19:30
庭劇団ペニノ「ダークマスター」
こまばアゴラ劇場/ウェブ予約3000円
原作:狩撫麻礼
脚本・演出:タニノクロウ
出演:マメ山田/久保井研/瀬口タエコ/横畠愛希子/白鳥義明/山崎秀樹/田中寿直/渡辺卓也/古川傑/荒悠平/清水寛幸/池辺健太/津野将輝/深江裕子/山田一彰