安部公房が昭和42年に執筆した戯曲が、28歳と22歳の男の手により2009年の大阪に甦る。(チラシより)
現代人のあり方を根底から覆すどれい狩りとは一体?関西の演劇界を挑発しつづける二人の奇才演出家が放つ奇天烈舞台。
▼どれい狩り
見かけは人間そっくりだが中身はまったく違う非実在の動物ウエーを登場させた痛快かつ衝撃的な作品。「舞台と演技(肉体)の二重性のたのしさ、二重性が持つ表現の可能性をあざやかに示し」、それ以後の演劇の可能性を大きく広げた。ちなみに『どれい狩り』は過去に2度改訂されており、今回使用するのは昭和42年11月に改訂された『どれい狩り(改訂版)』というもの。
「そりゃ人間だって、あんまりじっと見つめていると、人間だかなんだか、分からなくなってくるものよ」
個人的な嗜好ですが、私はこういうのが大好きです。安部公房も好きだし、今回のような演出もツボでした。休憩を挟んで2時間40分という上演時間はこの規模の演劇ではかなり長い方ですが、前半と後半で演出家が変わることもあって飽きることなく堪能できました。
終演後のアフタートークで劇団太陽族の岩崎正裕氏が指摘していたように、人間そっくりの動物を労働力として利用することを考えた実業家がむらがってくるという展開は「不条理でも何でもない」もので、ストーリーだけ読めばそんなに奇妙な点はありません。
にもかかわらず極めてアングラな芝居を観ているような気分になるのは、安部公房の筆力によるのか演出家の技量によるのか、あるいは役者達の身体表現能力によるのか。おそらく全部なのでしょう。
演出家が二人ともまだ若い20代であることを強調されていましたが、作品だけを観る限りではそんなことは全然感じられません。もしかするとそれは役者がカバーしていたのかもしれませんが。
とても美味だけど体に悪いかもしれないお菓子をたらふく食べてしまったような観後感がありました。
2009/04/25-19:00
France_pan×トイガーデン混同公演「どれい狩り」
テキスト:安部公房
演出:伊藤拓・安武剛
出演:本條マキ/加藤智之/神藤恭平/濱本直樹/速水佳苗/宮川国剛/太田彩香/後藤篤哉/穴見圭司/宮階真紀/三田村啓示/松嵜佑一/吉田圭佑