
これは、一匹のねずみが見たお話──(チラシより)
ところは、江戸の貧乏長屋。ボロをまとった、兄弟ふたり。
兄・万次(まんじ)はまっとうに働きもせず、ツケで飲み食い、大盤振る舞い。まじめでカタブツの弟・朔丸(さくまる)は、そんな兄を見てお説教をくり返す。万次に縁談が持ち上がったことから、絡み合う因縁の糸がほどかれていく。ふたりには、生き別れになった女きょうだいがいた──
人に化けたねずみ。陰と陽の兄弟。井戸の底に捨てられた少女。顔を見せぬ花嫁。妖しい大家、長屋連中。押入れにひそむ間男。
ニッポンの〈色〉と〈闇〉を散りばめて織りなす、「浮遊許可証」版大江戸綺談。
時代劇でファンタジーでミステリー。喜劇と悲劇と勧善懲悪と冒険譚。いろんな要素が全部詰まったような満腹な舞台だったが、ほどよい加減で楽しめました。
ミジンコターボの片岡百萬両と月曜劇団の上原日呂という、ものすごい数の客演をこなしている役者が揃って出演。この人たちはどうやって台本を覚えているのか不思議ですが、他の出演者も含めてこの顔ぶれなら外れないだろうと予想して観劇し、予想通りでした。
何かしっくりこない違和感が、どんでん返しで明かされる展開。ああ、そうだったんだ。主人公の、取り返しのつかないミス。これほど悲しいことはない。でも、どこにも救いはないのに、何か爽快な印象。
後からチラシをよく見たら、劇団の紹介として「観る者の心に爪痕を残す、リアルな痛みと独自の空気感を持ったファンタジー」とありました。なるほど、確かにそうだ。気持ちいい爪痕が残りました。
2009/03/15-14:00
浮遊許可証「月ヶ嶽の兄弟」
芸術創造館/前売券2500円
作・演出:坂本見花
出演:片岡百萬両/加藤智之/前渕さなえ/上原日呂/高依ナヲミ/小中太/上野真紀夫/中村真利亜/後藤菜穂美/白井宏幸/陰核/竜崎だいち